怪異的な存在に大切なものを奪われかける雨彦と、博愛のクリスの話 非常にありがたいことではあるのだが、近頃のレジェンダーズは3人とも、それぞれの仕事で多忙を極めている。
ユニットの仕事もあるが、個々人での仕事が増え、なかなか休日も取れない状態だ。
おかげで、恋仲となった雨彦とクリスも、二人で会える時間が取れずにいた。すると自然と、夜の方もご無沙汰になるものだ。最後に体を重ねたのが、果たしてどれだけ前だったろうか。
そんななか、雨彦は海外での長期的な撮影が決まってしまった。海外ともなると、今以上に会うのが困難になってしまうのは、言うまでもないことだった。
仕方のないことだし、仕事があるのはありがたいことである。そうわかっていても、やはり不満は溜まってしまう。ある時クリスは、雨彦が普段つけている数珠によく似たブレスレットを、街中の路上販売で見かけた。
「これは…雨彦のつけている数珠によく似ていますね」
普段であれば目にも留めない路上販売のアクセサリーだったが、雨彦に関するものに敏感になっていたクリスは、そのブレスレットに興味を惹かれた。
「おやお客さん。このブレスレットが気になりますか?良い目をしていますね」
「こんにちは。知人がつけているものと似ているので、気になってしまって」
店主は「そうですか」と愛想良く笑った。
「ここだけの話…、このブレスレットは、ただのブレスレットじゃないんですよ」
内緒話をするようにこっそりと、店主はクリスに耳打ちをした。
「これをつけながら眠ると、夢の中で願望が叶うんです。どんな望みでも、何回でも」
好奇心に負けたクリスは、そのブレスレットを購入し、さっそくその夜、ブレスレットをつけて眠った。半信半疑ではあったが、「望みが叶う」という売り文句が本当かどうか確かめたい気持ちもあった。もし嘘でも、雨彦の数珠と似ているデザインだし、悪い買い物ではなかった。
その日も忙しく動き回っていたからか、クリスはすぐに眠りに落ちた。ブレスレットをつけて横になってから、数秒のことだった。
クリスが気がつくと、目の前には海が広がっていた。水平線に太陽がかかり、幻想的な光景だ。
「綺麗だな」
振り返ると、そこには雨彦がいた。辺りを見回すと、雨彦と自分の二人しかいないようだった。
二人は裸足のまま浜辺を歩きながら、海面に反射する光を眺めていた。
そして二人は海から上がり、海に面した、綺麗で広い家に入った。大きなベッドの上で互いの体を重ね、何度も互いへの愛を囁いた。心も、体も、とても満たされたひとときだった。
「夢……」
翌朝起きたクリスは、ブレスレットの効果が本当であったことに驚き、そして、雨彦への申し訳なさと恥ずかしさで頭を抱えた。
その一度で終わりにしておけば良かったものを、クリスは翌日以降もそのブレスレットをつけて眠りについた。そして毎晩、雨彦の腕に抱かれる夢を見た。
雨彦と離れる時間が長くても、夢で会えるならと耐えることができた。
そして数週間後、ようやく本物の雨彦が海外から帰ってきた。
時差ボケを治すためにも、少し長めの休みをもらった雨彦。さっそくクリスとともに過ごすことにするが、クリスの様子が少しおかしい。夜になるとやけに眠たそうにしているし、なぜか見覚えのないブレスレットをつけて眠ろうとする。不審に思った雨彦は、クリスがつけているブレスレットに触れた。
ブレスレットは、論の生命力のようなもので満ちていた。クリスから吸い取ったものだろうと予測した雨彦は、無理に外すことをせずに、そのブレスレットに意識を集中させた。すると、気づくと雨彦はクリスの夢の中に入り込んでいた。
論の話し声を追って慎重に近付くと、論と自分の睦み合う姿が見えた。
そして、夢の中の自分と目が合うと、「それ」はにっこりと笑った。雨彦は動くことができなくなり、そのまま二人が睦み合う姿を最後まで見ているほかなかった。
クリスが目を覚ますと同時に、雨彦もまた夢から解放された。
クリスが仕事に行っている間、雨彦はクリスのブレスレットを身につけて眠った。
クリス曰く、「つけながら眠ると願望が叶うブレスレット」なのだという。本当に叶ったのかと聞くと恥ずかしそうに頷き、どんな夢かと尋ねたらそれは言えないと顔を赤くして口を閉ざされた。その夢を雨彦が覗き見していたとも知らずに。
夢に入った雨彦は不思議に思った。昨夜の夢に出てきた場所と変わらなかったからだ。
つけた本人の願望が反映されるのであれば、多少はクリスが見た夢と細部が変わっていてもおかしくないだろうに。
唯一異なる点は、そこにいる相手がクリスではなく、自分自身だけという点だった。
夢の中の自分は、雨彦を見つけると悪鬼のような表情を浮かべた。クリスが来たのだと思ったのだろう。しかしすぐに表情を変えて、にっこりと笑った。
俺は毎晩クリスと肌を重ねている。毎晩欠かさず。羨ましいか?かわってやってもいいぜ?
