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    27tael

    @27tael らくがき文章置き場

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    27tael

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    ノイくん着任時妄想。アイドルの現実をみるノイくんの巻。
    ノイくんとナハトさんがバチバチするのを見たくて書いた。はーかわいいかわいい…

    #雨クリ
    raincoatClipper
    #暁理
    #ノイくん
    noi.
    #タイプリ
    typewriter

    「本日着任しました。真白ノイ隊員です」
     顔合わせに指定された本部のミーティングルーム、少し早めに到着したつもりが、ドアを開けると既にそこには求める人の姿があった。
     敬礼を受けて、戦闘を想定した隊服ではなく、濃紺をベースとした儀礼服を着た相手がゆるりと立ち上がる。
    「ああ。理人・ライゼ警邏長だ。今日からよろしく頼む」
     椅子から無駄のない所作で立ち上がった美丈夫に敬礼を返されて、ノイはこくりと息を飲んだ。
    (背、高っ。僕も小柄な方じゃないはずなんだけど)
     憧れのひと。
     彼は、そして先日まで彼のバディだった暁ナハトは、ノイにとってそう呼んで差し支えない存在だった。
     圧倒的な強さ、挙げられた功績、防がれた犯罪の数々。
     ノイが警察機構の中でも、特にこの道を志したきっかけのひとつでもある。
     実は時空警察創立周年記念で、一部の熱い要望で限定頒布されたふたりの公式ブロマイドも(鬼のような難関を突破して)入手しており、こっそり学生手帳に挟んでいた。
     それは流石にアイドルに熱をあげているようで、育成学校時代の級友にも秘密だったが。
     そんな、遠く目指す人と心に決めていた相手と、今日から組むことになる。本来ならば自分のような新人がつくことは到底あり得ないのだが、理由あって成された発令を聞いた時には、思わず学生寮の部屋で枕を顔に当てて奇声を発してしまった。
     ――翌日、教練場で盛り上がる周囲には、スンとした顔をして見せた。
     そんな思いを巡らせていたところで、張りのある声が響いた。
    「それで、真白隊員。……っ」
     卓の上に置かれた書類の束が、理人の動きに押されて床に落ちる。
    「あっ! 大丈夫ですか、理人さ……」
    (まずっ!)
     親しみを込めて心中で理人さん、ナハトさん、と呼んでいたのが咄嗟に出てしまった。
     本日付けでバディと言えども、ふたりの間には明らかな階級差、年次差がある。それを、初対面だというのに馴れ馴れしくファーストネームで呼ぶなど。
     ノイは拾い上げた書類を卓に戻しながら目を伏せた。
     印象最悪だ……。
     しかし、虚を突かれたように目を瞬いた理人はやがて、ふふ、と笑みを漏らしてノイに右手を差し出した。
    「そうだな。これからバディを組むんだ、堅苦しい挨拶をしてしまった。理人と呼んでくれ。ノイ、でいいか?」
     顔を上げる。あんな戦い方をするとは思えない整った容貌、あたたかな笑顔を向けられて、ノイは表情を固定しつつも、唇をわななかせながら握手にこたえた。
     はい、とかすれる声で呟く。
    (この人、こんな顔もするんだ)
     自分の知っているのは、教則ムービーの中に組み入れられた実戦例の戦闘中に銃を構える厳しい表情、またブロマイドの中の「最強」を支えるバディに相応しい凛々しい表情の理人だ。
     それが、自分ひとりにこんな笑顔を。
     だめだ刺激が強すぎる。はやく学生寮から引っ越したばかりの自室に戻りたい。

     そこで不意にノックの音がして、中のふたりが応じる前に扉が開かれた。
     振り返る。
    (うわあ)
     最初に感じたのは、威圧感。
     事務方の黒基調の儀礼服を着こなした姿、きっちりと整えられた髪型、そして涼やかで理知的な、表情。
    「暁さん」
     お疲れさまです、と喜色を帯びて掛けられる理人の労いの声に、果たしてナハトはかすかに不機嫌な声音で応じた。
    「堅苦しくてかなわん」
     首元を緩めるまま、真新しい階級章がことりと卓に置かれる。
     ああ、自分も含めた人事発令の着任日である今日に、彼も武官から文官への転身を終えたのだ。
     これまでの功績を讃えて、本来の階級を飛び越えて管理官となった彼は、不本意ではあろうがこれからも時空警察庁を支える厳正な仕事をするのだろう。
     そのナハトと、いまや第一線の長となった理人が、礼装で向かい合う姿。
     ぽう、と見惚れてしまったものの、しかしやがて頭上で交わされる眼差しに我に返る。
     いやいやちょっと、僕もいるんですけど。
     そう思わず口を開きかけた先で、じろりと氷色の眼差しが落とされた。
    「ん? 新顔か」
    「はい! 真白ノイ隊員です」
     本日着任しました、と敬礼を捧げると、返礼はなくただ、頭の先から爪先までを検分するように見定められる。
    「ああ、君が」
     ふい、と目を逸らされるのに続いて、ふ、と薄い唇に笑みがのった。
    「君に理人のバディが務まるかな」
    「暁さん!」
    「いくら驚異的な補完適正値が出ているとはいえ、学舎を出たての若造を理人のバディにするなど私は反対だ。……ああ君、顔合わせが済んだなら席を外してくれないか」
     しっしっ、とでも言いたげな仕草で手を振られ、もちろん上官の命令に逆らうことなどできないまま、ノイは理人に目礼ののちその場を辞した。

     ――いや、確かに彼の怪我の予後が思わしくなく、ナハトと理人のバディが解消されると聞いた時には自分も数日落ち込んだ。
     また、新しいバディが自分のような、育成学校では天才と呼ばれど、経験に乏しい人間だと聞いて心配するのも、わかる。
     しかし。
    「暁ナハト、……感じ悪っ!!」
     今日からは僕が、理人さんのバディなんですけど!
     大声で主張したくなるのを抑えるまま、真白ノイは本部の廊下を大股で歩くのだった。
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