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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    荒北さんがえっちなDVDを新開さんに発見されちゃうよ!な大学生荒新

     玄関を開けてすぐ、目に飛び込んできたのは自分の物ではないスニーカー。短い廊下の向う側では人の動く気配がする。なんの連絡ももらっていないのに、あいつのわけがない。けれどこの部屋の鍵を、オレ以外に持っている人物が一人しかないのも事実だ。なかば駆け出すように慌てて靴を脱ぎ、リビングへの扉を開けた。
    「……あ、靖友。おかえり」
    「新開」
     ベッドへ背をあずけ座る新開は、読んでいただろう小説から顔を上げこちらへ笑いかける。
    「……なんで」
    「急に時間空いたからさ、来ちまった」
    「おまえ、連絡くらい入れろヨ」
    「迷惑だったか?」
    「だれも、んなこと言ってねェ」
     実際、迷惑なわけがない、いつだって会いたいと思っているのだから。突然でも新開がこうして会いにきてくれるのは、嬉しくてたまらない。ただ、それを素直に表に出すのが恥ずかしいだけだ。
    「そう」
     照れ臭ささを誤魔化すように、ガシガシと頭を掻きながらそっぽを向くと、返ってきたのは短い言葉だけだった。
    「新開?」
     どこかいつもと違う新開の様子に、視線を戻すと口端はいつものように上がっている。けれどそれはいつもの笑顔とは全然違う。
    「なに」
    「……おまえ、なんかあったか?」
    「なんかって?」
    「いや、だから……気になることとか、イヤなこととか」
    「なにもないよ」
     新開の言うなにもないは、かなりの確率で何かあったってことだ。じっと窺うように新開を見つめていても、視線が逸れることはない。何か隠しごとをしたい時は、その視線はすぐにオレから外される。今も新開は黙ってこっちを見たままで、口許の笑みも崩れることはない。けれどやっぱり違和感は拭えなくて、観察するように様子をみた。
     なんだ? 昨日のメッセージのやり取りでは普通だった。そもそも何かあったとしたら、こいつは今ここにいないだろ。なら、この部屋に入ってからってことになる。でもこの部屋に何があるっていうんだ。いつも新開が来る時よりは汚れてるが、そんなことで怒ったりしないだろ。
     そうだ、怒ってる。新開のこの感じはたぶん怒ってるんだ。
     不安を感じてる時や我慢してる時とは、瞳が違う。そういう時の新開の瞳はゆらりとたゆたう感じなのに、今は瞳の奥で何かが燻っている感じだ。
     ちょっとまて、怒るって何に? この部屋のどこに怒られるような要素なんかあるんだよ。あいつがいつも来る時と何も変わらないはずだ。他のヤツの気配なんかしないし、そもそも新開の知ってるヤツしか部屋に上げたことがない。新しく増やした物もないし、もちろん新開の置いていった物だってそのままだ。当たり前だが、ゴムもローションだって減ってない。というか、たぶん新開はゴムが何個残ってるかなんて知らない。あいつの部屋にある分はたまに確認して補充してるみたいだけど、こっちの部屋にある物はノータッチだ。
     くっそ! マジでわかんねェ。つーか、これわかんなきゃダメかァ?
