コラボカフェには行きました。…次の日に。注意:トレス部分多いです。
ご不快でしたらバックしてください。
鍵して、ここ以外に出しませんので、苦情だけはご容赦くださいお願いします。
メンタル弱いので。
「あーぶと♪」
寮の自室にいるところにシンが突然やって来た。
キーボードをいじる手を止めて迎え入れてやれば、何やらわざとらしい笑顔。
何事かと思えば、手に『妖怪コラボカフェ』と血みどろの文字で書かれた、おどろおどろしいイラストのチラシが。
「行かない」
「まだ何も言ってない! いいだろ? なにかの7000系の引退セレモニーには付き合ったじゃん」
「8000系だ」
「アユ姉も、他の皆にも断られちゃって」
「何で俺が一番最後なんだ」
「断られそうだから」
「ならその通りだ」
「デートだと思って!」
「思えるか!場所が場所だ!」
「じゃあさ、何か勝負しよう!オレが勝ったら付き合ってよ!」
「一人で行けばいいだろ」
「2名以上のご来店でオリジナルステッカーがもらえるんだよ」
オカルト大好き男は何やら熱く語りだした。同じ日本語かと疑うくらい、内容が頭に入ってこない。
面白くない。
自分が一番最後だったのも、今部屋に一緒にいるというのに全く意識されていないことも。
なら…分からせてやるか。
いかにも渋々といった態度でマシンガントークを遮る。
「わかったわかった。ただし勝負方法は俺に選ばせろよ」
やった、と短く喜ぶシンを尻目に、俺は日用品をしまってある棚を漁る。予備として買っておいた新品の歯ブラシを持ってくる。
シンは首を傾げた。
「? 歯ブラシ? 歯を磨けってこと?」
「お前じゃなくてオレが磨くんだ」
「は?」
「お前の歯をオレが磨く」
シンが更に首を傾げる。何言ってるんだ、とまるで理解していない。
「オレたちこれから勝負するんだよな? 歯を磨くのが勝負??」
キョトンとした感じの物言いに、内心ほくそ笑みながら、表面上は努めて真面目に
「例えば、美容室とかで知らない人間に頭を触られるのは抵抗ある人間がいるだろ。変に緊張するというか、落ち着かないというか」
「オレはそんなことないけど、アブトはそういうところありそうだよな」
「歯医者で口の中をいじられるとか」
「それは確かに嫌だ」
「心理学的にもかなり親密な間柄でないと、握手すら嫌悪する人間だっている」
だからボディタッチは親愛を確かめるために必要なコミュニケーションになりえているのだが、それは余談として、
「で、それが?」
先の展開が読めない状況というのが不安になって来たらしく、シンの声が慎重みを含んできた。
「小さな子どもならともかく、歯磨きを人に任せるという経験は通常あり得るものじゃない。つまり、他人に歯を磨かれる行為にはかなりの心理的抵抗が生じるんだ。
その抵抗に五分間耐えることが出来たらお前の勝ち、根を上げたらオレの勝ちだ」
オレの提示したそのルールに、シンは安心したように笑った。
「なんだ。アブトがあまりにも改まって言うから、どんなすごいことかってちょっと緊張しちゃったよ。肩透かし食らった」
「そうか?」
「確かに、全く知らない人に歯磨きされるのは嫌だけど、やるのはアブトなんだろ?だったら別に平気だ」
むしろ同級生の歯を磨かなきゃならないアブトの方が屈辱に耐えきれず途中で根を上げるんじゃないか、とシンは笑う。
「俺が途中で根を上げたときはお前の勝ちってことでいいぞ」
「そんな楽勝な勝負じゃちょっと申し訳ない気がするなあ」
自分の勝利を疑いもしていない呑気や顔をじっと見て
「じゃあ、勝負開始でいいな。そこに座れ」
「オッケー」
スマットにアラームを頼んで、ベッドに腰かけるシン。
無防備なシンの横にオレも座った。身体をひねり、シンの後頭部に左手を添える。
「ほら、あーしろ」
「あー」
口を開かせ、そして歯ブラシを差し入れた。
さあ、ここから存分に後悔するがいい。
妖怪よりも恐ろしい、地獄の始まりだ。
一分経過
「…っ」
シンの表情に異変が生まれ始めた。
まるでベッドの中の時のような、驚愕と恍惚の色が表情に混じる。
「う…ううっ、う、っ…」
今頃俺の狙いに気づいて横目で睨んできたところで、もう遅い。勝負はもう始まっているのだから。
歯磨きは口の中を、身体の内面をいじる。
あまりに日常的過ぎて、意外と見落としているが、肉体のデリケートな部分を細い毛先で撫でまわされる。しかもそれを自分ならぬ他人にされる。
つまりは端的に行ってしまうと…快感が生じやすい。
「は、ふ……っ」
眉間にしわを寄せて耐える表情をする。手は自分の服を強く強く掴んでいる。強く握りしめすぎて色が変わってしまっているほどだ。
時折我慢できずに身を捩るが
「磨きにくいだろ。じっとしてろ。ちゃんと口を開け」
すかさず俺が注意してやる。
憎々しげに睨まれたが、快感に耐えている扇情的な姿でやられても全く堪えない。
奥歯の内側、歯と歯茎の境目辺りを重点的に磨いてやると、シンの体は敏感に反応した。ぴくぴくと細かく痙攣している。
「ひ、ひう…はう…はぁ」
歯を磨いているからこそ、歯を食いしばることもできず。快感に支配されていくのを誤魔化すこともできず。
ついに口端から唾液が零れ落ちる。
流れるそれに背筋がぞくぞくした。
思わず磨く手が止まりそうになる。
たかが歯磨きに、これほどまでの興奮を覚えるとは自分でも予想外だった。
このままではこちらもどうにかなってしまいそうで、反則かと思ったが、シンの舌を磨きにかかった。舌の裏を、くすぐるみたいに優しくこする。
「あふっ…」
舌を磨かれているため悲鳴すら上げられず、首も顔もすべて真っ赤に染まった。
喘ぎ声にも似たシンの声を聞いていると、こちらも胸の動悸が速くなってくる。
自然と歯ブラシの動きが細かく、激しくなる。シンの口から抜き差しされる柄が、まるで何かを示唆しているようで。
気が付けば、オレは歯ブラシを放り投げて、シンをベッドに押し倒していた。
シンを見る。
うっとりしているかのような、蕩けた表情をしていた。
「シン」
名前を呼ぶ。シンの身体もオレのも強い熱を帯びている。
「あぶと」
呂律が回らないくらいに浮かされた状態のままシンは言った。
「あふと、ショウブなんだけど」
「え?」
ショウブ…勝負?
「五分、経ってるぞ」
あ。
そもそもこれは勝負だったと、趣旨を思い出して傍らのスマットを見る。
製作者も見たことがない冷めた目で「10分30秒経過してるであります」と抑揚のなく応えられた。
「…分かった。オレの負けだ」
「……」
オレからの敗北宣言に、しかしシンの反応は悪かった。
どうした?と思っていると、シンは未だにベッドに倒れたまま、こほんと咳ばらいをして、
「なあ、アブト」
「なんだ」
頬を赤らめ、流し目でオレをちらりと伺ってから
「もし、アブトがどうしてもっていうんなら…仕方ないから三本勝負にしてあげてもいいぞ」