尚六ワンドロ・ワンライ 第22回お題「後朝」 明かりも持たぬままに、夜の闇を潜り抜けて歩く。道中人に見つからないように、草を踏む音にも気を付けて歩く様は、散歩と言い張るには些か厳しい。増してやここは自分の庭院ではない。完全なる不法侵入というやつだったが、尚隆は歩みを止めなかった。
僅かに軋む音をさせながら、漏窓から目的の房間に入り込むことに尚隆は成功した。ところが間も置かずに六太が姿を現した。他でもない、この房室の主は六太である。無論彼が居ることに不思議はないが、夜半を過ぎての訪問――それも無断での――を出迎えられるのは、尚隆には予想外だった。すでに眠りについているものと思っていたからだ。
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