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    ytgr_9u

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    もちマスぎねがおてこてのはっぴーきゅーぴっどになるお話です。

    #おてこて
    hand

    御手杵と篭手切江とおてぎね「ね〜おてぎねさん、どう思う?」
    「……」
    「御手杵さんってば、また朝寝惚けて抱きしめてきたんだよ」
    「……」
    「ご飯の時も口におべんとうつけて……」
     篭手切がどんなに話しかけても言葉は返ってこない。しかしそれは当然のことであった。相手は『ぬいぐるみ』なのだから。
     審神者から貰ったぬいぐるみ、それは篭手切の想い刀がモチーフになったものだった。綿の詰まったもちもちのぬいぐるみをつっつきながら、ただひたすらに今日あった出来事を喋り続ける。本物の御手杵は本丸の資材不足解消の為にずっと遠征に行ってるから、この『ひとりごと』が聞かれる心配はない。
    「そういえばね、御手杵さんとお風呂で一緒になったら、絶対水の掛け合いになるから楽しいんだよ」
    「……」
    「『槍と脇差の連携技だ!』なんて言って、どこまで水を飛ばせるか勝負するの」
    「……」
    「でもおてぎねさんはぬいぐるみだから一緒にお風呂入れないね」
    「……」
     変わらず無言のぬいぐるみに、篭手切は少しだけ溜め息をつく。
    「……御手杵さん、最近忙しそうだから……寂しいなぁ」
    「……」
    「あっ、今のは無し無し! まぁ、ちょっとだけでも、会いたいのは本当だけど……。おてぎねさん、もう寝ようか。……おやすみなさい」
     篭手切は照れ隠しのようにそう言いながら部屋の明かりを消して、ぬいぐるみと共に布団に入ったのだった。
     

     ほとんどの刀剣男士が寝静まった頃、本日最後の遠征組が帰還した。
    「おかえりなさい」
    「おう、主。帰ったぜ」
     戦装束の上着を脱ぎつつ、御手杵は玄関に転がっていた小さな緑の塊を見つけた。
    「……ん? これ」
    「ああ、それ、少し前に篭手切江にあげたんですよ。言葉にはしないけど、なんだか欲しそうな顔をしていたから」
    「篭手切が?」
     見る限り、明らかに御手杵がモチーフのぬいぐるみである。
     御手杵の大きな手のひらの上でころころと転がるぬいぐるみは、握れば潰してしまいそうだった。
    「そうか、お前は……ずっと篭手切と一緒にいられるんだな」
     ぽつりと、御手杵が小さく呟いた言葉に小さなおてぎねがぴくりと反応を示した。
    「えっ、主! これ、動くのか?!」
    「ただのぬいぐるみだと聞いていますけど……」
    「お、俺の気の所為かもしれない」
    「まぁ、貴方がモチーフになっていますし、この本丸の霊力でその子が意志を持つ可能性も無いとは言い切れませんよ?」
     そう言って審神者は微かに笑った。
    「ああ、資材の方はひとまず危機を乗り越えたので、遠征部隊の皆さんはしばらくお休みにしますね。ご苦労様でした」


     夜食を食べ終えた皿の隣で、御手杵はぬいぐるみの自分を突っついていた。
    「……は、俺はこういう時も突くことしかできねぇな」
     その自嘲気味な笑いに、おてぎねが再びピクリと反応を示した。
    「やっぱお前、気の所為じゃねぇよなぁ?」
    「……!(コクコク)」
     小さな身体で必死に伝えてくる様子が可愛くて、思わず小さな自分を手のひらに乗せてやる。その後も手のひらの上でも何かを伝えようとモゾモゾ動くのを見て、自然と手を耳元に近づけた。
    「〜〜〜! 〜〜〜〜っ!」
    「……え、篭手切はお前が動けるの知らないのか?」
    「〜! 〜〜〜〜!!」
    「篭手切が……?」
    「〜〜〜〜、〜〜っ!」
    「本当にそう、言ってたのか……?」
     伝え終えた、とばかりにおてぎねはそそくさと手から降りる。御手杵の方はと言うと、告げられた(?)事実にしばらく呆然と動けないでいた。
    「あの篭手切が……そうか……」
     それならこんなことしてる場合じゃない、と立ち上がった御手杵は、寝支度のために軽くシャワーを浴びた後、自分の部屋ではなく篭手切の部屋を訪れた。
     篭手切はきっともう夢の中にいることだろう。
     起こさないようにゆっくりと扉を開けると、布団の中で寝息を立てる篭手切を見つけた。よく見ると、御手杵がシャワーを浴びている間に戻ったのか、小さなおてぎねも同じ布団の中に転がっている。そのまま何も知らない篭手切が寝返りを打ち、おてぎねを抱き締める体勢になった。
    「おまえ……」
     先程なら反応しただろうが、篭手切の前では『ぬいぐるみ』を貫き通すらしい。
     そのぬいぐるみの精神に感心しつつも、御手杵はそおっと篭手切の布団の中に身体を滑り込ませた。小さなおてぎねごと、篭手切を腕の中に閉じ込めて、その温かさに安心感を覚える。
     あぁ俺、帰ってきたんだな。
    「……んぅ」
    「っ、……篭手切?」
     起こしてしまったかとヒヤヒヤしたが、身動ぎをしただけで篭手切の瞼は閉じたままだった。御手杵はほっと一息ついて、身体の強ばりを解いた。
    「…………ただいま、篭手切。今までの分、明日はずっと一緒に過ごそうな」

     朝、腕の中に閉じ込められた篭手切江は御手杵が目を覚ますまで身動きが取れなかったらしい。しかしそれは『動けなかった』のか、それとも『動かなかった』のか。
     それを知るのはあの小さなぬいぐるみだけである。
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