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    nenoha

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    nenoha

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    SEE THE WORLDⅡ展示のラスフィガ(CP未満)。
    ただ会話しているだけです。色々と半端で途中までのため、続編お待ちください…!

    5/15 18時更新 話は進んでませんが加筆追加しました。

    創るこころにかけたおもい<前編>『―― ええ、そうですね。アシストロイドは安全で、我々の友人であり、家族となるような存在です』
    『でもガルシア博士、その……少し言いにくいのだけれど、専門家からは高価すぎてハイクラスにしか手に入らないようなものの流通は格差を招く―― なんて言われていたりするのだけれど、そのへんはどうかしら』
    『高価なのは事実ですね。現在アシストロイドは大量生産ではなく、一人一人に寄り添うために、ボディも、プログラムも、全てオーダーメイドで技術者が丁寧に造っていますから。逆に、大量生産をしたとして、市民に流通したとして、皆が同じものを持っている。そんな時、彼らが使い捨てのようにされるのは見過ごせないですから』
    『そうね、タブレットだって実際のところ私たちの生活になくてはならない相棒だけれど、どちらかというと買い替えることの方が多いわ』
    『でしょう? でも彼らは道具じゃない。だから手間と暇と愛情を込めているし、その分付加価値がつく。これで納得してもらえた?』
    『ええ、とても分かりやすかったわ! 今出回っているペットロイドたちも、とても似ているわよね。比較的大量生産しやすくて小さいから、手に入りやすいって認識で合っているかしら』
    『ええ、まぁおおむね。オーダーメイドな部分はカスタムや追加のファッションアイテムなどでできるでしょう? けど、中身はアシストロイドと同じく皆に寄り添い、家族になってくれる愛らしい生き物だ。ぜひ、彼らのことを大事にして愛してあげて欲しいな』
    『ありがとう、とても素敵なお話だったわガルシア博士。また最新の情報を教えてちょうだい。フォルモーント・ラボから、ガルシア博士でした! バーイ』

