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    rumochi1031

    @rumochi1031

    ジャンル雑多 CP表現など色々とご注意。
    R18作品は表記などしています
    EWの隣人組や海外アニメ系など

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    rumochi1031

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    オヘワン前提のオヘア社長とテッドくんのお話。捏造ルートなのでテッドくんがオヘア社長の所に勤めています
    流血表現など色々と注意

    曇天色のウェディングベール白いツヤツヤしたダイニングテーブルの上に、真っ赤な液体が広がっている。
    その鮮やかな赤は床にも染み付き、衝撃的な光景を作り出していた。

    「社長、すみません。汚してしまって…」

    黒い衣服に身を包んだ青年は、電話口で謝罪した。

    テーブルの上に横たわる男は、青年にとっては見知らぬ存在。
    頭に開いた深い傷から、血が大量に流れ出ているのが広がり、周囲を汚していた。

    「テッド、進展はあるか?」

    と、電話の向こうで声がした。

    「はい、進んでいます。」

    「そこはさっさと他に任せて、戻りなさい」

    ふと後ろを見れば、清掃員と思しき男が2人、室内へ入って来る。
    青年は静かに電話口へ返答し、部屋を出た。



    ***


    この街は少し、他とは変わっている。

    常に心地よい気候で、常に食べ物には困らない。
    全ての人間に家があり、家族があり、仲間がいる。
    感動と興奮を揺さぶるものに満ちていて、退屈することは無い。
    外へ出れば皆が同じく快適に暮らしていて、劣等感も優越感も湧かない。
    街へ誰かが新しく訪れることも無く、去ることも無い。

    煌びやかな金メッキで飾られた、
    永久不滅の監禁要塞。

    それがこの街。

    住宅街を抜け、商売が盛んなメイン通りを歩いていく。
    行き交う人々は思い思いの季節感の服装を纏い、楽しげに過ごしている。
    大部分の人々にはきっと此処は、理想郷のようにも思えるのだろう。
    欲しいものが全て揃っている。
    そうでなければ。

    この街に足りないものなど無いと。
    そう思わせなければ。




    ***



    「ご苦労、テッド」

    白い廊下を抜けると、白い部屋がある。
    社長はこの部屋を社長室とし、滅多に人を近寄らせない。
    パソコンの画面から目をそらさぬまま、社長は僕に告げた。

    「以前の対植樹運動で何人消した?」

    「ええ…12人、です」

    「そのうち2人は10歳以下のガキだったよな」

    カタカタとキーボードの音が途切れず聞こえてくる。
    僕がただ立って指示を待っていると、社長はくつくつと笑い始めた。

    「なぁテッド、お前も18だ。
    あれから年を取りやがったなぁ」

    「お陰様で」

    ぱちん、とキーボードは1音鳴らし、静かになる。
    社長は椅子を引き、僕を見つめた。

    「背もだいぶデカくなったんじゃないか?」

    「はい、先月頃に185センチを超えました」

    「ほぉ!!」

    椅子を降り、僕の胸の高さ位の身長の社長はこちらへ歩み寄ってくる。

    「信じられねぇな。成長期ってのは
    親父の背はデカかったか?」

    「父の記憶は先々月の検査の時に消しました」

    「はぁ。もし此処に神がいるなら、その真実を問いたい所だが……
    お前、俺に嘘ついたことなんか無いもんな」

    「ええ、ただの一度も」

    「なら話が早いな」

    めり、と腹部に重みを感じた。
    骨や肉が無理やりに圧迫され、急激に痛覚が襲って来る。
    僕は痛みのあまり1歩よろめき、膝をつく。
    社長は右手にはめた金属を外すと、しゃがんだ状態の僕と目を合わせこう囁いた。

    「“あの部屋”に勘づいたのはお前が初めてだよ、テッド」

    「ぇ……」

    「見たんだろ?中を」

    「部屋、って……」

    社長は部屋の奥の本棚に目をやる。
    僕は数日前の記憶を辿っていた。

    社長室へ訪れるのは月に数回程度。
    社長に呼ばれこの場所へ来ることが多いが、あの日は社長に言われ社長室での探し物をしていた日だった。
    目当ての探し物が見つからず、本棚へと手を伸ばした僕。
    緑の書籍に触れると、ゴトン、と何かが落ちたような音がした。
    何が落ちたのかを確認する前に、視界の端に目当てのものがあるのを見つけてしまったため、その事はすっかり忘れてしまっていたが……

    「落ちた音というのは、部屋のロックが外れた音だ。お前はあの日、その部屋を解放した」

    「僕はそんな……」

    「部屋の中を確認していないと言うならそれで信じてやってもいい。だがお前にはそれを忘れる権利は無い」

    未だに腹部の痛みが襲い、立ち上がるのが困難な僕の腕を引き、社長は無理やりに僕を本棚まで連れていく。

    「全てを見せてやる」

    緑の書籍に触れ、手前へ何センチか引き出す。
    その後、ゴトン、と言う音も続く。
    社長が本棚を押すと、本棚はまるで扉のように、片側を軸にして開き始めた。

    腹部を押さえながら、僕はその部屋の中を見た。

    「あ……」

    緑。緑。緑。
    その部屋は、まるで、子供部屋のように見えた。
    足元には緑色の布人形や絵本、ボールや積み木、ドールハウスなどが所狭しと並んでいて、壁には特定の人物1人の様々な様子を映した絵画や写真が張り巡らされている。
    甘ったるい砂糖菓子の匂いも立ち込めていて、正直とても、気分が良い部屋ではなかった。

    「彼は私の全てだった」

    僕から手を離すと、社長は静かに告げる。

    「だがその“全て”が欠落すればどうなるか?
    ……簡単だよ、テッド。
    欠落したなら、埋めるしかないんだ
    模造品でもレプリカでも偽物でも、補う力のあるものは何もかも利用した」

    足元に落ちていた人形をひとつ手に取り、数秒見つめたのちに、社長は僕を見る。
    その瞳には、助けを求めるような感情も読み取れた。

    「誰にも見つかる訳にはいかない、私の欠落だ。
    ……墓場へ行ったあとも永遠に、ずっとずっと秘密にしていてくれ」

    「……社長、」

    手に握る人形は、社長の手でギリギリと首を締め付けられていた。
    まるで泣くのを我慢している子供のように見えたその社長の姿に、僕はつい、同情してしまった。

    植樹を願うことが出来ない代わりに、
    どうか、これ以上の闇が、街に広がりませんように。

    まるでベールのようにスモッグが折り重なる空を見上げ、僕は社長の涙を隠すように、その身を抱き締めた。
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