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    JIRO52274304

    @JIRO52274304

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    JIRO52274304

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    初めて書いたヒュンポプが永遠の愛を誓う死ネタになってしまいました。
    以下注意事項です
    ※マムがモブ男性と結婚してる※ダイレオもしれっと※ロンノヴァもしれっと※
    それからファンタジーのため科学的なことはおいておいての遺灰ダイヤモンドです。

    骨と鉱石ヒュンケルが死んだ…。
    あの戦いのあと、動かない体を無理に使って行方知れずのダイの探索をやってのけて、それでダイが帰ってきてアバンの使途も皆揃った中で満足そうに笑っていた。

    その日からたった2年後のことだった。
    もともと半死半生みたいな状態だったのをよくここまで持たせたもんだ。
    なんとも大往生じゃねえか。
    死に顔は満足そうに見えた。

    「先に逝くなんて分かってたけど早すぎんだよ」

    ヒュンケルが死んだのは、皆がそろって笑ったその日から2年後。
    そして俺がヒュンケルの告白にイエスと答えた半年後の事だった。


    ---------


    皆がそろった日はダイと姫さんの結婚式の日だった。
    安心したのか、その日を境に少しずつヒュンケルは体調が悪そうな日が続くようになっていた。
    怪我や毒なんかあれば魔法も効くが、病気や寿命に魔法は効かない。
    それでもと、皆に請われてヒュンケルが調子を崩した時は、ヤツの住居を訪れては魔法や薬草で看護をしていた。

    その頃にはすでにマアムには二人とも振られたようなもんだった。

    マアムはネイル村の幼馴染と結婚して、俺やヒュンケルと一緒になるのとは別の幸せを手に入れてた。そもそもだ二人から選べなんて、なんて傲慢だったんだと今なら分る。
    あの頃の俺たちは若く視野も狭く1つの事しか見えてなかった、それ故に大魔王討伐だなんて偉業を達成したけれど。

    弱っていくヒュンケルの世話をしながら、ヒュンケルが寝ているベッドの脇においた椅子に座って話す事が多かった。

    「お前ときたらマアムしか見えてなかったな」
    「そりゃあ初恋だったし実際いい女だっただろ?」
    「そうだな、俺にもお前にも勿体ない…いい女だった」

    魔法をかけ終わると効果はなくとも体力は戻るのか、気分の良さそうなヒュンケルは良く笑って俺を揶揄ったりしていた。
    だけどその日は口数も少なく俺をじっと見つめていたので俺は居心地が悪くて仕方なかった。

    やめとけヒュンケル、と心の中で俺が言う。

    ヒュンケルが俺を見る目が、変わっていたのは分かっていた。
    俺も大人になって、マアムに振られてから女性と付き合ったことだってあったし、人の目がどういうものか、世間に出て知り経験を積んでいる。

    「ポップ、お前に言いたかったことがある」
    「なんだよ、改まって気持ち悪ぃな」

    言いたいことがあると言いながらも、ヒュンケルは言葉を選んで言いあぐねているようだったから、このまま有耶無耶にしてしまおうと椅子から立ち上ろうとしたところを手首をつかまれた。

    ぞっとするほど細い指だった。
    死の気配を纏った指だ。

    「好きだ、ポップ」

    立ち上りかけていた俺は、尻もちをつくように椅子の上に戻らされた。

    「何言ってんだ…おめぇはよ。熱あんじゃねぇの?」

    大声で言い返せなかったのは、分かっていたからだ。
    いつか告白されるだろうことは分かっていた、だってよ、俺だってそうだからだ。
    マアムが結婚してからは振られた者同士で飲むこともあったし、ダイの探索で一緒に旅する事も多かった。
    そんな中で俺はマアムがヒュンケルを「ほっとけない」といっていた意味を理解する。この男は危なっかしいことこの上ないし自己犠牲が過ぎる。
    それも全部他人への優しさゆえに。
    ほっとけない…から良く見ていればヒュンケルは実に優しい男で顔もよく、そして俺を良く見ている男だった。その視線の意味は大人になってしまった俺には分ってしまう。

    情を含んだそれだと。

    「熱はない。さっき計っただろう」
    「そういう意味じゃねぇよ」
    「じゃあ茶化さないでくれ、答えは?」

    こんなところは変わっていない、相変わらず無礼で上から物を言う小憎たらしい男だ。顔の良さでみんな誤魔化されているが、こいつは本当に失礼な男だ。
    そう思いつつも惚れた弱みはどうしようもない。

    「あまりもん同志お似合いかもな」

    横目で見たヒュンケルは心底安心したという顔をしていた。
    これを言わねば死んでも死に切れんところだった。

    と、くそ縁起でもねぇこと言いやがった。


    -----------


    それからわずか半年だ。

    告白を受けてからヒュンケルは気力が戻ったようで調子のよい日も増えて安心していた。仕事にも復帰できそうだと、嬉しそうに話していたのはつい1か月前。

    こんなに早く死ぬなんて。

    葬儀はカールの女王とその王配のもとに行われた。
    葬儀の喪主は姫さんが手をあげたが、ヒュンケルは大戦後こそ英雄の一人ではあったが、不死騎士団長としてパプニカを滅ぼしかけた過去がありダイとレオナが望んでもそれは無理だった。

