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    全世界を統べる大天才梔子さん

    大天才の作品にも、人を選ぶものはある。
    ここはそういうものを置いておく場所です。

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    POIPOI 12

    🤍ちゃんと💛ちゃんが喧嘩した話の続き。
    思ったより長くなったし冒頭部分には無理やり❤💚をぶち込んだ。

    仲直り「ふびゃーーーーっっ!!?!?!楽しみに取っておいたプリンがなぁ〜〜〜い!!!!」
    朝っぱらから鳴り響いたザイカの絶叫する声で、僕は目を覚ました。
    昨日の夜は最悪だった。
    パボメスとザイカが喧嘩して、仲直りもせずに寝ることになって。
    ほんと、気まずいったら無かったなぁ……
    気は進まないけど、いつまでもここで天井を眺めてるわけにもいかないし。
    とりあえず起きるか。
    そう思って上体を起こそうとした僕は、右腕を何かに引っ張られて、布団の上に連れ戻された。
    「……?」
    戸惑いながらそっちに目をやると、珍しく僕の腕にしがみついて眠っているリネンが視界に入った。
    しかもちょっと魘されてる。
    え、大丈夫?
    「リネン、起きて。もう朝だよ」
    軽く肩を揺すって呼びかける。
    数秒の後、まだ眠そうな半開きの目と目が合った。
    「ふぁ……そっかぁ……朝、か……」
    どことなく低いテンションでリネンが呟く。
    いつもなら起き抜けから割と明るいのに。
    「……はぁ。起きたくないな。また昨日の続き、やるのかなぁ……」
    そう言ってリネンはどんどん表情を暗くする。
    気持ちは痛いほど分かるけど、ほとぼりが冷めるまでじっとしている、なんてことも出来ないんだ。
    僕だって出来ることなら避けたいけどさ。
    「あたし、もうちょっと寝る……ヒョウガは先に起きてていいよ」
    未だ眠気の残る声でそう言うと、早くも瞼を閉じようとする。
    「待って、その前に腕、離して」
    「はぇ?腕……?……あ」
    どうやら今まで全く意識していなかったらしく、ようやく気付いたリネンが少しだけ頬を染めながらそろそろと手を外す。
    先ほどと比べるといくらかぎこちなく目を閉じる。
    ……かと思えば落ち着かない様子で目を開けて、気を紛らわすかのように何度か瞬きしたり、視線をあっちこっちへくるくると回したりして。
    このまま放っておくのも何か違う気がしたので、僕は体勢をリネンの方に寄せて問いかけた。
    「なんで僕の腕、握ってたの?」
    「ん、っとねぇ……ちょっとね、不安だった、っていうか……」
    不安。
    僕も寝る前、同じような気持ちだったけど、リネンもそうだったのかな。
    そりゃ怖いよね。
    空気がずっとピリピリしてて、いつ終わるか分からないんだもん。
    だから独りだと心細くて……あっ、そうだ。
    「だったらさ、やっぱり僕と一緒に起きようよ」
    「へ?」
    「二人でいたらきっと、怖いの減ると思うんだ。どう?」
    リネンの手に自分の手を重ね、努めて優しく微笑む。
    僕自身そうだから頼りたいのもあるっていうのは内緒だ。
    しばらく、揺れる瞳で僕を見つめていたリネンだったが、意を決したように手を握ってきた。
    「……うん。二人なら、大丈夫……かも」
    「よかった。じゃあ行こう」

