Happy Sonso Day 7.7もういつだったのかは覚えていない。
ただ、いつも静かな家の中で、たまたま点いたままのテレビに映っていた海の底。
色んな生き物が仕切りのない空間で自由に泳いでいるのが不思議で、ずっと眺めていた何度目かの誕生日。
いつか自分も、そんなふうに自由に、不思議な生き物たちと一緒に泳いでみたい、そう夢中になってソンソは願った。
「ハッピーバースデイ!ソンソちゃん!」
ツヤツヤと輝く苺の乗ったホールケーキ。
Happy Birthdayと星の形でデコレーションされたチョコレートがお行儀よく乗ったそれを掲げてパリピことルーカスが満面の笑みを向ける。
誰かに祝われる誕生日というのは初めてで、ソンソはきょとんとした顔でそれを受け取ったが、すぐに少し頬を綻ばせてこくん、と頷いて見せた。
ソンソはルーカスのことがとても好きだった。
始めこそ怒涛の勢いで詰め寄られた勢いに怯えこそしたが、自分の目線でゆっくり話してくれる優しいルーカスが、稚拙な言い方をすれば、ソンソの世界で2番目に好きな存在だった。
そんなルーカスにプレゼントだよ、とふわふわとしたスムーズィー素材のルームウェア貰い、今日の夜に着ようといそいそとお気に入りのハンガーにつるして見える位置に飾っている。
更にはご機嫌のソンソに水族館は無理だから、と海の生き物が描かれた小さなビニールプールをベランダで膨らませ、水をはって、はい、お誕生日様専用プールだよ!と遊び場を用意してくれた。
水着はないがソンソはそんな事お構いなしに、着ている服を脱ぎ捨てると家主、ヒューゴの服を少しひいてから入っても構わないか許可を得て(特別のお許しを得た)、キラキラと水面の反射するプールへを興味を向けた。
「………おい」
呼ばれて、反射で振り返ると、差し出されていたのはカメのぬいぐるみだった。
水族館に連れて行ってもらったときのお土産に、せがんで買ってもらったお気に入りのお友達。
瞬間、いつだったか、あの脳裏に焼き付いたキラキラの、海の底が思い出されて、ソンソは大事にそれを受け取ると、にっこりと頷いた。
ちゃぷ、と体にあたる冷たい水と、ビニールの擦れる音がくすぐったい。
ソンソは水の中にそっと、手の中のお友達を沈めて、その濡れた頭をそっと撫でては、満足そうに笑った。
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「え…っ ソンソちゃんぬいぐるみプールの中にいれちゃったの?」
「は………?」
「ん………」
「(心成しかしょんぼりしてる…)しゃーないから干しとこう。まだ日中だからすぐかわくよきっと!」
「………ん」