自分そっくりなその男はそうやって雨彦に迫ってきた。
この要求を飲んだらまずい、咄嗟にそう判断した雨彦は、男から距離を取った。体勢をたてなおそうと距離をとって隠れると、そこにはクリスの姿があった。
クリスが夢に入ってきたのかと焦った雨彦が思わずクリスの名前を呼ぶと、「それ」は雨彦の手を取り微笑んだ。
現実世界のクリスは仕事が終わり、急いで帰宅した。彦が家で待っているし、昨日は自分だけ早く寝てしまったから、今夜こそはゆっくり二人で過ごそうと思ったのだ。幸い明日は二人ともオフだから遅くまで一緒に過ごせるだろう。
部屋に入ったクリスは、雨彦がぼんやりとしているのを見つけた。
雨彦はクリスが目に入ると嬉しそうに笑い、抱き寄せた。クリスもまた、雨彦の背中に腕を回した。
今日は外に遊びに行こう。雨彦にそう誘われたクリスは、快く承諾した。遅くまで開いている水族館に行っても良いし、海辺に行っても良い。海鮮料理を食べに行くのも良い。好きなところに連れて行ってくれと。
大喜びしたクリスは、提案に乗って水族館に行くことにした。左ハンドルの車の運転席に乗り込み、意気揚々と出発した。
助手席に座った雨彦は、嬉しそうにクリスの顔を眺めている。久々に会えたからだろうと、クリスも笑った。
水族館に着くと、クリスは嬉しそうに魚の解説をし始める。雨彦はうんうんとそれを聞いていた。
その夜、クリスは雨彦の腕に抱かれながら眠った。何か忘れているような気がしたが、それより睡魔が勝った。よほど疲れていたのか、その夜は夢を見なかった。起きたクリスは少し残念に思ったが、隣に雨彦が寝ているのを見て、自分の欲深さを恥じた。
それからしばらくの間、穏やかな日常が続いた。相変わらず仕事は忙しかったが、雨彦は毎晩クリスの元に通うようになり、ほとんどクリスの家に住んでいるようなものだった。
清掃社の仕事も、他の飲み会も全て断っているのだという。クリスと過ごす時間が大切だから、と躊躇なく言う雨彦が、クリスはなんだか慣れなかった。
ある時、雨彦に再び長期ロケの仕事が舞い込んできた。祝いの言葉を言うと、雨彦は顔をしかめた。お前は俺と離れても平気なのか、と責めるような視線だった。
最近の雨彦さん、なんか変だよね。
ユニットメンバーの北村と二人でいる時、彼がふとそう言った。
実際、クリスもそう感じていた。
海外ロケから帰ってきてから、ずっとおかしい。長く離れていたからそうなのだろうか。
そういえば… あの時のブレスレットは、どこに行ったのだろう。
雨彦とともに過ごすようになってからつけなくなって久しい。どこかにしまっただろうかと思っていたが、探しても見つからなかった。
そしてその日の夜。隣で眠る雨彦の腕についている数珠の中に、あの時のブレスレットがあるのを発見した。
似ているデザインだから、間違えてつけてしまったのだろう。自分もずっと気がつかなかった。
どうせまたお世話になるのだろうから…と、クリスはそのブレスレットをこっそり抜き取った。
雨彦が再び長期ロケに旅立った日の夜。