    「なァ、なに怒ってんだ?」
     正直、面倒くさくなった。新開が思い悩んでいるなら、訊いても言わないことが多いからもう少し考える。でも怒っているのなら、ちょっとつつくだけでぼろを出すはず。
    「なにも」
     また短く返事して、新開の視線が一瞬だけ横を見た。その先を目で追っても、そこには雑に積まれた雑誌があるだけ。頭にはてなマークを浮かべながら、その雑誌の山を見ていてふとあることを思い出した。一週間くらい前に部活の同期から借りたサイクル雑誌。雑誌と雑誌の間に挟まっていた、いわゆる世間一般で言うAVの存在を。
    「もしかして……」
     ぎこちなく視線を戻すと、そこには絶対零度の微笑みを浮かべた新開がいた。
    「ん? 靖友どうした」
     表情も声も穏やかなのに、目が笑ってない。これは確実に見つかった、つまり怒りの原因がそこにあったってことだ。
    「ち、ちがっ、あれは、オレのモンじゃねェ!」
    「あれって?」
    「いや、だから……その、見たんだろ?」
    「なにを」
    「あの、あれだよ、あー……なぁ」
     いっさい表情を変えない新開に、背中を嫌な汗が流れる。上手く言葉が出てこないオレを無視して新開が立ち上がった。そして部屋の隅にある雑誌の山へ向かい、そこへ手を伸ばしている。
    「靖友、もしかしてこれのこと?」
     くるりと振り返り、とってもいい笑顔でそう言った新開の手の中にあるのは、案の定一番見つかってほしくなかったそれだ。
    「マジで違うんだって! サイクル雑誌借りたら一緒に入ってただけで、オレんじゃねェ」
    「ふーん。じゃあ、靖友これ見てないの?」
     新開の言葉に心臓が跳ねあがる。だって、見てしまったから。というか枯れたジジイじゃないんだから、興味はあるだろ。普通手元にそんな物があったら一回は見るのがあたりまえだと思う。
    「ちょっとだけ見た」
    「ちょっとって」
    「最初の十分くらい」
     ここで嘘をついたら余計に拗れるのは経験でわかる。本気で怒っている時の新開はある意味、一人でぐるぐる考え込んでる時よりたちが悪い。
    「へー、十分ねぇ」
    「嘘じゃねーヨ」
    「ふーん」
    「おまえ、信用してねェだろ」
     全部本当のことしか言っていないのに、全然信用されてない、それってどうなんだ。実際に見ていて女優の嘘臭い喘ぎ声に萎えた。だから最初の十分、そこで止めてケースに戻しその辺に放り投げた先が雑誌の山の中だったのだ。
     だいたい、こういう物を見るのはそんなに悪いことなのか。恋人と離れていて、そうそうセックスが出来る環境にない。でも性欲は溜まっていく、そうなったら自分で処理するしかないだろ。浮気するわけでもないし、こんな物を見るくらいでごちゃごちゃ言われるってどうなんだよ。
    「つーかさァ、こーいうのって見ちゃいけねェもんなのか?」
    「オレは見ない」
    「は?」
    「オレは靖友と付き合ってから、こんな物見たことないよ」
     新開が不快そうに手に持ったそれを揺らし、テーブルへと投げた。いつの間にか笑顔も消えて、完全に拗ねた顔になっている。
    「……なら、おまえ何で抜いてんの?」
     新開の怒りがとけていないのは、わかっている。でも今オレは好奇心の方が勝ってしまった。
    「はぁ? なんだよそれ。いまそんな話ししてないだろ」
    「だって、おまえだって溜まんだろ。そん時どーやって抜くの」
    「……だから、それは、また別の話だろ。いまは靖友がこれで一人でしたって話ししてんのに」
     ほんのりと新開の顔が赤く染まっていく。その反応が可愛くて、いよいよ新開のオカズがなんなのかが気になってしかたない。 
    「いや、オレそれで抜いてねェし」
    「え?」
    「十分しか見てねェっつたろ。わざとらしくアンアン喘ぐから萎えた」
    「……なにそれ」
    「マジだぞ、おまえの声のがよっぽどエロい」
    「は? え、や、やすとも、なに言ってんの!」
     一気に耳まで赤くして、明らかに動揺し始めた新開に思わず笑いが零れた。
    「だから、その日はおまえのこと思い出して抜いたんだけどォ、ダメだったァ?」
     本当は訊かなくてもわかる。そういった物をオカズに使わないとなれば、それはお互いを思いながらするしかない。けれど、こいつの口からその事実を聞きたくなった。新開との距離を詰め、あと少しで唇が触れそうなくらい顔を近づけた。
    「で、新開チャンはなにをオカズにオナるんですかァ」
     さっきまでの絶対零度の微笑みはどこへ行ったのか、瞳を潤ませ恥ずかしそうにうつむく新開に笑いをこえるのが難しくなる。
    「もう、靖友なんか知らない!」
     そう叫び新開はオレの肩に頭を乗せてきた。完全にお怒りはとけたらしく、うーっと唸りながら唇を尖らせている。そんな新開が可愛くて、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてから抱きしめた。
    「とりあえず、おまえのオカズがなんなのかは後で訊くわ」
     そこまでで一旦、言葉を切る。
    「それより、先におまえとキスしたいんですけど」
     耳元で囁くと新開の肩がピクリと跳ね、おずおずと顔が上を向く。頬を赤く染め、水分を含んだ瞳と目が合うとふっくらとした唇がオレの名前をゆっくりと呼ぶ。
    「やすとも」
     これは、その辺のAV女優じゃ太刀打ちできないだろ。
     今日はきっと止めらんねぇな。あぁー、新開頑張れ。
     心の中で呟きながら、柔らかな唇に自分のそれをそっと近づけた。
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    Replies from the creator

    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
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