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    脱藩したユと国許で人斬りになったアの再会シーン

    途中から地の文がない。

    幕末ノユリアル 続き都の冬は寒い。レヴィオンも冬の寒さは厳しく、深い雪に覆われる土地柄だったが、都も負けず劣らず寒い。雪など滅多に降らないのに、石畳の街は一面薄く氷が張って、硬くて痛い。冷たいながらも柔らかな温もりのあった雪のレヴィオンとは大違いだ。

    「ユリウス」

    呼ばれたような気がして、ユリウスは足を止めた。人目を避けるため、決して取ってはならないはずのフードを下ろしたのは、その声の主が誰か、考えるより先にわかっていたからだ。
    思い出そうなんてしなくても浮かんでくる、あの背格好を探して、ユリウスはぐるりとあたりを振り返った。

    「親友殿……?」

    大通りから分岐した細い路地の影に、若い男の姿があった。
    顔を半分隠すようにすっぽりマフラーを巻き付けて、顔立ちは判然としない。だが、冬の陽射しを受けて白金色に輝く髪は、間違いなく親友、アルベールのものだ。
    何故ここに、なんて疑念を抱くより先に、足が勝手に彼の元に向かう。ブーツの足音が、焦るあまり縺れて転びそうになる。
    アルベールは、マフラーの中で小さく笑ったようだった。

    「…………うん。久しぶりだな、ユリウス。……親友殿」
    「ああ、本当に! 何年ぶりだろうね、まさかこんなところで会えるなんて。いつか帰国が叶えば、会えることもあるだろうとは思っていたけれど」 

    恋物語ならば駆け寄って抱き締めそうな速度で歩み寄ってきたくせに、そこはユリウスなので、彼はつま先が触れるほどの距離でぴたりと足を止めた。白い息を弾ませながら、嬉しそうにアルベールに笑いかける。

    「本当に、アルベール、君、どうしてこんなところに? それにその格好、団服でない君を見るのは久しぶりだ。何かあったのかい」
    「……そこで止まるなよ、親友殿。せっかく感動の再会なのに」

    ちら、とユリウスの向こうの大通りに目をやって、アルベールはマフラーに手を伸ばした。片手でマフラーをほどきながら、もう片方の手でユリウスを手招きする。

    「なんだい、一体……うわ、」

    身を屈めて顔を寄せたユリウスを、アルベールの両腕が抱き留める。あんまり強く抱き締められて、一瞬、息が止まる。

    「会いたかった。もう会えないかと思っていた。……心配したんだぞ、どれだけお前を探したと思っているんだ、ユリウス」
    「ごめん、すまない。悪かったよ、親友殿。あれは……」
    「うるさい。悪いと思うならしばらく黙ってろ」

    怒ったようにアルベールが言うので、ユリウスは口をつぐんだ。ちょうど肩口にあるアルベールの髪をゆっくりと撫でてやる。手袋を外したいな、と思ったけれど、もう片手はすっかりアルベールに捕まっていて、それはできなかった。

    「……なあ、ユリウス。こういう時……普通はやつれていないか心配するものだと思うんだが。ユリウス、お前、昔もっと痩せてなかったか? 抱きついたら折れそうでいつも心配してたんだが」
    「おかげさまで、肉体労働なんかに従事することも多くてね。ちょっと丈夫になってしまった」
    「……複雑だな。お前をどうやって修練場に引っ張り出すか、子供の頃はずっと苦労してたのに」
    「子供の頃の話だろう?」
    「子供の頃の話でも、だ。俺の知らないところでお前が一人で肉体労働だと?」
    「お気に召さないご様子だね、親友殿」





    「…………なあ、親友殿。気のせいか、さっきからちょっとビリビリするんだが」
    「静電気じゃないか? 真冬だしな」
    「いや、親友殿。静電気はこんな……と言うか、痛い! 親友殿、そろそろ真剣に痛いんだが、っ痛、アルベール! 君これ絶対わざとだろう?」
    「うん。まあ、このぐらいで勘弁してやるかな、今日は」

    「こんな晴れた日に落雷死するかと思ったよ。……うん? 今日は? と言わなかったかい、いま」
    「今日は、だな。お前、一体何年心配かけたと思っているんだ。一日で気が済むはずないだろう」
    「ああ。いま急に、君が思い詰めたら長いタイプだったと思い出したよ、親友殿。やれやれ、身から出た錆とは言え、あと何回付き合ったら許してもらえることやら、だね」

    「それで、本当に君、どうしてここに?」

    「詳しくは言えないんだが、騎士団の極秘任務、みたいなものだな。しばらく前から都に滞在している。流石に今は任務中じゃなくて、待機中だがな」

    「ふうん」

    「そんな、しばらく前から滞在している程度で、よくこの広い都で私が探し出せたものだね?」
    「最近では都には開国派を狩る人斬りが出て、お前だって用心して暮らしているのに?」
    「ああ。よく見つけられたものだと思ってね」

    ユリウスはただ、労をねぎらうか、或いはアルベールの宿命めいた強運に感嘆しただけだった。
    けれど、アルベールはそうは受け取らなかったらしい。

    「さっき、お前は『こんな晴れた日に落雷死するかと思った』って、そう言ったよな。お前にしてはずいぶん面白い事を言うんだな。……なあ、まさか、お前もどこかで聞いたんじゃないか? 最近、開国派の論客が、あちこちで雷に打たれて死んでいる……って。そう、ちょうど、こんな晴れた日に」

    「……アルベール? まさか」

    「よかった」

    「まさかとも言われなかったら、どうしようかと思った」

    「気をつけろよ、親友殿。お前の居場所なんて、探す気になればいくらでも出回っている。ただ、まだお前を殺せっていう仕事が誰のところにもきてないだけだ。……俺のところにも、な」







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