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    全世界を統べる大天才梔子さん

    大天才の作品にも、人を選ぶものはある。
    ここはそういうものを置いておく場所です。

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    POIPOI 12

    モブ男子高校生二人組から見た💛✨と❤💚。
    外見と中身のギャップの話。

    人は見かけじゃ分からないその日、俺は友人と買い物に来ていた。
    と言っても何てことは無い、俺の家で一緒に遊ぶときのための菓子とか、そういうのをスーパーに買いに来ただけだが。
    新発売のスナック菓子を何の気なしに手に取って眺めていると、ふと、友人が俺の耳に顔を寄せ、ひそひそと話しかけてきた。
    「おい見ろよ、あの二人……!」
    「ああ?何だよ……うわ」
    友人の視線の先を見て、俺は思わず息を飲んだ。
    そこにいた二人の女性は……なんというか、存在感がある、と言えば良いのか……
    ともかくどこか惹かれるところがあった。
    片方は肩のあたりだけ外ハネになっている銀髪のロングヘアに、なんとなく無邪気そうな丸っこいつり目をしている。
    もう片方は、ふんわりした前髪とストレートの後ろ髪の金髪セミロングに、優しくて大人っぽい目をしていた。
    が、何より印象深かったのはその身長。
    二人とも、どこからどう見ても女性なのに、俺たちと同じくらいの背丈がある。
    160後半……いや、170はあるか?
    ともかくそれくらい高いのだ。
    「すげ〜、きっとモデルさんか何かだよ」
    「カッケェなぁ……」
    友人と揃って、目を奪われる。
    と、二人組の銀髪の方が口を開いた。
    「ねぇねぇ見て!メロン味のドーナツだって〜!これ買っていーい?いいでしょ〜?」
    ……ん?
    今のは……本当に彼女が発したのか?
    すらりとしたクールな外見とはあまりにもミスマッチな台詞と口調に、友人と顔を見合わせ、それから綺麗に二度見した。
    いや、でも、確かにそう言ったよな……
    少なくとも声は「らしい」感じがしたし……
    俺が考えあぐねていると、今度は金髪の女性が口を開く。
    「もちろん良いわよ〜。……あっ、そうだわ〜。どうせならみんなの分も買っていきましょう〜」
    「はーい!さんせーい!」
    うわすっごいのんびりした声。
    ある程度は想像通りだったのでさっきほどではないが、それでもなかなかにギャップがある。
    にしても、二人とも……笑うと途端に幼く見えるな……
    人は見かけじゃ分からないって本当なんだな。
    また一つこの世の真理を知った。
    「あー!見て見て〜!イチゴ味もある!ヒョウガは絶対コレだよねぇ。……おっ、抹茶味かぁ!リネンはコレかな〜?えーと、魅朕は〜……」
    「うふふ、ドーナツにも色々あるのね〜」
    浮世離れした外見の二人から発せられる平凡極まりない会話に、だんだんと脳が慣れていく。
    これはこれでアリだな……
    そんな感情が湧き出す。
    「……世界って広いなぁ」
    「そうだな……」
    友人と二人、悟ったような顔をして、妙に穏やかな気持ちでそう言い合った。

    後日、同じスーパーにて。
    俺はまた友人と買い物に来ていた。
    「なぁおい……!あれ見ろよあれ、絶対ヤバいって……!」
    「何だよそんなに慌てて……うわっ!?」
    デジャブを感じるやり取りの後、俺は言われた方向を見て思わず後退った。
    そこにいたのは、何と言えばいいか……とにかく怖そうな二人組だった。
    片方は銀髪をオールバックにした屈強な男性。
    素手で人を殺せそうなほどに屈強。
    どこからどう見ても関わっちゃいけないタイプの人間だ……!
    良くて百戦錬磨のヤンキー、最悪の場合裏社会のボスだ。
    そういう目をしている。
    目が合っただけで死にそう。
    で、隣にいるのは……別のベクトルで関わっちゃいけなそうな人。
    長い黒髪に切れ長の目をした男性。
    どこか女性的に見えなくもないが、横にいる銀髪の彼と同じか、何ならそれ以上の背丈がある。
    一度声を掛けられたが最後、全財産絞り取られて路肩に放り捨てられそうな……そんな感じの見た目だ。
    そうでなくても女を誑かして捨てることを趣味の一つとしていそう。
    あと何だその格好は?
    スーパーに買い物に来る服装じゃないだろどう見ても。
    そもそもどういう関係なんだ彼らは。
    何かしらの反社会的組織のボスとその右腕とかかなぁ……?
    最早それしか思い浮かばないんだが……
    「も、もう行こうぜ……」
    「ああ……そうした方がいいな」
    俺たちがこの場を去ろうとしたとき、二人組の黒髪の方が口を開いた。
    「あっ、ほら!この前ザイカが買ってきてくれたの、これじゃないかな?美味しかったよねぇ〜。これも買おうよ」
    ……いや。
    今回ばかりはそう簡単に気を抜かないぞ。
    既に言葉の節々から人畜無害オーラが滲み出ているが、それが本当だとも限らないし。
    だから今一度、見極め──
    「でもリネン、お団子も買うんでしょ?昨日あれだけ体重増えたって騒いでたのに……」
    「ちょっ……ヒョウガ、あんまりおっきい声で言わないで、それ……!」
    「あ、ごめん」
    はいはい、またこのパターンね。
    なんとなく察してたよ。
    つか何だよそのやり取り。
    そういうのは日常系アニメとかで仲の良い姉弟や男女の幼馴染みがやるやつなんだよ。
    間違っても裏社会で生きてそうな成人男性二人から発せられる会話ではないんだよ。
    「はっ……思い出した」
    「何?」
    「リネンとヒョウガって、前に……ほら、あの背ぇ高いお姉さんたちが言ってた名前」
    「あぁ〜……」
    彼女たちの知り合いか……
    それならこの外見と中身の不一致っぷりにも納得がいく。
    にしても俺ら、人は見かけじゃ分からないって、その二人に教えてもらったのに……
    また同じ過ちを繰り返すなんて、我ながら情けないな。
    「……あっ、こっちの味も気になるな……ど、どうしよう、買っちゃおうかなぁ……?」
    「繊細っぽく見えて意外と懲りないよね、リネンって……」
    「そ、そんな目で見ないでよぉ〜」
    和気藹々とお菓子を選ぶ二人に、俺たちはまた悟ったような気になる。
    人を見た目で判断しちゃダメ、絶対。
    それはともかくとして。
    「結局何なんだよあの格好」
    「俺に訊かれても……」
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