クリスはあの時のブレスレットを再び腕にはめて眠りに落ちた。
久々に見た夢の情景はあの時のまま、そしてそこには雨彦の姿があった。
何故だか、その雨彦の雰囲気に、ひどく懐かしさを感じた。
夢の中の雨彦は、クリスを見るなり駆け寄ってきては、身体中に手を当ててクリスの無事を確認した。その表情はひどく焦っており、いつもの雨彦らしくはなかった。それでも、クリスはこの雨彦が夢の中のまやかしなどではなく、本物の雨彦のようだと感じた。
クリスの無事を確認した彦は、大きく息を吐いて安堵した。そして、クリスの体を強く抱きしめた。
1ヶ月もの間、見ていることしかできなかった。すまない。お前さんが無事で良かった。
夢の中の雨彦はそう言った。
1ヶ月?見ていた?何のことだろうか、と思ったクリスの表情を見ては理解していないことに気付いた雨彦は、少しずつこれまでのことを語り始めた。
およそひと月前。海外ロケから帰ってきた雨彦がクリスのブレスレットに触れたその時。雨彦の精神はこのブレスレットに封じ込まれ、逆に、ブレスレットの中にいた何者かが雨彦の体を乗っ取ってしまったのだという。
あれから何度も元の体に戻ろうともがいていたが、どんなに策を弄しても入れ替わることができず、ただブレスレットの中から状況を見ていることしかできなかった。
「それ」は用心深く、アヤカシ清掃社には近寄らなかった。おそらく記憶の中の情報から、危険性を感じ取っていたのだろう。
もし叔母に会っていたとしたら、すぐに見破られていただろうから。
しかし、こうして再びクリスと話ができたことを僥倖と思うべきだろう。これからでも、できることはあるはずだ。
雨彦は、クリスにいくつかの指示を出した。
起きたらすぐにブレスレットを持って、アヤカシ清掃社にいる自分の叔母に事情を打ち明けること。
そして叔母の指示に従うこと。そうすれば、きっと活路が見出せるはずだと。
クリスは混乱していた。これまで雨彦だと思っていた相手が、知らないうちに雨彦じゃなくなってしまっていただなんて。しかもそれが、自分の欲深さから手に取ったブレスレットのせいだったなんて。
雨彦の叔母さんに合わせる顔もなかった。
落ち込んでいるクリスに気づいた雨彦は、クリスを懐に抱きしめ、頭を撫でた。
お前さんは悪くない。敵の術中に落ちた俺のせいだ。守れなくてすまなかった。俺の体を取り戻す手伝いをしてくれるか?
雨彦の優しい声に、クリスは何度も頷いた。
二人は夢の中で、ただ抱き合って夜を明かした。
翌朝、雨彦の指示通りにブレスレットを持って出かけようとしたクリスのもとに電話がかかってきた。雨彦の携帯からだった。
クリスは何も知らない風を装って電話に出た。ロケは順調か?と尋ねるが、雨彦からの返答は、「俺の数珠が一つ足りないんだが、知っているか?」という問いだった。
数珠とは。このブレスレットのことだろう。
クリスは手の中にあるブレスレットを見ては、昨夜の夢のことを思い出した。ブレスレットに閉じ込められた本物の雨彦。そして今、雨彦の体の中にいるのは…?
