glasses joke「おい、ヘンリー。ワイン一杯に含まれるポリフェノールは、ワイン一杯分だぞ」
仕事を終え友人の家を訪ねると、眼鏡をかけた彼はテンプルを指でつまんで得意げにそう言った。
そうだろうな、と返すべきか。酔っているのか、と問うべきか。見つめあったまましばし悩み、バッキンガムは彼の見慣れぬ装身具について問うことにした。
「その眼鏡はどうした」
涼やかな顔にかかる黒いオーバルフレームは、バッキンガムが愛用するものとよく似ていた。今も同じようなフレームのものを身につけているし、あと何本か自宅に予備として置いてある。
バッキンガムにとっては眼鏡は必要不可欠なものだが、視力がいいリチャードには不要なはずだ。伊達眼鏡ならば構わないが、合わぬ度数のレンズが入っていては、目を悪くする。
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