夜の帳言われた通り、壁の薄い宿しかなかった。
そもそもこの島には、ホテルはおろかモーテルも無く、どこもかなり年季の入った宿泊施設ばかり。しかし何故かほとんどが満室で、漸く空きを見つけた頃には酔いが冷め始めていた。
錆び付いた看板にINNと掠れた文字が書かれた宿に入ると、そこはどうやら連れ込み宿のような施設らしく、やたら薄暗い。色々大丈夫か?とほんの少し不安になっていると、互いの顔が見えないよう間仕切りされた受付から、そっと金額が書かれた紙と鍵が渡された。
お互い静かに顔を見合せ、二人して提示された金額分のベリー札を置く。すると出された鍵は一旦引っ込み、代わりに小綺麗な鍵とワインのミニボトルが差し出された。それをマルコが無言で受け取り、先を歩く。三歩ほど後ろを着いていくクロコダイルは、廊下に響く女の嬌声や男の呻き声になんとも言えぬ表情を浮かべた。
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