クリスは、あなたは誰ですか、と尋ねた。
少しの間があってから、電話口から笑い声が聞こえた。
何を笑っているのか、と問い詰めようとしたが、その後何も言わずに通話は切られてしまった。それから何度かけ直しても、雨彦につながることはなかった。
悪い予感がしたクリスは、急いでアヤカシ清掃社へ向かった。今はとにかく、雨彦に言われた通りにしなくては。
アヤカシ清掃社に着いたクリスは、雨彦の叔母に、これまでの経緯を話した。叔母は、忙しくなったのでしばらく帰れないと電話があったっきりで、もうひと月以上雨彦の顔を見ていないのだという。
目じゃなくて耳が良ければ、その時に気づけたかもしれないのに…小賢しい。
叔母は悔しがった。
ブレスレットを手にした叔母は、確かに雨彦の気運をここに感じるという。そして、状況は良くないという。
人間の魂が体を離れて長い時間が経つと、その本質が変わってしまう。一刻も早く、元の体にある「それ」を追い出し、雨彦の魂を体に戻さなくてはならない。
今すぐに、雨彦の元へ行かなくては。叔母が身支度を始めようとしたその時だった。
クリスの携帯に、プロデューサーから着信が入った。クリスがあわてて電話に出ると、プロデューサーは焦った口調で話し始めた。
雨彦さんが、撮影現場から突然姿を消したそうです。
長期を予定していた地方ロケ。その撮影場所から、雨彦が姿を消した。
プロデューサーはこれから雨彦を探しに現地に行くという。クリスは、午後のレッスンをキャンセルしてもらうことを頼んだ。自分も、行かなくてはならない。
通話を切ったクリスは、雨彦のロケ地に向かって、雨彦の叔母とともに出発した。
ロケ地では、雨彦を抜いたメンバーで撮影が続けられていた。予定が大きく崩れたロケチームに、プロデューサーは平謝りしていた。
やはり、雨彦は見つかってはいないようだった。
クリスや叔母も加わって周囲を探し、事故の可能性も視野に入れて危険な場所も行ったりしたが、手がかりは全く掴めなかった。
捜索の手をもっと広めよう、とプロデューサーが地図を表示させた。雨彦が行きそうな場所がないだろうか、と三人で地図を眺めていると、クリスはここから歩いて3時間ほどのところに水族館があることに気が付いた。
そういえば、あの雨彦と一緒に行った初めてのデートは、水族館だったような気がする。
もしかして、そこにいるのではないだろうか。
そんな淡い期待が首をもたげた。
クリスは、その水族館に行ってみることにした。
本当にそこにいるかはわからないが、でも他に手掛かりがあるわけでもなかったから。
水族館に到着した頃には、すでに日が暮れかけていた。急いで入館しようとするも、営業は終了していた。
間に合わなかった。いや、仮に間に合っていたとしても、中に雨彦がいたとは限らないが。
見ると、水族館の向こうには海が見えた。夕日を反射する海はキラキラと輝いていて、とても綺麗だった。
その時。
服を着たまま海に入っている人影を見つけた。
まさか、入水自殺!?と焦ったクリスは、その人影に向かって急いで走り出した。
全速力で走り、そしてその人影の腕を掴んだ瞬間、その人物はゆっくりと振り返った。
それは、雨彦だった。
雨彦は泣きそうな顔で、クリスの体を抱きしめた。
全部バレたからもうおしまいだって、お前を手放すくらいならいっそこの体ごと死んでやろうって思ったのに、海が綺麗で、お前と一緒に見た海を思い出して、死ねなくなった。
雨彦はそう話しては、クリスの肩に顔を埋めていた。
そういえば、ブレスレットを使った初めての夢では、海を見た気がする。
クリスは、今になってそれを思い出した。
元々は知らない相手だったけど、もう知らない相手でもなかった。確かにひと月以上、毎日抱き合って共に眠った仲だった。
クリスは、泣き続ける雨彦の背中を優しく抱きしめた。
今まで、私のわがままにつきあってくれて、ありがとうございました。最後のわがままです。どうか、その体を返してもらえませんか?
