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    てずみ

    ロ君の毛を育てて、ドの毛を抜きたい

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    てずみ

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    料理ができるタイプの吸血鬼
    ※捏造もりもり
    ※未完なのでとても中途半端

    Pass:ドラロナ誕生日(例:00001111)

    #ドラロナ
    drarona

    その日、ドラルクは大いに疲れていた。
    いや、その日に限らず、疲れていた。ここ一ヵ月近く多忙を極めていたからだ。

    ドラルクは神奈川県警吸血鬼対策課隊長である。生まれながらの貧弱さを持ちつつ、その類まれなる頭脳とダンピールとしての探知能力で隊長にまで上り詰めた。神経質な顔つきをしているが、紳士然とした態度をとり、どんなに困難な内容でもこなしてしまう手腕を持っている。演技掛かった口上が鼻につくが、部下から揶揄われるきっかけになっているようだった。
    親しまれる要因使い魔として傍に居るのはアルマジロのジョンだ。イデアと丸と呼ばれる程に美しいボディに愛らしいつぶらな瞳が庇護欲をそそる。性格も素直で優しく万人に愛されている。食いしん坊で病院嫌いである事は玉に瑕だが。
    シンヨコのエース退治人ヒナイチに目を掛けており、二人の仲を噂する人も少なくはない。だが、二人の仲に一切そのような物はない。男女の友情は成立しないと言われるが、ドラルクにとっては年の離れた友人程度に考えている。それはそれとして部下にほしいと考えているのは近しい者が知る話だ。当のヒナイチはドラルク手製のクッキーを食べる為に押しかけている部分が多くを占めている。クッキーモンスターである。
    2人と1匹で週に1度お茶会を開く事が恒例であった。仕事でのストレスを家事炊事にあてるドラルクには悩みがあった。それは大量に作ってしまう食事類であった。ドラルク自身は虚弱故にあまり食事がとれない。悲しいかな、三十路を超えると途端に食べられなくなってしまうのだ。
    ジョンだけでは健康被害に遭う恐れがある為、食べ物は腐らせるばかりである。
    勿論、部下にも配り消費しているのがそれらを運ぶ労力もバカにはならない。そこでドラルクは菓子を作る事に変えて、クッキーモンスターことヒナイチを家に呼び、消費を手伝ってもらっているという流れである。
    その輪の中に吸血鬼ロナルドが加わる事になった。銀髪に青の入った赤色の虹彩というあまりにも異質な風貌の青年。「死んで蘇る」というポンチの中でもサイコポンチという新しいジャンルを開拓した吸血だ。実際、ロナルドは大蒜も日光も銀も通用しなかった。その上、2tトラックをサッカーボールのように転がす芸当もやってのけた。
    吸血鬼による大侵攻であったが、ロナルドの大立ち回りにより吸対と退治人一行はロナルドの捕縛に集中する事になった。最早致死量とも言える麻酔弾を撃ち込まれ、ダメ押しの麻酔入りバナナケーキで眠りについた。その際に日光に当たったが、日に焼ける様子もなく寝こけていた。
    後日、ロナルドに実施した身体調査で、今回撃ち込まれた新薬であった麻酔弾の耐性ができている事がわかった。戦慄した一同であったが、当のロナルドは実に大人しいもであった。
    そればかりか研究所として働いているパートのおばさん達に可愛がられてお菓子を餌付けされていた。100歳を超えた人外であるにも関わらずである。
    ロナルド自身は本当に「死んで蘇る」以外に希望はなく、誰かを傷付けるつもりは一切なかった。現にサイコパス人間代表の研究所の長であるヨモツザカに言われるがまま研究に協力し、見かねた吸対が回収した。人間よりも無邪気であり、善良であるロナルドの報告書を読んだドラルクの上司であるノースディンの命令でロナルドはドラルクの監視下に入る事になった。
    「奴の懐に入れ」
    これはノースディンがドラルクに放った言葉である。話術に富むドラルクの手腕を理解し、虚弱であるドラルクが最強と名高いロナルドと友好関係を築く事で、人間と吸血鬼の共存への理解を深める為であった。だが、ドラルクは上司からの命令を面倒だと部下にこぼしていたのはここだけの話である。
    しかし、ドラルクの憂いは良い意味で壊された。同居が決まったロナルドはドラルクに連れられるままドラルクの住むマンションに入った。茶でも出そうと準備するドラルクを見ながら、ロナルドは所在なさげに立ったままであった。それに気付いたジョンがロナルドにダイニングの椅子に座るよう促したが、気まずげに体を縮こませるばかりだあった。
    同居初日はそんなものであった。ロナルドとの同居が始まってから、3か月が経とうとしているが、実に順調に過ごしている。ロナルドは恐ろしく世間知らずで能天気である。話によれば、ロナルドの一族の長を務める実兄のヒヨシはロナルド並みの耐久性はないにせよ、古き血の中でもかなり強力な吸血鬼であるらしかった。やたらビームを撃てる事を強調するロナルドの話を聞いてである為、どこまで本当であるかはわからないが。ドラルクがロナルド程に耐久性がないと、ロナルドの語るヒヨシの武勇伝から気付いたのは「血が違う」とロナルドが言ったのである。
    事実、ヨモツザカが研究しているロナルドの血はかなり強力であるらしい。詳細は未だ不明だが、ロナルドに何か見出しているであろう事はドラルクも勘付いていた。
    「へぇ、君も料理はできるんだね。」
    ロナルドはその世間知らずに似合わず、家事炊事はこなせた。初めはドラルク宅にある最新の家電に慣れないようであった。聞けばロナルドの住んでいた屋敷ではかなり古いタイプの家電を使っていたらしい。あまり使い続けるとつくも吸血鬼化する為、注意はしていたらしい。
    吸血鬼化する程使い続けるとはな。
    ドラルクはロナルドの能力は怪力と再生能力だけではない可能性を考えた。現に、ロナルドの傍に仕える騎士メビヤツは無機物であるにも関わらず自我を得ている。不可思議なのは、ロナルドの使い魔でも眷属でもない部分である。ロナルドによると偶々訪れた城に放置されていたらしい。好奇心に任せてつついたら起動し、懐かれたようだ。以来、長い時を共にしている。ドラルクとってのジョンなのだろう。今でもロナルドを守る為に目を光らせて(物理)ドラルクの尻を焼いて(物理)いる。

