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    hitsujiyukino

    @hitsujiyukino

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    hitsujiyukino

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    マル鰐の続きです。
    ここから先が思い付かない……

    夜の帳言われた通り、壁の薄い宿しかなかった。
     そもそもこの島には、ホテルはおろかモーテルも無く、どこもかなり年季の入った宿泊施設ばかり。しかし何故かほとんどが満室で、漸く空きを見つけた頃には酔いが冷め始めていた。
     錆び付いた看板にINNと掠れた文字が書かれた宿に入ると、そこはどうやら連れ込み宿のような施設らしく、やたら薄暗い。色々大丈夫か?とほんの少し不安になっていると、互いの顔が見えないよう間仕切りされた受付から、そっと金額が書かれた紙と鍵が渡された。
     お互い静かに顔を見合せ、二人して提示された金額分のベリー札を置く。すると出された鍵は一旦引っ込み、代わりに小綺麗な鍵とワインのミニボトルが差し出された。それをマルコが無言で受け取り、先を歩く。三歩ほど後ろを着いていくクロコダイルは、廊下に響く女の嬌声や男の呻き声になんとも言えぬ表情を浮かべた。
    「スゲェな……」
    「こんな夜だ。昂って仕方ねェ連中が、大勢いるんだろうよい」
     冷めやらぬ熱、衝動、それとも新たな時代に種を残そうとする本能か。分からなくもないが、今の自分とは正反対だなと思う。
     こんなところに来ておいて、心はまるで凪の海。憎たらしかった男の右腕とこれから寝ようというのに、緊張も高揚もしていない。それは相手も同じなのか、少し先を行くその背中は至って平然としている。
     無言のまま進み、ギシギシと軋む階段を昇る。壁に点在するランプは申し訳程度に灯り、さして長くもない廊下の一番奥へ二人を誘う。
     他の部屋とは明らかに違う扉。金メッキに縁取られたベルベットのそれはあまりに不釣り合いで、クロコダイルは思わず鼻で笑った。
    「倍額でこれか」
    「ご不満かい?」
    「いいや。葉巻が吸えりゃそれでいいさ」
     フ、と口角を上げる彼に、マルコもつられて笑う。
    「灰皿くらい、あるだろうよい」
     鍵を差し込みガチャリと回す。想像より軽い扉を開くと、扉と同じ色をした天蓋付きのベッドが視界に飛び込んできた。
     その隣にはサイドチェスト、少し離れたところに革製のソファー、水差しとグラスが置かれたローテーブル。壁には荒れた海を行く海賊船が描かれた絵画が飾られている。
    「おー……ちゃんとしたバスルームもあるよい」
    「見かけで判断出来ねェもんだな」
     内装の意外な高級感に些か面食らいつつも、二人は中へ入っていった。
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    pixivLem

    PROGRESSアダルトショップの続き~!!
    読んだ方には誤字脱字報告義務が課せられますゆえ...!!!
    右手にはめられ指輪と左手にはめられた指輪が、指を絡めることでカチカチと音を立てその存在を主張した。歩きずらさを感じるほどに近い距離は周囲の目を引き、クロコダイルはドフラミンゴの左手を力強く握り無言の抗議をしている。
     「そんな強く握らなくても俺はどこにもいかねぇよ?」
     腹の立つ笑みを浮かべ顔を覗き込んでくるドフラミンゴに対し額に青筋を立て睨みつけるクロコダイルだったが、右手は変わらずドフラミンゴの手を握ったままだった。
    「まぁまぁ、そんな顔すんなよ。離したかったら離してもいいんだぜ。俺はそれでも楽しいけどな」
    「俺はなにも楽しくねぇよ」

    数週間前。
    恋人となり、その次の週にはドフラミンゴの家で同棲を始めていた。お互い仕事があるため、夜に触れ合う程度しかできていなかったが、それでも目覚めのキスや自分以外の匂いを日常的に感じられることに幸福感を覚えていた。初めて二人の休日が合い、たまにはで外出でもしようかというドフラミンゴの提案に「付き合ってやるよ」とそっけない返事を返したクロコダイルだったが、内心はどんな服を着ていこうか、ドレスコードは必要か、当日は天気がいいといいな…などデートへの 4029