くわぶぜスーツ!!「おま、お前……そのカッコ!なんだよ!!」
「え……何……どっか変かなぁ……。」
なんてことはない、日常の朝である。
ちょっと所用で早く出なければならない僕が、洗面所で珍しく髪の毛など整えていると、少しだけ遅れて起きてきた豊前が「おはよー」も言わずにかけてきた声が、冒頭のそれ。
僕は自分のカッコをもう一度見直す。
黒に近いグレーのズボンに白いワイシャツ。ネクタイは落ち着いた黄色を選んでみた。
セットになっているからベストも着込んで、あとはジャケットを羽織るだけ……の格好なのだが……。
「普段、着なれないから、やっぱり変かなぁ……。」
「いや、そーじゃねーけど……。」
豊前が口ごもる。
今日は学会で教授のお供だから、まあ恥ずかしくない格好をして来いって言われて……。だから普段はほとんどいじらない髪の毛なんかも少し後ろに撫でつけてみたりしたわけだけども……。
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