    閑話休題

    優秀過ぎるというものも考え物で、ドラルクは日中問わず働いている。副隊長の希美のおかげで辛うじて帰宅できている状態だ。だがここ一ヵ月は違っていた。ロナルドが出る程の強力な吸血鬼が出た訳ではなく、単に数が多かったのだ。
    特に下水を中心に大量に沸いた下等吸血鬼の処理はドラルクの頭を悩ませた。正確に数と位置を特定できるドラルクには余計に夥しい量の気配に吐き気を催した。しかも巣を特定しなければ駆除が終わらず、連日街を駆けずり回っていた。
    その他、ポンチの吸血鬼を相手せねばならなかった。こちらは拳メインのスタイルになりつつあるヒナイチのおかげで早めに沈められた。ただ範囲が広い為に、吸対では後始末に追われた。
    隊長という職に就いている上に、ドラルクの能力は吸対の中で替えが効かない。その為、ドラルクが担わなければならず、何日か徹夜もしていた。自宅の戻れない日もあり、仮眠室で過ごしても疲労は拭えない。
    朝日が昇る前の最も暗い時間。ジョンとロナルドのグループラインに帰る事を連絡した。程なくロナルドから返信が返って来た。どうやらジョンは眠っているようだ。
    ドラルクはいつもより重い足を引きずり、乾いている目を擦りながら家路を急いだ。

