女装初日のリト側7時35分。朝ご飯を済ませて食器を洗う。
サランラップに包んであるライ麦パンにハムとチーズを挟んだサンドイッチは幼馴染の分。
きつくくるむとパンが硬くなって美味しくないとのことで、ふんわりと包むのがあいつルール。らしい。
「そろそろかな……」
日々の支度が大幅に遅れることは滅多にないけれど、自分が想像していた時間と実際の時間に差異がないと少しばかりか達成感を感じるのがいつの間にか日々のルーティンワークになっていた。
結えていた髪をほどくと、結び癖のついた髪が首に当たり普段の温かさが戻る。この温かさがオンとオフと切り替えに役立っていたりいなかったり。
ええと、今日の気温は……
自分のスマホがダイニングテーブルにあることを思い出しキッチンから向かおうとした瞬間、唐突にインターホンが鳴り響いた。
「リトー。おーいリトー」
玄関の扉の向こうから聞き馴染みのある声。
あれ?今日はポーが迎えに来る日だっけ……?
いや、そもそもポーが朝の迎えに来るのなんて何年振りだろう。
電話で起きるのがやっとのあいつだから、いつの間にか朝の迎え当番は俺になっていたんだ。
もしかして借りたい参考書でもあったのかな?
そういえば今の数学の範囲序盤でつまづいたって言ってたな。
そう思い自室へ向かおうとした途端またインターホンが鳴り響いた。
「リトー!ガッコ行くしーー!!はやくこいしーー!!外寒いんやけどーー!!」
あーーもうあんにゃろ声大きいって!!玄関の扉そんな叩かないでってば!!あとピンポン鳴らしすぎ!!
「今行くから待って!」
玄関の向こうまで聞こえるように幼馴染に声をかける。ああ、俺も大きい声出しちゃったよ……。
それにしても本当に珍しいなあ。
天気予報をスマホで確認する手間も省けたのでハンガーにかけてあったカーディガンを羽織り、包んでおいたサンドイッチを忘れずに持っていく。数学はノートをコピーすれば大丈夫かな。
足早に玄関まで向かい、向こうにいる幼馴染にぶつからないようにゆっくりと扉を開ける。
「ごめんねポーランド、おまたせ」
読んでくださりありがとうございました😭😭