夏五版ワンドロワンライ第118回お題「東北」 生徒寮から歩いて10分弱。大きくて立派な門を通り過ぎるとすぐに、眩暈がするほど長い階段が続いている。ここを昇っていかなければ、校舎に辿り着けない。他に道はない。
入学したばかりの頃はうんざりと見上げながら嫌々登ったものだったが、最近では訓練の一環だと割り切っている。腕時計のタイマーをセットして大きく息を吐き、スタートと同時に一気に駆け上がる。このために初めての給料で腕時計を新調したようなものだ。
ライバルは、昨日の自分。昨日よりも1秒でも早くてっぺんへ到着することが目標である。10…20…30…一定のリズムを崩さないように、ひたすら駆け上る。
いつも通りの1日の始まり。この先に、通う学校が待っている。
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