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    にじたお

    魔境掃き溜め

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    にじたお

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    魔物を継ぎ接ぎして自分をネクロマンスしたリオンと、遺跡3周目の双子たちのあれそれ。
    結局ラグドゥ遺跡ってなんなんだろうね…?

    遺跡と魔物とネクロマンサーここはラグドゥ遺跡と呼ばれる遺跡群の最深部。魔王を封じた後も魔物が残る危険地帯として、討伐調査以外での立ち入りを禁じられている場所だ。
    ここへ来るのは初めてではない。何度か訪れては魔物を掃討し、徐々へ深部へと開拓しており、最深部へ足を踏み入れるのもこれで三度目である。

    「今回も掃討できましたね。みなさんお怪我はありませんか?」
    エイリークが皆の安否を確認する。魔物の数こそ多かったものの、皆ほとんど手傷を負う事なく討伐できたようだ。あっても、杖の一振りですぐに消えるような擦り傷程度、完勝と言えるだろう。
    「おおよその調査はできましたが、まだ魔物は出るでしょうね。長居は無用です、引き上げましょう」
    ゼトの一声で皆準備を整える。この遺跡には時折武器や何かしらの道具が残されてはいるが、逆に言えばそれ以外に特に見て面白いものなどはなく、ほぼ廃墟と言って差し支えないのだ。

    「どうなさいました?どこか具合でも……」
    「いえ……ふと気になったのです」
    崩れた瓦礫を、その向こうをぼんやりと見つめているノールが隊列から少し逸れかけていた。
    「倒した魔物は燃やせるものは燃やし、燃えぬものは隅に寄せているでしょう?我々はそう間を置かずにここへ訪れているのに……前に築いた屍達はどこへ行ったのか、と」
    魔物が出る危険地帯で、わざわざ掃除をしてくれる人がいるはずもない……にも関わらず、確かに幾度訪れても以前の残骸は綺麗さっぱりとなくなっているのだ。

    「確かに土へ還るには早すぎますし、そもそもここは石畳ですし……ひと月で風化するとも思えませんし……」
    「魔物同士で食べたりしてるんじゃないか?何を食べてるか分からんのも多いしな」
    うむむと考え込むエイリークにエフラムが適当に答える。日が暮れる前に帰るぞ、と首を傾げている2人の背中を押して遺跡から外に出た時だった。

    ガサ、と背後で物音がした。

    まだ残党が隠れていたか、と得物を構え振り向く。振り向いた先にいたのは、牙を剥く獣でも、魔弾を放つ目玉でもなく。そもそも敵意すらなく。

    「リオン……!?そんな、あなたは、あなたはあの時に……!」
    リオンと呼ばれたそれは答えはしなかった。少し驚いた後、ただ困ったように眉を下げた笑顔を浮かべて、そこにいる。いつか見た、彼がよく見せていた表情で。

    ゼトが静止するよりも先に双子が駆け寄る。本物なのか、何故こんなところに、今までどうしていたのか……
    矢継ぎ早に質問を浴びせられたそれはあわあわと焦り困惑する様子を見せるも、何も答えない。
    「リオン様……?」
    ノールもおずおずと声をかける。声をかけられたことに気づいたそれは、申し訳なさそうに頭を軽く下げた。

    日が暮れる前に帰ろう、とエフラムは彼の手を引く。手を引かれると相変わらず何も言わないが、強く踏ん張りイヤイヤと首を振る。遺跡を出るつもりはないらしい。
    「じゃあ……また会えるか?」
    こくり。
    「ここにいるんだな?」
    こくり。
    「約束だぞ」
    こくこく。
    一言一言に頷いて答える。約束、と聞いて嬉しそうにはにかんだその顔は、どう見ても本人のそれに見えて。