     軽快な音楽が流れてホログラムが散ると、映像は華やかで眩いコマーシャルに切り替わる。花びらが散るように、硝子が砕けるように、雪の結晶が融けていくように目まぐるしく現れては消える映像を凝視する二つの影は、目の前にいる彼が所有する、二体のアシストロイドだ。
    「スノウ様、ホワイト様。もういいでしょう。アシストロイドの普及に向けて、俺は十分に貢献したはずです。レノやファウストがやってるペットロイド部門だって、市民向けに普及している。俺がイメージアップなんてする必要もないでしょう」
    「そうでもないぞ。あのアナウンサーが言う通り、ハイクラスにしか持てんような高級品に経済格差が~なんてイチャモンをつけるやつらが沢山おる」
    「そうじゃそうじゃ。そのために、イケメンで、人当たりの良いおぬしがああやってイメージアップを……」
     ゼリー飲料のパウチを吸いきった僕は、目の前のアシストロイドとガルシア博士の会話をただ静かに聞いていた。ホログラムの電源を落としたガルシア博士の声が暗いのに対して、ガルシア博士のアシストロイドたちは明るく賑やかな声で彼を励ましている。
     ガルシア博士は学生時代のうちに彼らを生み出した優秀な科学者で、フォルモーントアカデミアの同期でもある。
    「はぁ……そうやってモノの価値をわかってない人間がいるから、フォルモーント・ラボのハイブランド的な立ち位置を変えるわけにはいかないんですよ。なんていったって、彼の技術開発がなければ、こんなに進化していないんだから」
    「ありがとう、ガルシア博士。旧友のきみに言われるのは少し恥ずかしいね」
     学生の頃からの知り合いということもあって、彼とは比較的会話が可能な仲だ。とはいえ、突然話を振られて体が強張ってしまうのだけれど。その言葉に悪意がないことはわかっているから、ゆっくりと、ぎこちなく笑って返して見せる。ガルシア博士はメディアに出演している時とは違い、疲労困憊した様子を見せながらも肩をすくめて同じようにぎこちなく笑った。
    「おいおい、謙遜しないでくれよ。ラボで気楽に話ができるのはきみくらいなんだ。ちょっとね……プログラムじゃない心で俺の愚痴を少しだけ聞いて欲しいんだけど……」
    「……その言い方はズルいな。僕が断ったらまるで悪人みたいだ」
    「そんなことないさ。でも、実際話を聞くだけなら断ったりしないだろう?」
    「うん。きっとそうだね。僕が話を聞いて解決するものかはわからないけれど、それでもよければきみの話を聞くよ」
     僕とフィガロはいつのころからか、生身の人間とのコミュニケーションを不得意としていた。彼と出会った頃には、お互い似た者同士だったのだと思う。彼のいう通り、気楽に話ができる間柄であるというのは、他の職員を比較対象とした場合正しいと言える。
     スノウ・ホワイトと名前が付けられたアシストロイドは、フィガロの言葉に対して、「フィガロちゃん、我らはー?」「褒められ足りんかったか……? ならば次は――」などと賑やかにフィガロの傍に寄り添っている。彼らの言う通り、どうして僕なんだろうか。
    「アシストロイドという存在の認知や、その生産数の増加、そして普及。これらは数字で見ると飛躍的に伸びている。それはきみも周知のことだろうけれど……さっきのニュースを聞いただろう? ワーキングクラスの人間から反感を買っている。理由はさっきスノウ様が言っていた通りだけど、経済格差のことを俺に言われたってどうしようもないし、それをするのは市長や国の役目だ」
    「……予想をしていなかったわけではないけれど、ああして直接批判の声を向けられるのはとても堪えるものがあるね。きみの言う通り僕たちはあくまでも研究者で、技術者で……広報係じゃない」
     フィガロの憂鬱の原因は度重なるメディアへの出演と、その発言やアシストロイド開発自体への苦言だった。本来、フィガロの本業はそれではない。僕が尊敬する研究者で、新しい部署の立ち上げに抜擢されている多忙な人だ。
    「だろう? けれど、お二人とも口を揃えて人間じゃないと広報の意味がないなんて言うんだ。―― ああ、スノウ様とホワイト様、今は口を挟まないで。ハート財団の『リケ』だって、立派にその役目を果たしているっていうのに」
    「……スノウ様、ホワイト様、どうしてフィガロがメディアに出る必要があるのでしょう? 僕らは人前に出ることは不得手ですし、だからあなたたちの研究をしているんです」
     フィガロは自身が組んだ感情プログラムとAIに非常に依存している、ように見えた。それに少し、彼自身の合理的な考え方を後押しするような言葉を言うようにできているんじゃないだろうか。
    「説明すると複雑なんじゃが……」
    「論理マップと考えられるリスクやあれやそれなんかを表示してもよいぞ。95Tbyteほどになるが」
    「あとは単純な話じゃ。我らのような可愛らしい子供が働きかけて効果があるのは、ハート財団の活動のようなもので、金銭や利権に関わる物事には向いてはおらぬ。信用してもらえんからのう」
     それにしたって、望んで創りだしたはずの彼らに僕たち人間の感情を支配されているように思えてしまって、思考マップの確認のため訊ねれば、さすがガルシア博士の作品、といったところで優秀なAIによる緻密な計算がされているのだと思い知る。フィガロが、そして僕も彼らの言葉を信じたくなってしまうのも当然のことだろう。
    ―― だって、科学者というのはそういうものなのだから。
    「そうじゃ! フィガロちゃん、我らのかっこいい姿見たくないの?」
    「それはちゃんと検討中ですよ。子供型から大人型へのフォームチェンジも、ペット型から人型へのチェンジもみんなの憧れでしょう? きっと需要がある」
    「えーと、話を戻すと、今のスノウ様とホワイト様の姿では効果がない、だから人間であるフィガロが人前に立つ必要があるということで合っている?」
    「厳密には、大人の姿の我らでは購買意欲を高める広報力はあっても、安全性や普及についての根本解決には至らんじゃろうな」
    「ほら、結局こうなる……たくさん頑張ってあなたたちを大人の姿にも子供の姿にもなれるようにしたところで、目の前に控えている取材やら番組出演の数は減ってはくれないし俺のストレスは増えていく一方だ」
     フィガロの溜息も同時に増えていくばかりで、胸がズキリと傷んだ。僕にはまだ自分のアシストロイドがいないから、この小さな“怒り”や“悲しみ”のようなものが、彼を苦しめるストレスの原因に対してのものなのかなんなのか、誰にも訊ねることができない。
     以前、「きみに必要な友人を思い浮かべてプログラムしてごらん」といわれた時にも同じようになった。その時彼はすでに優秀なアシストロイド二体に命を吹き込んでいたのに対して、僕は僕自身のための感情プログラムをずっと組むことができないままでいた。
    「……フィガロ、きみへの出演依頼かもしれないけれど……僕でよければ手伝えることはあるかい? 彼らが尋ねてくることはいつも似通っているだろう? 何度も何度もその相手をしないといけないなんて、僕は考えただけで苦しいから」
     そう言ってしまってから酷く後悔した。言ってしまったものは送信済みのメッセンジャーと同じくらい取り消しができないし、彼のためにも「やっぱり嫌だ」なんて無責任なことをいうこともできない。……こんな時、僕は僕の背中を押してくれる友人が欲しいと思った。
    「おお! これまでメディア露出したことがないフェルチ博士の出演、となれば話題沸騰間違いなしじゃ!」
    「初めてじゃからの、生中継ではなく収録形式が良かろう。んー……ちょうど明日、モニター越しの通話を収録する予定が一件ある。ここならフィガロちゃんの多忙を理由に代打の交渉ができるじゃろう」
    「わかった。時間の調整をしてみるよ」
    「ちょ、え……ラスティカ、本気? 編集が入る分あの人たち結構容赦ないよ」
    「もちろん……そうだね、不安はあるよ。けれどきみが全て背負ってしまうのもよくない。……それに、設計と同じでトライアンドエラーだと思うんだ」
     スノウ様とホワイト様の勢いにかなり圧されてしまったところはある。フィガロもとても驚いていたけれど、少し震えている自分の心に従って覚悟を決めてしまうと言葉が自然に出てきて、僕自身もとても驚いていた。
    「きみって時々本当にチャレンジングだよね」
    「ありがとう。……ああ、明日のこの時間だったら作業の時間をずらせるよ。スノウ様、ホワイト様、代理の僕がうまくできるかわからないけれど、資料の準備をお願いしても?」
    「「無論じゃ」」
     僕自身をサポートしてくれるアシストロイドはまだ存在しない。けれど、友人のためなら僕はきっとなにかを成し遂げられるんじゃないかなんて思えたんだ。


    ―― 結論から言うと、僕はフィガロの代わりをうまく務めることができなかった。
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