重い水音が響く。
柔らかいものと固いものを同時に砕く音が響く。
息。
飛沫。
悲鳴。
そして、上機嫌な歌声。
暗闇の中で、絶え間なく存在感を放っている。
「──かつて。私がいた村に、似たような症状の子がいました」
鈍い音の中に、突き放すように高く鋭い足音と、甘やかに愛撫するような低音が響く。
「いくら食べても満足出来ない──と。毎日のように、お腹がすいたと喚いていた」
語りかける声と同時、何かを嚥下する音が、僅かに耳に届く。
「死にたくない、と、その子は限られた、他の人の食料にまで手を出しました」
寒い。
「村人はその子を『悪魔の使いだ』と糾弾。結果、墜放されました」
音が認識できない。
「ですが──あの子はね、どうあっても人を食べようとはしませんでした」
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