    ドラルクが家に帰りつき、慣れた手で鍵を開ける。すると大きな気配が動いた。
    「おかえり」
    ロナルドだった。ドラルクがロナルドと同居をする上で購入した黒のエプロンを身に着けている。ドラルクのエプロンとは違い、金色のラインがあしらわれている。ドラルクのエプロンも着れなくはないが、腰に巻き結ぶ紐がロナルドと違い過ぎてムカついたというしょうもない理由で新しく購入したのだ。
    整髪料で固定していないオールバックはふんわりと弾力を持っている。にこにこと笑うロナルドに、疲れでささくれだったドラルクの精神をやや上向きにさせた。笑顔が何よりも良い処方箋であるという話は、他人の笑顔でも効くらしい。
    「ただいま」
    ドラルクは深く息を吐いた。
    ロナルドに促されるまま風呂に入る。ドラルクの連絡を受けてから浴槽を洗い準備していたらしい。
    浴室は木の香りが漂っている、薬用の入浴剤を使っているのだろう。
    体と頭を洗い、湯の張られた浴槽に入る。熱めのお湯は、冷え性のドラルクに配慮してだろう。長風呂で眠りこけてしまうのを恐れてもある。
    「服、ここに置くぞ。」
    脱衣所の方でロナルドの声がする。擦りガラス越しで大柄な男のシルエットが見えた。
    「うん、ありがとう。」
    ドラルクは眠たげに答えた。ぼんやりとした声に、ロナルドは「寝る前に出ろよ」とやや大きめに答えた。おかげでドラルクは湯に突っ伏する前に風呂を出た。
    風呂に出てから寝間着のスウェットに着替える。だぼだぼのトレーナーはドラルクの線の細さを強調する。パンツは細身のスタイルだが、それでもかなり余りがある。これでもロナルドと生活を共にしてから太くなった方ではあるのだが。
    髪を乾かてから脱衣所を後にすると、食卓には既に食事が用意されていた。小食のドラルクに小鉢を多用する事で、バランスよく栄養が取れるようになっている。白出汁のつくねと白菜の入ったスープに、ざっくり砕いたとろろを大根や葉物にかけたサラダ、みっぴきで作ったぬか漬けも出ている。雑穀米は柔らかく炊かれている。朝ごはんと考えると多く思えるが、忙しさで殆ど碌に食べられなかったドラルクはロナルドにリクエストをしていたのだ。それ程にドラルクはロナルドに胃袋を捕まれている。
    多忙なドラルクに変わり、ロナルドは家事炊事を行っていた。ロナルドは吸対の監視下にする為、保護されている状態である。肩書は吸対の嘱託職員だ、主に前線に出るドラルクの護衛である。基本的に事務処理は行わないので、要請がない限りはドラルク宅に待機である。ジョンがお目付け役となって外出も可能だが、ロナルドの趣味はインドアらしく購買欲も少ない為に家から出る事もなかった。稀に仲間や友人たちと出かけてポンチを引っかけているが。
    ドラルクの虚弱さを見て、ロナルドの方から家事炊事を担うと提案した。善良とはいえ、血で人間を操る事の出来る高等吸血鬼の世話になる事は気が引けた。初めは渋ったドラルクだったが、増えた分の家事炊事を行うのは現実的ではなかった。おバカな言動の多いロナルドであるが、一週間もすれば、ほぼ完璧にこなすようになった。最新家電の音には驚くらしく、びゃっと飛び上がる様子を度々目撃した、その様子がまるで猫のようでつい揶揄ってしまった。顔を赤らめて怒るロナルドはあの夜の狂気はなく、実年齢より遥かに幼く思えた。
    概ね家事炊事をこなせるロナルドであったが、手間取ったのは料理であった。決して下手ではない。事実、ロナルドの料理はジョンやヒナイチには好評である。だが、悲しいかな、胃腸の弱いドラルクには酷であった。また、どちらかというと薄味の方が好みだったのもある。
    ロナルドの作る料理は油物が多く、味付けも濃く甘いものが多い。ロナルド自身が料理を他人に振る舞う機会が少なかった為である。
    吸血鬼は血を提供してもらう為に、人を招き接待する。見目の良いロナルドはわざわざ振る舞わずとも、向こうから飲んでくれと頼まれるのだ。ロナルドが料理を振る舞うのは、気分が乗った時にメビヤツと食事を楽しむだけだった。
    「お前とも住んでいるんだから、お前に合わせ飯が作れなきゃ意味がないだろう。」
    作ってもらっている手前、文句を言わず食べるドラルクにロナルドはそう言った。決して嫌な顔をした訳ではない。味も美味しい、ただ完食するまでに時間がかかるというだけだ。だが、意外と察しの良いロナルドに見透かされていた。
    それからは、要請がない間を料理の練習をしていたようだ。ややふっくらし始めたジョンにドラルクも気になったが、作家業以外にやりたい事のないロナルドにはいい事かもしれないとドラルクは見守っていた。
    その練習した数多くの料理をジョンやヒナイチ以外にも振る舞っていた点については、何となく面白くない気がした。これはドラルクだけの秘密である。ジョンにはバレているかもしれないが。
    ロナルドはどちらかと言うとアナログ派であるらしく、小説の資料の他に料理に関する本を大量に借りてきていた。ただ単にレシピ本ではないのは、ドラルクの虚弱さの割に気を使えない忙しさを考えてだろう。
    勤勉な性格らしく順調にドラルクに合わせた料理のレパートリーを増やしていった。
    詰め過ぎて最早病院食になった事もあったが、それはジョンの最終手段にゅーん♡攻撃で事なきを得る。この時、ロナルドの妙な頑固さを知ったのだった。
    最終的に和食が中心となった。ジョン向けに味の濃い料理を出すが、ドラルクには少なめにし、代わりに副菜を付けるようになった。
    「ごはんありがとう、今日も美味しいよ。」
    ドラルクが食べながらダイニングの反対側に座るロナルドは照れくさそうに笑った。
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