アメムゲ番外編番外編 とある駄菓子屋店員
草木も人も、多くの店もが眠りにつく丑の刻。煌々と光る巨大な建物が一軒、夜闇の中に佇んでいる。
疎らな街灯と店から漏れ出るぎらぎらとした明かりが、店の駐輪場を寂しく照らす。がらんとしたそこには、一台だけポツンと自転車が置かれている。
大型ディスカウントストアのレジでぼうっと立っている安堂マリオは、あくびを噛み殺した。
レジから見える風景は、いつもと変わらぬお菓子売り場。
その奥にはパンやシリアルなどの食品が所狭しと並べられ、別の方向を見れば携帯電話の充電器やカバー、イヤフォンが陳列されている。どこまでもごちゃごちゃとした店内だが、しかし、目に見える範囲にはただの一人も客がいない。思わず二度目のあくびが出てしまうが、今度は隠す気すら起こらなかった。
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