冬になると眠ってしまう女の子の話1僕の好きになった人は、冬になると眠りにつく。
そして、春が来れば目を覚ます。
彼女は、冬も、雪も知らずに過ごす。
粉雪が舞う季節、イルミネーションがきらきらと目に痛い季節を君と一緒にいられたらと願う僕と、私が冬を見れないのはね、冬を見る必要はないとあらかじめ決められたのよと笑う君。
ただ、あなたと出会ってから日々はあっという間に過ぎ去り木々の色も花の色もコロコロと色を変える。
まるであなたと過ごせない季節をさみしく思う私を嘲笑っているかのように、冬はすぐに訪れる。
長い長い冬。
「冬ってね、怖いの。他の人のことは分からないし冬眠している動物のことも分からないけれど。」
しんみりと語っていた君は急に無邪気な笑みを浮かべる。僕にとって君は見ているだけでコロコロと表情を変える季節のように思える。
「へぇ、そうなんだ。どう怖いの」
僕はそんな君の話に乗ってあげることにする。
「真っ暗で静かなの。何にも見えない。たまに、夢を見ているだけで冬の厳しい寒さを免れるなんて良いね、って言われるんだけど、」
一体誰がそんな心ない言葉を君にかけるのだろうという怒りに近い疑問はとりあえず置いておく。
「真っ暗は怖いね。」
「そう、思う」
「思うよ。」
「…そう。」
僕の答えは、気に入らなかったのか君は短かい言葉で会話を終わらせたのだ。