小次郎が体調を崩して一日中クッションの上で寝込んでいた。心配そうに見つめる肖を見てはなう、と弱々しく鳴いていた。ご飯は食べるしおやつも食べたりするけれどいつもの様に活発な動きはしておらず、肖も体調が悪いのを分かって静かに、その場を離れずに一緒に寝転がっていた。悲しそうに「ぴぁう…」と呟いてはぽすぽすと優しく撫でてぴっとりとくっついている。
「…なぁう」
「んぱゅ…ぅ…」
「なぅ」
すりすりと顔を近付けて話し合うのを見て、そっとしておく。今は下手に手を出さない方がいいかもしれない。けれどいつ吐いたりお腹を下しても良い様に用意だけはしてあるけれど、猫を飼うのは小次郎が初めてだったタケシはとにかく心配で仕方がなかった。
今はまだああやって鳴いているけれどその内鳴かなくなってしまったら?静かに息を引き取ってしまったら?…そう思うと酷く心が苦しくなって徐々に切なくなる。喪失感はもう二度と埋まらないだろう。
「…小次郎」
ぽそりと小さく、そっと声を掛けると顔を上げてなぅ、なぅと小さく鳴いた。
「肖、君は大丈夫?」
「んぷゅ…」
「そっか」
コクリと頷いたが元気が無いのは目に見えていた。明日起きた時、もしかして、と思う。けれども、そんなのを考えてしまってはきりがない。
「今日はここで寝るの?」
「ぷ…」
「じゃあ布団を持ってくるから待っててね」
「ゆぱ!」
元気に返事をして、手を上げた。
そしてまた隣に寝転がり小次郎をゆっくりと撫で始めた。
「ゆぷぁ……」
小さく、悲しげに、まるで小さく泣くように聞こえる肖の声に不安が更に膨れあがってしまった。大丈夫、小次郎ならきっと元気になる。そう思いながら布団を持っては震えていて一人と一匹にそっとかけてあげた。
「…おやすみなさい」
「んなう」
「ぱゆ…」
次の日の朝。
タケシが心配そうな顔をして覗くと小次郎がウロウロと歩いて目が合うと突進してくる勢いで飛びついてきて、いつもの様に餌を強請る様子に心底安心してボロボロと泣いてしまった。