おはよう、そして、おめでとう 朝6時。
いつもは寝坊助な私が珍しく早起きしたのは、自分の誕生日だからというのもあるけれど、真っ先にあの子に渡したいものがあるから。
「──よし」
私は、ずっとテーブルの上に置いておいたプレゼント用に包装された「それ」を持って部屋を出て、いつもの食卓に向かう。
そこでは鼻歌混じりに朝食を食卓に並べる銀髪のあの子──あかりさんがいた。
あかりさんは私が起きてきたことに気がつくと、パァッと顔を輝かせた。
「おはようございます、あかりさん」
「ゆかりさん、おはようございます 」
「はい、これ。誕生日プレゼントです」
「じゃーん ゆかりさんへの誕生日プレゼントです」
「おはよう」から「誕生日プレゼントです」まで全てのセリフと隠していたプレゼントを見せ合うところまでハモると思っていなかった私たちは、一瞬固まってから、なんだか可笑しくなって吹き出してしまう。
「あははっ、ここまでのセリフと動作全部ハモるとか……本当に気が合いますね私たち」
お互いのプレゼントを交換しながら、あかりさんはそう言った。
ナチュラルにかっこよく渡すつもりだったのだが、やはり決まらなかった。まあいい。私が決まらないのはいつものことだし。
あかりさんが渡してくれたプレゼントは、両手で持たないと持ちきれなくて重い物だった。一体何を買ったのか。高価なものだったら申し訳なくなるぞ。
あかりさんに開けてもいいか確認すると、「どうせだったらせーので開けません」と言った。良いアイデアだ。
「せーの」
声と、包装を開ける音が重なる。
「わっ、スマートウォッチだー」
私からのプレゼントを見て、あかりさんは嬉しそうに声をあげた。
「はい。あかりさんはウォーキングの際にいつもスマホを使って距離や歩数を測っていましたよね。個人的には、スマートウォッチのほうが持ち歩くのに便利だし、おしゃれだし……良いんじゃないかと」
「そこまで私のことを考えて…… ありがとうございます、ゆかりさん」
──実はプレゼントを食べ物にすべきか迷ったことは黙っておこう。本人は自分の大食い癖を気にしているようだし。
「あかりさんからのプレゼントは……肩に乗せるタイプのマッサージ機ですね」
「はい ゆかりさんはいつも絵を描く時に肩が凝って困ると独りごと言ってましたし」
そんなに印象付けるほど独りごとを言った覚えはないが……なんだか嬉しくなる。あかりさんも、私のことをよく見てくれていたのだなぁ。
「ありがとうございます、あかりさん。大事に使わせていただきますね」
「えへへ。マッサージ機だけでなく、運動するのも肩凝り解消に効果的なんですけどねー」
「う、運動はたまにでいいです。たまにで」
「それでは、あかりさん」
「はい、ゆかりさん」
改めて、私たちはお互いの目を見つめて──
「お誕生日、おめでとうございます」