1.しあわせを込めて パチパチと音を立ててフライパンの上で踊るのはギネマの実。
「今日のメニューはみんなが大好きな……アレです」
「アレ?」
「……」
「……あれ?」
レスポンスの遅さに相棒は思わずキッチンに向かうコリンクのツートーンな背中を覗き込む。
みんなって誰? というつっこみを忘れさせるほど――たっぷり十秒は溜めてから発表されたそれは。
「じゃん」
フライパンの火を止めて、飴色に炒まったギネマの実を冷ましながら振り返る。
いつの間にか彼女の両手に収まっていたのは、異様な存在感を放つ缶だった。
パッケージに描かれたどこかで見たような男性の顔。崩れることのないその笑顔。
「そ、それは……!」
思わずアカネは切り株の机から立ち上がる。わなわなと水掻きのついた手が震えている。
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