    そうして寝室の扉を開けた僕たちの目に飛び込んできたのは、紛うことなき地獄絵図だった。
    「なんでこんな酷いことするの!?どうして!」
    「はっ、己の日頃の行いを振り返ってみればいいんじゃないか?寧ろこれでも足りんくらいだぞ」
    「はぁ〜あ……一晩経ってさらにややこしくなるとか聞いてないわよ……」
    「あらあら〜……困ったわねぇ……」
    半泣きで怒るザイカに、それを煽るパボメス。
    魅朕は露骨に面倒くさそうにしてるし、ライラはいまいち頼りない。
    たった今出てきたばかりなのに、もう回れ右したくなるような光景だ。
    昨晩の喧嘩も酷かったけど、今のこれも同じくらい酷い。
    時間の経過と共に落ち着くとか、そういう概念が一切無い。
    リネンはちゃっかり僕の背中に隠れてるし……
    よっぽど怖いんだろうな。
    「……やっぱりこうなった……」
    ふと、リネンが呟く。
    "やっぱり"?
    ちょっと引っかかるな、リネンは何か知ってるのかな。
    「……ねぇ。もしかして、パボメスがザイカのプリンを食べたこと、事前に知ってた?」
    「ぇ、…………っ、うん……知ってた、……っていうか……目の前で見てた……」
    僕が問うと、分かりやすく言いにくそうにしながらも、最後には素直に頷いてくれる。
    「ごめんね、止められなくて……」
    「あんまり気にしなくていいと思うよ」
    そのときの状況はイマイチ掴めないが、もし仮に僕が同じ状況になったとして、どうにか出来るようにも思えない。
    十中八九見て見ぬ振りしちゃうだろうし。
    だって飛び火したら嫌だし……
    だからリネンも、そこまで背負い込む必要、無いのにな。
    それはそれとして……
    「元はと言えばお前が巫山戯たことを言わなければ、こんなことにはならなかったんだ!!」
    「何それ!?ザイカは朝起きたとき、ちゃんと謝ろうって思ってたのに!寝てる間に意地悪するなんて酷いよー!!」
    「『謝ろうって思ってた』ぁ?そんなもの、後からいくらでも言えるだろうが!!本当に悪いと思っているなら今!ここで!誠心誠意頭を下げて見せろ!!」
    「いーやーだー!パボちゃんから謝ってくれるまで、絶対絶対、ぜぇーったい謝ってあげないもんねぇ〜だ!」
    「はぁ〜!?」
    うわ、これもう収拾つかないんじゃないの……
    見ているだけで気力がどんどん吸い取られていく。
    いがみ合っている二人の奥で、魅朕が死んだ魚のような目をしていた。
    多分、僕も今、同じ目をしている。
    「……ところでちょっと気になってたんだけど」
    ふと、ライラが口を開く。
    「ザイカちゃんが怒った理由って、何なの?」
    そういえばそうだ。
    普段はパボメスに怒鳴られてものらりくらりと躱しているザイカが、どうして今回に限って反撃に出たのか、言われてみれば僕も知らない。
    と言うのも、ザイカがパボメスを怒らせるのはもう日常茶飯事のようなもので、そのときの会話をわざわざ注意深く聞くほど特殊なことでも何でもないのだ。
    それで昨日もいつも通り聞き流していたら、気付いたときには大喧嘩に発展していた、というわけだ。
    「……それは、……だって……だって……!」
    ザイカは俯き、肩を震わせる。
    よほどの事情があるのだろう。
    そうでなければ陽気なザイカがここまで怒るはずが、
    「『次馬鹿なことを抜かしたらお前の部屋に子持ちシシャモをばら撒くぞ』って言うんだもん!!酷いよねぇ!?そこまですること無いのに!」
    「何それしょうもな、早く仲直りしてよ」
    「えっ」
    しまった。
    しょうもなすぎて思わず声に出していた。
    「まっ……まぁまぁ、あたしだって、自室に蜘蛛を放されたりしたら、平気じゃないしさ」
    リネンが宥めるような言い方で僕を諭す。
    気持ちは分からなくもないけどさ。
    脅し文句にしてはシュールすぎるんだよ。
    大体、なんで子持ちシシャモ?
    普通のシシャモじゃ駄目なのかな?
    「でしょ〜!?しかもよりにもよって子持ちシシャモだよ?部屋中にばら撒かれたたくさんのシシャモ……その中にさらにたくさんの赤ちゃんシシャモがいるんだと思うと……うひゃあぁ〜!怖いよぉ〜!」
    そういう理屈なのか……
    端から見ればくだらない理由でも、ザイカにとっては真剣に怒る理由たり得るのだろう。
    ちょっと……いや、だいぶ共感し難くはあるが。
    「怖いならせいぜい、他者を怒らせないように生きてみればいいんじゃないか?」
    「無茶なこと言わないでよ、パボちゃん何しても怒るじゃん」
    「こっ……の小童が……ッ!それが自分の所為だと何故気付かぬのだ……!?」
    パボメスは怒りに打ち震えながら、同時にあまりの噛み合わなさに苦しんでもいた。
    可哀想だなぁ。
    「まぁまぁ〜。二人とも、落ち着いて?」
    ライラが間に割って入る。
    「パボちゃん。あなたはザイカちゃんよりうんと大人なんでしょう?ね、少しだけでいいの。大目に見てあげてくれないかしら?」
    ライラはあくまでお願いという形でパボメスを諭そうとする。
    気難しい自尊心を傷付けないように、丁寧に言葉を選んでいるようだった。
    僕には到底真似できそうもない。
    が、それでもパボメスは強情だった。
    「……お前もそんなことを言うのか、ライラ。我慢しろと?折れてやれと?はっ。馬鹿げている、不公平だ!」
