いや、そんなに息苦しいわけはねーな!!!髪の長い人とキスするとき、髪の毛ぐしゃぐしゃってするの、いいよねっていうユリアル。
これは地上の場合。同じテーマでお空も書きたいが今日はもうおやすみなさい。
………………
ユリウスは、自分の髪が嫌いだ。
腰に届くほど長く伸ばしているのは、この髪に手間をかけることさえ煩わしくて、伸びるがままにさせているにすぎない。見苦しくないように最低限の手入れはするが、毎朝、櫛を入れるたびに、あちこちに跳ね散らかった乾いた髪にうんざりする。おまけに色はまるで失敗した紅茶のような赤茶色だ。
もっと、手触りが良くて素直にまとまる、例えば金色の髪だったらよかったのに。
『だったらよかったのに』なんてなんの発展性もない感想をユリウスが抱くことはとても珍しい。だが、この髪だけは、生まれてこの方一度も折り合いをつけられずにいる。
ユリウスは自分の髪が嫌いだった。
アルベールと口づけを交わすようになった。
アルベールもユリウスも、どちらも負けず嫌いというか、大人しく相手の言う通りになどしてやるものか、という気質だ。おかげでキスも、艶かしいものというよりはお互いに噛み付いているような始め方になる。
彼の剣技同様、アルベールは先制と速攻を得意とする。両手でユリウスの髪を引っ掴んで、引き寄せる。猟犬に躾でもしているかのように、顔を傾けさせて、
私だからいいようなものの、まさか、どこかの淑女にまでこんな乱暴な扱いをしていやしないだろうか。
自分の髪をぎっちりと掴んだアルベールの指の感触に、他人事ながらユリウスは少し不安になる。それから、まあそれでもいいかと思い直す。
もし団長殿がこんなやり方しか知らないのなら、団長殿がどこかの淑女に二晩通うような日は永遠にやってこないということだ。ではそんな可哀想な団長殿は、何度でも私が慰めて差し上げようか
そんなことをぼんやり考えながら、唇と舌で攻防を続けているうちに、アルベールの様子が変わってくる。攻撃主体だったものが、防戦一方になる。息が続かないのだ。
おや。
おやおやおやおや、まあこれはなんと、お可愛らしいことで。
そりゃあユリウスだって息苦しいのだが、ユリウスが呼吸せずとも、宿主の生命を維持するために触手たちが酸素を融通してくれる。どうせ死なないのなら、死ぬほど苦しくても、アルベールを息も絶え絶えにしてやりたい。どうしてお前は平気そうにしているんだと、あの悔しそうな涙目で睨みつけられたい。
あれが手に入るのなら、常人なら死ぬ程度の息苦しさなんていくらでも我慢できる。