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    アストロロジー×アクアリウムの雨クリ中心神話パロ

    ##アストロリウム

    アストロリウム 1部(改訂版)アストロリウム 第一部(改訂版)

    登場人物紹介

    アクラブ……蠍を司る神であり、商人。星読みの技術に長けている。エルナトとは知己の中。名前の語源は「蠍」
    オルカ………海を治める海底人の王。名前の語源は「クジラの類」
    エルナト……牡牛を司る神であり、砂の国を治める王。圧倒的な戦闘力を有している。名前の語源は「角で突く」
    ハマル………牡羊を司る神。アクラブ、エルナトとは友人。普段は遊牧民に混ざって生活している。名前の語源は「子羊」
    セルペンス…海底人の一人で、オルカを補佐する頭領の役目。名前の語源は「蛇」



     砂の国を治める王エルナトは、牡牛を司る王であり、またひとはしらの神である。
     エルナトには知己がいた。蠍を司る神である、アクラブだった。彼は星読みの技能に長け、商才に優れた商人でもあったが、強い支配力を持つエルナトに逆らうことはできなかった。
     ある日エルナトより「何か面白いものを持ってこい」と命令を下されたアクラブは、星の導きに従って南端の港まで行き、そこで打ち上げられた海底人を発見した。アクラブはそれこそが、星が自分をここまで導いた理由であると確信した。まだ目を覚まさない海底人をエルナトへ献上するため、アクラブは海底人をラクダに積み、砂の国へと旅立った。
     目覚めた海底人は狼狽し、海に帰してほしいと懇願するが、エルナトの命令に従うしかないアクラブはそれを聞き入れなかった。申し訳ない気持ちもあったが、仕方のないことだった。
     南端の港から砂の国までは100日ほどかかる。アクラブは海底人の気を紛らわせるために物語を語り続ける。それは数々の勇者の冒険物語や、恋物語、時には犯罪者たちがひどくこらしめられる恐ろしい話までした。
     次第に心を開いていく海底人だが、一方で徐々に体は衰弱していき、ついに目を開かなくなってしまった。アクラブは、彼が海の生き物であることを思い出し、ラクダを走らせ海辺へ急ぐ。
     やっと海に辿り着き、海底人を抱えながら海に入ると、彼は目を覚まし、そしてアクラブの手を離れて元気に泳いでいった。
     アクラブは、彼が無事だったことの安堵と、もう戻ってはこないだろうという悲しみで、ただ茫然と海を眺め、そのまま眠りについた。エルナトにどう弁明するか、なんて考えも至らなかった。沢山走って疲れていたラクダも、海水をしこたま飲んで元気になったのか、アクラブの隣で眠った。とても静かで、水の音だけが聞こえる夜だった。
     翌朝、アクラブが目を覚ますと、いなくなったはずのあの海底人がいた。
     アクラブが驚いて問い詰めると、「もう元気になったから大丈夫です」と笑った。またこうして海に連れてきてもらえたら平気だと、まだ旅を続けたいと訴えた。彼は既に、アクラブとの旅を楽しく思い始めていたのだった。
     そして、彼は自分の名前が「オルカ」であることを明かした。お前ではなく、名前で呼んでほしいと告げたオルカの顔は、どこか嬉しそうだった。
     二人とラクダはまた、砂の国を目指して旅を再開した。

     その頃、アクラブの友人であり、牡羊を司る神でもあるハマルが、オアシスで海底人を目撃した。海底人は名をセルペンスといい、失踪した海底人の王を探しているのだという。
     ハマルは、それがアクラブが連れ去った海底人であることを察した。アクラブがオルカを発見した時、ハマルもまたアクラブと行動を共にしていたのだ。
     ハマルは、セルペンスとともに砂の国へ向かうことにした。