    「そうね。そうかもしれないわね。でもね、こういうのはお互いに歩み寄って折り合いをつけていかないと、取り返しのつかないことになるのよ」
    依然として穏やかな口調ではあるものの、ライラの表情からは真剣であることが窺えた。
    普段のんびりしているように見えても、やっぱりお姉さんなんだ。
    予期せぬタイミングで、当たり前のことに気付かされた。
    「今はまだ、分からないかもしれないけれど……このままもう戻れないところまで進んでしまったら、きっと二人とも後悔するわ。わたしは、そんなあなたたちは見たくないの。だから……」
    ライラは床に膝をついて、パボメスと目を合わせる。
    それから、とても優しい顔をして、
    「今だけ、わたしのわがままを聞いて」
    祈るようにそう言った。
    「…………はぁ〜っ……仕様があるまい。いいだろう、お前の願いを聞いてやる」
    数秒の静寂の後、パボメスが渋々といった様子で溜息を吐いた。
    それを見たライラの表情がぱっと明るくなる。
    「よかった……!契約成立ね。代償はおやつのパンケーキでいいかしら」
    「要らぬ。人間ならいざ知らず、同族から巻き上げる趣味など持ち合わせとらん」
    悪魔特有の調子で掛け合いをする二人の間には、さっきまでは無かった、平和な空気が流れ始めていた。
    なんとかパボメスには落ち着いてもらえたみたいだ。
    で、ザイカの方は……
    「むうぅ〜〜〜……何なの何なの!パボちゃんばっかり大人って言われてさ!ザイカだってお姉さんだもん!」
    分かりやすく拗ねていた。
    まぁ、そりゃあ目の前で、直前までいがみ合ってた相手があんな風に言われてたら、へそを曲げるのも仕方ないのかも。
    えーっと……僕が何かしらフォローした方が良いのかな……
    でも何て言えば……
    僕がまごまごしているうちに、魅朕がザイカに近付いていた。
    「あら、そう?だったら今回のいざこざも、大人の余裕で水に流してあげたらどうかしら」
    「えぇ〜?!そんなこと言われても、」
    「それとも……」
    ザイカの反論を遮って、魅朕は言葉を続ける。
    「まさかザイカお姉さんは、自分の喧嘩一つ満足に終わらせられないお子様なのかしら?」
    あからさまに挑発的な発言。
    なんでそんな、火に油を注ぐようなことを……!
    そう思ったが時既に遅し。
    ザイカはますます眉間に皺を寄せて、完全にむきになっていた。
    「はーっ!?勝手なこと言わないでよね!そんなのザイカには余裕ですぅ〜!」
    「へぇ〜?そうは言っても……口ではどうとでも言えるわよね〜?それが本当なら証明してくださる?仲直りくらい余裕なんでしょう?」
    「当ったり前だよ!見てて!」
    売り言葉に買い言葉でそう返すと、未だに不機嫌そうな顔ではあるものの、パボメスの方に寄っていく。
    あれ?これ、もしかして……意外と良い方向に向かってる……?
    「パボちゃん!!!」
    「うわっ!?……何だ、急に耳元でデカい声を出すな!」
    ……良い方向に……向かってる、のかなぁ……?
    どうにも不安が残る。
    それでもザイカは、魅朕に宣言したとおり、ちゃんとパボメスと仲直りしようとしているようだった。
    「色々酷いこと言っちゃってごめんね。仲直り、してくれる?」
    多少ぎこちなくはあるものの、目を合わせてそう伝えたザイカに、パボメスは──
    「……はぁ?何奴も此奴も何を勘違いしているのか知らんがなぁ、始めから無いものをどうやって直せと言うのだ?お前との間に絆を感じたことなど一度たりとも無いぞ」
    うっわ、それ素で言ってるの?
    嫌味か皮肉じゃなくて?
    僕は内心パボメスに引きまくっていたが、当の本人は心の底から疑問に思っているようで、その表情にはあくまでも困惑の色が滲んでいた。
    もう一周回って恐ろしい。
    僕が同じことを言われたら絶対耐えられない。
    確実に一ヶ月は引きずる。
    「それなら、これから作っていけば良いんだよ!あたしもパボちゃんと仲良くなれるように頑張るからさ!ねっ?」
    どうやらザイカは僕が思っているより格段にポジティブらしい。
    パボメスの爆弾発言に顔色一つ変えず前向きな返しが出来るのは、並大抵のことではない。
    今回ばかりは尊敬の念すら芽生えそうだ。
    「…………お前が、もう少し節度というものを弁えたらな」
    しばらく考えてから、パボメスがそう答える。
    ザイカの表情が目に見えて明るくなった。
    「うん!うん!わきまえるわきまえる!これでもうあたしとパボちゃんはお友達だよっ!仲良しの印のぎゅーっ!」
    「うぉわ、離れろっ!!何も分かっておらんだろう馬鹿め!!」
    仲良し、と言うとちょっと違う気がするが、何はともあれ元の二人に戻ってくれたみたいだ。
    当事者でない僕まで肩の荷が下りたような気分になって、無意識にほっと息を吐いた。
    「ほらほら、見てたでしょ魅朕!ザイカは子供じゃないの!喧嘩もちゃーんと終わらせられる、お姉さんなんだから!」
    「はいはい、そうね、その通りね。あとはもうちょっと落ち着いてくれたらもっとお姉さんらしく見えるわよ」
    「ふふっ。丸く収まって良かったわ〜」
    ピリピリした空気は消え去って、いつもの穏やかな日常が帰ってくる。
    安堵の気持ちに浸りながら、僕はリネンに問いかけた。
    「ねぇ、これ僕たち、わざわざ寝室から出てくる意味あった?」
    「……さぁ?」
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