混ざる前髪 改めて、というのは照れるけども。
二人、お互いの正面に立って、アブトはシンの肩にそっと手を置き、シンはアブトの背中に両腕を回す。
物陰に身を寄せ合って、さらにお互いの距離を縮め…唇が振れやすいように顔を傾ける。
何度も繰り返している行為だから、左右のどちらにずらせばいいのか、もうお互い分かっていて。
触れる直前に、しばし止まる。
お互いの目を見つめあいながら、鼻先が触れ合うこの距離を存分に楽しむ。ふ、と吐息が肌に掛かり、産毛が泡立つ。
合わさったお互いの前髪。ふわっと触れて、緑と銀が重なり合った。
ようやっと、許されないと触れられない場所をお互い明け渡す。
鼓動が全身に広がる。喉奥から心臓が吐き出されそうになるのを抑えて、ことさら強く重ねあう。押し付けすぎて髪の先端がちくちく肌に刺激を与えるが、のぼせ上がる熱にそれも気にならなくなっていく。
最後に軽いリップ音を残して離れたそれら。
しかし両者の腕だけはそのままで。どちらからともなく言った。
「もう一度」