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    鯉登陽

    @peropero_cino

    適当に書いてみた小説とか練習した絵とかあげます

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    鯉登陽

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    大学院生(受け)と教授(攻め)のおはなし序盤チラ見せ。
    完成したらピクシブに上げますヨロシクね

    #創作
    creation
    #BL

    「教授~……ほんっとうに大丈夫なんでしょうねェ!?」

     褐色の腕を擦りながら、間宮陣一郎は喚いた。その声には怒りと不安が入り交じっている。
     都心から遠く離れた山にある小さな限界集落……の更に奥に陣一郎はやって来ていた。
     といっても別に遊びに来ているという訳ではなく、研究の為にだ。
     大学院で所属している民俗学研究室のフィールドワークの一環である。
     研究室といっても自分と教授の二人しかいないし、研究費も僅かばかりの貧乏研究室だ。ここまでの旅費だってほぼ自腹である。しかも、自分の研究や論文執筆やアルバイトの合間に教授の身の回りの世話や、こうして趣味……もとい研究のお供もしなければならない。今回だってそうだ。

    「うう……寒いィ……これで風邪とか変な病気になったら棟方教授のせいですからね!」

     あまりの寒さに耐えかねて陣一郎は叫んだ。隣で何食わぬ顔で厚着をしてぬぼーっと突っ立っている棟方教授の腕を殴り付ける。

    「あんれま、随分乱暴な教え子だなや」
    「今この村の中で一番若いのは間宮くんだけなのだ。研究のためと思って我慢してくれ」
    「殆どあんたの道楽でしょーがァ!」

     今回の目的はこの村に伝わる祭りの取材だった。なんでも、豊穣の神を祀る為のモノらしいが過疎化が進み若い者がいなくなってから祭りは久しく執り行われていないようだった。そのせいか村のそこらじゅうに点在する田畑は枯れ、村そのものの雰囲気も薄暗く思えた。そこで白羽の矢が立ったのが陣一郎であった。

    「二十二かァ~……まァ、ギリかねぇ」

     陣一郎を前にして老人たちは頭を突き合わせながら相談しあっていたが、ややあってから満面に笑顔を張り付けて祭りを執り行うことと取材を快く許可してくれた。

    「どうも若者が出ていって依り童役がいなくなったのが祭りを行えなかった原因らしい」
    「よりわら?」
    「まァ、簡単に言うと山の神に捧げる生け贄……神と人間の橋渡し役って所だ。本来ならば村の十代の青年の中から選ばれるんだが、今回は君で手を打ってくれるらしい」
    「……なんかそれ、メッチャ屈辱なんですけど」

     そもそも、そんな由緒正しい祭りの重要な役割を部外者に頼んで良いものなのだろうか?
     渋々ながら支度を進める陣一郎を尻目に棟方は紐で綴られた冊子をペラペラと捲っていた。

    「まァ……大丈夫じゃないか? 君、見た目だけは良いし神様も許してくれるだろう」
    「だけは余計です……っていうか、何なんです? この格好……」

     全て着替え終わってから初めてとんでもなく恥ずかしい格好をさせられていることに気がつき、陣一郎は瞬時に顔を真っ赤にした。上半身は異常に丈が短い法被だし、下半身に至っては褌一丁という出で立ちである。うら若き二十二才の陣一郎が恥ずかしがるのも無理はない。祭りが廃れたのは過疎化のせいもあるだろうが、このこっぱずかしい格好も一因に違いない。やはり物事にはキチンと理由があるのだ。

     そんな陣一郎の内心を察してかは知らないが、

    「なかなか似合うぞ」

     と、棟方は冊子から顔を上げてにたりと口端をつり上げたのだった。
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