うとうと大晦日。静かなリビングで、大晦日の夜。暖かな照明の下、夕はソファに座り、ミストレイスと一緒にテレビで年越し番組を見ている。寒い外とは対照的に、部屋の中は心地よいぬくもりに包まれている。しかし、夕は疲れからか、少しずつ瞼が重くなっていく。
何度も「これではいけない」と目をこじ開けては、またうとうとし始める。そのたびに、頭がゆっくりと傾き、隣にいるミストレイスの肩に軽く触れる。そして、はっと目を覚まして慌てて身を起こす。
「……だめだ、寝ちゃだめ。年越し、一緒にしたいんだから……っ」
自分に言い聞かせるように小さく呟き、両頬を軽く叩いて気合を入れるが、その効果は一瞬。
「……無理をする必要はない。君が望むのなら、私は年越しの瞬間を何度でも再現して見せよう」
ソファに深く寄りかかりながら、柔らかな声で語りかける。言葉にはどこかからかいの色が混じるが、視線は穏やかそのもの。
「そ、そんなの……意味ないよ」
頬を膨らませて抗議しつつも、次の瞬間には再び瞼が落ちかけてしまう。
夕の姿を見て、微かに微笑むミストレイス。彼はそっと手を伸ばし、彼女の頭を優しく支えるように撫でる。
「君が眠るまでの間くらい、こうして支えていてやる。だから、目を閉じて少し休んでも構わない」
手のひらから伝わるぬくもりが、夕をさらに眠気へと誘う。
それでも、最後の力を振り絞り、彼の腕にしがみつくように身を寄せる。
「……大好きなミストレイスと、ちゃんと……年越ししたいの」
その言葉に、ミストレイスの瞳がわずかに揺れる。彼は、夕の髪に唇をそっと触れさせるように軽くキスをし、低く囁く。
「ならば、少しの間だけ目を閉じていなさい。年が変わる瞬間は、必ず起こしてやる」
その約束を聞いた夕は、彼の肩に頭を預けながら、安心したように微笑む。そしてまた、うとうとと眠りの中へ落ちていった。
彼は時計を一瞥しながら、眠る夕の横顔を見つめる。時間が過ぎていくことさえ惜しいように、彼はその瞬間をただ静かに見守る。
「……君が望むなら、いつまでもこうしてそばにいよう」
そして、年越しの瞬間が訪れる。彼はそっと夕を揺り起こし、微笑みながら一言だけ囁く。
「新しい年だよ、夕」
目を覚ました夕は、ぼんやりとミストレイスを見上げ、すぐに柔らかな笑みを浮かべる。
「……あけましておめでとう、ミストレイス」
その声に、彼もまた穏やかに微笑み、静かに「おめでとう」と応じた。