この居場所に名前を。「晶、ちょっとだけ俺に付き合ってくれる?」
彼にそう言われて、ダメだなんて答えたことは一度もない。少しだけ訝しんで、様子を伺うことはあったけれど、彼が本心で軽口を言っているわけではないのだと知ってからは、少し待たせてしまったり日を改めて貰うことはあっても必ず彼の言葉に沿うようにした。
「はい、もちろん大丈夫ですよ」
なのに、彼は返事を聞くと必ず淋しそうに笑いながらありがとうと言う。どうしてそんな風に笑うんだろう、と思うことはあったけれど、もしも俺が同じように誰かに声をかけたとして。俺も、同じように笑うのかもしれないと思った。
―― だって俺は、異世界からきてこの世界に残された、正真正銘の迷子なのだから。
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