お願いします。
クリスは、雨彦の背中をトン…トン…と優しく叩いた。
しばらくの間そうしていた雨彦は、顔を上げてクリスの腕を優しく握った。視線の先にはあのブレスレットがあった。
そしてそのブレスレットの中には、本物雨彦の魂が封じられている。
雨彦はクリスの腕からブレスレットを抜き取り、その手に握りしめた。
これを最後の思い出にするから、俺からも一つわがままを言わせてくれ。
雨彦は、クリスを眺めながら口を開いた。
好きだった。本当に、心から好きだった。誰にも渡したくないくらい、好きだった。
絶対に忘れないから、たまには、俺と過ごした時間も思い出してくれよ。
そして、クリスの口に、触れるだけのキスを落とした。
数秒か、数十秒か、少しの時間が経過した。
雨彦の唇がそっと離れ、クリスは目を開いた。
そこには驚いた表情をした雨彦の顔があった。
戻ったのか…?と困惑している雨彦は、クリスの顔と、手の中にあるブレスレットに目をやった。
はあ、と脱力した雨彦は、大きく息を吐きながらクリスにもたれかかった。
ありがとな。…それから、ただいま。
雨彦の言葉に、クリスはただ笑顔で「おかえりなさい」と返した。
その後。
雨彦はそのロケでの失態を挽回すべく、忙しい日々を送っていた。
いっときはロケそのものも無かったことになるところだったが、本人やプロデューサーの熱心な姿に、一旦は許される形となった。
道に迷って、歩き続けて海に行ってしまいました。
スマホは何故か電波が入らなくなり、地図も見れず、帰ることができませんでした。
などという言い訳が通用するとは思わなかったが、それもこれまでの雨彦が積み上げた信頼のおかげだろう。
おかげで、またしても雨彦に会えない日が続いたクリスだったが、もう怪しげなアイテムには手を出さないと誓った。やはり、本物の雨彦と共にいられることが大切だから。
失いかけて改めて、愛する人の大切さを思い知ったクリスだった。
その日もクリスは、海に出かけていた。
浜辺で眺める夕日には、特別な思い出がたくさんある。
そのうちの一つが、あの時の思い出だった。
短い間だったけど、確かに自分を愛してくれたその人。
二度と会えないだろうけど、忘れないようにしっかりと、心に刻むと決めた。
その時、クリスの携帯が鳴った。雨彦からの電話だった。
今、どこにいる?
……の海にいます。夕日を見ていて。
すぐ近くにいるから、今すぐ向かう。
わかりました、お待ちしてますね。
今日の雨彦の現場から、車で10分の海辺。
きっと夕日が沈む前には来るだろう。
クリスは、着信履歴の雨彦の名前を見ては、穏やかに微笑んだ。
終
ビハインドストーリー
雨彦の叔母は、自室に新たなブロマイドを飾った。
一番最近の、Legendersのユニットブロマイドだ。
可愛がっている甥と、その恋人、それから若い同僚の3人のブロマイドは非常によく撮れていて、身内贔屓を抜きにしても良い写真だ。
そしてそのブロマイドが見える位置に飾られているのは、あの日のブレスレットだった。
問題を起こしはしたものの、純粋で憎めない奴ではあった。そしてなにより、論に対する執着が大きかった。
仕方ないので、このブレスレットに見えるところに、クリスのいる写真を飾ることにした。
叔母の目には、なんだかブレスレットが喜んでいるように見えた。
いつか海に連れて行ってあげようか。
そう言うと、ブレスレットはさらに喜んでいるようにキラキラと輝いた。
いつかこのブレスレットが本当に良いものに変わるか…あるいは消滅するその時まで、叔母はゆっくりと付き合うことに決めたのだとか。
それを知った雨彦は微妙な顔をしていたが、それを阻むことはしなかった。
万が一のことがあれば、その時こそ俺がなんとかする。雨彦は、改めてそう決意した。
大切な人を守れるように、心も技も強くなって、二度と隙を作らない。
そして、大切な人にも隙を作らせない。
明日の午前中は二人とも予定が空いているから、今夜はゆっくり過ごせるだろう。
雨彦は、携帯を操作し、クリスに電話をかけた。
もしもし。今夜、俺と一緒に過ごさないかーー。
終