    カールでも大がかりにはせず、平和の立役者の一人の葬儀としては身内だけでの小さな葬儀だった。それもらしいと思う。

    でもよ、俺を一人にするのが早すぎるだろうが、てめぇは本当に頭にくる男だぜ!
    眠るような死に顔に心の中でありったけの罵声を浴びせていたが、不思議と涙は出なかった。

    でも火葬されて真っ白な骨にされたヒュンケルを見たら、初めて視界が水でいっぱいになってしまった。
    あのヒュンケルが…こんな小さな白いかけらになっちまった。
    その事実が視覚から俺の気持ちを折ってしまったようだった。

    「なぁ先生、この骨少しお守りにもらっていいか?」
    「…いいですよ。ヒュンケルは身内が私達しかいない。あなたの兄ですから少し位いいでしょう」
    「…ありがとう、先生」

    そう言うと少しばかりの骨をハンカチに包み道具袋に入れた。


    -----------------


    葬儀のあと、俺は実家のあるランカークス村にいた。
    何をしていても、ふとした時にヒュンケルを思い出しては涙が溢れてとても仕事にならかったからだ。
    常日頃から働き過ぎと言われてきた俺が長めの休暇をとることに、誰も反対はしなかった。

    ダイやマアムはさすがに心配していたが、俺とヒュンケルが好き合ってしまった事は誰も知らないことだったので何もいう事も出来ず、たまには親孝行しないとな!とだけ言ってでてきた。

    一人になりなかった。
    たった半年だけど、ヒュンケルは俺のために元気になろうとしていたこと、俺も俺で何とか回復させてやりてぇと文献を読み漁ったりしたことを思い返す。

    皆は知らないが、ヒュンケルに告白された1週間後には住まいをヤツの部屋に移して一緒に暮らしていたので、他愛もない挨拶や遠慮がちにされるキスも。


    半年、だけど幸せだった。
    知らないままにしなくて良かった。
    ヒュンケルが俺を諦めたまま死ななくて良かった。
    忘れたくはない、この半年の二人のことを。一生。


    そんなことを考えていたら胸に下げている小袋の中のヒュンケルの骨を思い出す。
    先生に言った通りに俺のお守りにしてる、小さなヒュンケルのかけら。
    このままではいつか朽ちてしまうのが寂しくて仕方なくなった俺はまた涙が溢れてしまった。

    そんな風にぐずぐずと傷心のままに過ごしていた。
    そんな折に両親からある事を聞かされた俺はランカークス村の森のさらに奥深くにある馴染みの小屋を訪れていた。


    「ロン・ベルク、骨を宝石に変える方法を教えてくれ」

    小屋には両腕を壊した魔族の鍛冶師がいる。

    少し前にこの魔族も連れ合いを亡くしたことは両親から聞いていた。
    実家の武器屋と、この鍛冶師と連れ合いはとても懇意にしていた。
    連れ合いの男は俺にとっても仲間であったけど、あの大戦の最中に命を削る「いのちの剣」などという無茶をして、結局は志し半ばで早逝してしまったのだ。


    その日から魔族の耳には薄い青色の宝石が埋まっていた。

    「なんのことだ」
    「その耳のヤツ、ノヴァの気配がしてんだよ」
    「ああ…これか。別に構わんがお前に連れ合いがいたというのは初耳だな」
    「…うっせぇ!教えてくれんのかよ」
    「技術と機械がいるぞ、俺がやってやるか?」

    その小袋は骨だろ?そういうとロンは生前のノヴァの介護のおかげで、今では少しは動くようになった腕をこちらに伸ばした。

    それを反射的に避けてしまった。でも…

    「あんたなら、ノヴァの骨を俺に触らせてもいいって思うのか?」

    そう言えばロンは、一瞬だけ目を丸くすると苦笑した。
    それじゃあと、やり方というより仕組みだけを教えてくれた。

    たぶん、俺自身がやるならば機械を使うような物理的な方法よりも魔法や秘術を使った方がいいだろうと言って。
    俺の気持ちを汲んでくれた、この男もまたノヴァを深く愛していた。


    ---------------

    工房からの帰り道。

    俺はヒュンケルが住んでいた、最後の半年は俺も住んでいた部屋へルーラで飛んだ。
    まだ引き払っていない部屋は、今も主の帰りを待っているような佇まいだった。
    暗くなり始めた部屋の、いつも座っていたベッドの脇の椅子に腰かけると胸の小袋から骨をだす。

    手のひらに乗せていくつかの呪文を駆使しながら骨を加工していく。

    「不純物を取り除いて黒鉛化して…」

    右手と左手に1つずつ、2つの呪文をのせる。

    「ベタン」「メラゾーマ」

    規模を手のひらサイズに小さく収めるのは至難の業だが、こちとら大魔導士だ。
    どうにかこうにか調整すると、その間に骨を入れる。


    「高圧高温におかれた骨は…」


    ダイヤモンドになる。
    ロンベルクの言葉通りに、手の中には小さな光が落ちていた。


    ------------





    あの戦争が、おとぎ話になる頃。
    大魔導士ポップの記述にはこう書かれていた。

    ”大魔導士の片耳にはいつも薄い紫の光を反射するダイヤモンドのピアスがあった。
    美しい装飾品であり彼の生涯の守りであった”
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