     砂の国に到着したアクラブとオルカは、エルナトに謁見した。エルナトはオルカの持つ魔力に興味を持ち自分の宝物に加えようとしたが、やはりこのままオルカを引き渡すことはできない、とアクラブがエルナトに反抗した。アクラブがエルナトに反抗したのは、初めてのことだった。
     圧倒的な力を持つエルナトの攻撃に、アクラブは手も足も出なかった。どうにかオルカだけでも逃がそうとするが、オルカもアクラブを見殺しにはできないと、ともにエルナトと対峙することを選ぶ。
     その時、宮殿にハマルとセルペンスが現れた。
     すかさずオルカを守るセルペンス。そして、アクラブに並んでエルナトに相対するハマル。ハマルもまたアクラブと同じく、神であり、エルナトの友でもあった。
     四対一で分も悪くなったエルナトは、渋々武器を下ろした。本気でかかれば倒せるだろうが、逆に本気でやっては殺してしまう。古くからの友人たちを殺したいわけではないし、海底人の力も興味こそあれ、殲滅対象ではなかった。
     まあ、面白くはあったから許す。アクラブの野郎の珍しい顔も見れたしな。そうやって自らを納得させたエルナトは、オルカに対して「もう傷つけるつもりはないから安心しろ。今度じっくり話がしたいからまた訪ねてこい」そう言って、オルカとセルペンスの二人を退出させた。話があると言って、アクラブとハマルはその場に残して。
     セルペンスはオルカを連れてそのまま海へ向かおうとした。一刻も早く、この国を離れたかった。しかしオルカは、アクラブに挨拶もせずに別れたくはないという。
     セルペンスはオルカに、陸の生き物と関わることはオルカのためにならないと説得する。今回は運が良かっただけで、次もそうとは限らない。だから、二度と彼に会わないよう、陸の生き物に捕まらないよう、どうかこれからも海を守ってくれるよう懇願した。
     セルペンスの切実な言葉に、オルカは頷かざるを得なかった。

     砂の国から最も近い海辺まで、それでも3日ほど歩かなければならなかった。ラクダに乗れば一晩の道でも、歩くのが苦手な海底人にとっては、とても長い道のりだった。
     オルカは眠るたびに、隣にアクラブとラクダがいないことを寂しく思った。100日にも及ぶ旅路で、彼らと一緒にいることが当たり前になってしまっていたようだった。セルペンスは常にオルカに気を配ってくれていたが、オルカにとってはそれがむしろ申し訳なかった。海底人の王である自分にとって、セルペンスやほかの海底人たちはみな我が子も同然だというのに、どうして陸に生きる人のことばかり考えてしまうのか。
     頭からアクラブのことを追い出そうと、前に聞いた物語を思い出した。それはアクラブが聞かせてくれたものだった。そしてまた、オルカはアクラブと過ごした日々を思い返してしまうのだった。
     二人がやっと海に辿り着いた頃には、オルカの体はすっかり乾いてしまっていた。ラクダにも乗らず自分の足で歩き、ラクダの乳さえ飲めなかったのだから仕方のないことだろう。足先を海水に浸すと、それだけでオルカの渇きは癒された。それでも、心はどうしても満たされない隙間が残っていた。
     その時、オルカを呼ぶ声が聞こえた。ほかでもない、アクラブの声だった。
     オルカは、アクラブの元へ駆け寄った。アクラブもまた、ラクダから降りてオルカの元へ走った。
     二人は強く抱き合った。
     オルカは、アクラブとの旅が本当に楽しかったと伝えた。アクラブも同じ気持ちだった。これまで数えきれないほど長く旅をしてきたなかで、最も楽しく、満たされた時間だった。
     またいつか旅に出よう。必ず迎えにくるから。アクラブはそう言った。オルカの瞳が喜びののちに不安に揺れた。いつかとは、いったいいつのことなのか。いつまで待てば良いのか。そんなオルカの表情に気付いたアクラブは、オルカの顔を撫でた。
     少しやることができただけだから、それが終わったらすぐに会いに行く。約束する。オルカがどこにいたとしても、星が必ず導いてくれる。だから、会いにいくまで待っていてくれ。
     アクラブの強い意志のこもった言葉に、オルカは何度も頷いた。


     それから少しの月日が流れた。オルカはその日も、海辺で星を見上げていた。
     あれからこうして空を見上げることが増えた。
     普段海で生きているオルカにとって、この星空だけが、あの時の旅路と同じものだったから。そして、もしかしたら今日こそ、彼が訪ねてくるかもしれないから。
     満天だった星空が明るんできた。もう夜が明ける時間だ。
     オルカは、消えゆく星空を惜しみながら、暁の空を眺めていた。
     太陽が登り切ったら海へ帰ろう。だから、あと少しだけ…。
     その時だった。オルカを呼ぶ声がした。
     オルカがずっと待ち望んでいた、
     その人の声だった。






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