    (またね)
    去り際にパクパクと動かされた口は、ずっと前に見た時と同じ動きをしていた。









    最初はなにがなんだか分からなかった。
    何をしていたんだっけ。何をしようとしたんだっけ。ここはどこだろう?自分は……何だった?
    ふわふわと漂う意識は、やがてしっかりと芯を持ち、輪郭を捉えていく。
    そうだ、自分は死んだのだった。肉体は器として消費されたんだ。じゃあこの思考は?この意識はどこから?
    これは魔力の残渣だ。意思が焼き付いて残ったものだ。ゆっくりと自身を思い出し、そして外へ意識を広げていく。

    僕は……僕は、僕だ。僕はフォデスではない。自我はここにある。
    吹き溜まりに過ぎなかった魔力は、やがて濃い靄となって膨らんでいく。
    しかし自己を得たとは言え所詮は不安定なただの魔力の塊、このままでは何かの拍子に霧散してしまうだろう。どうしよう?偶然に得た意識でも、そう易々とは手放したくはない。

    そうだ、同じことをやってみよう。器に魂を入れて……運んでもらおうかな。
    近くには獣のような魔物の姿がある。彼らは魔法に対する防御手段を持っていない。ならば……

    (動きにくいけど、これで移動はできそう)
    魔物の体を間借りして周囲を見渡す。ここは最後に居た樹海ではないようだ。古い廃墟のような……遺跡だろうか。付近には違う魔物の姿もある。魔王はどうなったのだろう?きっと彼らなら封じられるだろうけど。

    体を借りている魔物はフンフンと鼻を鳴らしながら遺跡の中を進んで行く。そういえばこの魔物は何を食べるんだろう?人を襲ったりしてたような……いやまさか。
    獣はそのまま奥へ奥へと歩き、ある1箇所で足を止めた。
    魔物の死体の山。誰かがいた痕跡。どうやら誰かがここの魔物を倒していたらしい。フスフスと匂いを確認した魔物はそのまま踵を返そうとする。

    死体の山、それは即ち素材の山でもある。
    魔物を狩るものがいる以上、魔物の体では危険だ。魔力を回して身体の制御を奪い取ると、フラフラとぎこちなく死体の山へ近づく。獣じゃなくてもうちょっと人っぽいのにすれば動きやすかったかも……
    さて、久しぶりに使う呪法だけど、上手くできるかな。

    死体に魔力を染み渡らせる。骨を繋ぎ、肉を満たし、皮を縫い止め、立ち上がらせる。動かすだけなら問題なさそう。
    でもそれだと結局魔物の形だから……人の形にしないと。
    僕はどんなだったかな。紫の目と髪の色を綺麗だと褒めてくれたのは誰だったっけ。最後に鏡を見たのはいつだった?

    人に似た魔物の死体を繋ぎ合わせる。骨を曲げ、肉を動かし、皮を貼り……おおよそ人の形にする。
    あとは魂を中に入れれば出来上がり。
    自身の魂を、今の自分を構成している魔力の塊を流し込めばいい。獣の中から出て、作り上げた人形へ入り込めば完了だ。
    エンバーミングは追々かな。そもそもここには鏡がなさそうだからね。

    ゆっくりと立ち上がる。まだあまり馴染まないけれど。5本の指を握り込む。ゆっくり開いて、顔を触ってみる。触覚は問題なさそう。目も見えてる。
    ああでも、喉から出る音は人の声ですらないな。魔物の金切り声しか出てこない。

    とはいえ素材は潤沢にある。身を潜めていれば、きっと魔物を狩るために誰かが来る。

    そうしてどんどん貼り替えて、上手く人の形になったらその時は……
    その時は、この魔物が蔓延る遺跡と共に消えて無くなろうかな。外に出しちゃいけないからね。魔物たちも、それらで出来たこの体も。

    いつか誰かに見つかるかもしれないけれど、その時はちゃんとした形になれてるといいな。危ないから引き返して、と喋れるようにならないと。
    魔物が世から消える時は一緒にこの身も消えるだろう。だからそれまでは、継ぎ接ぎして過ごしていようかな。
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