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    3150_lucky

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    なんかミキヨシいつかクラさん置いて死んでしまうん…ウワァァァァァイヤダァァァ!!!って情緒が不安定になりすぎて書いたしクラさんが流暢に日本語喋るしミキクラ成立してるしクラさんは三木さんのことをカナエって呼んでるのでなんでも許せる人だけがぼんやり見て欲しいし見なくても大丈夫だし続く

    #ミキクラ
    mixicura
    #ミキクラミキ
    mixiclasticMixi

    リビングデッド新横桜が散りかけている。クラージィはぼんやりと、明かり取りの窓から空を見上げた。雲に霞む月を朧月と呼ぶのだと、教えてくれたのも彼の人だった。
    持ち帰った菊の花を見て、ノースディンが物言いたげな視線を寄越す。けれどもついに何も言わなかった。何年経っても心配性なことだと思いながら、足下で気遣うようにクラージィを見上げてにゃあんと鳴くノースディンの使い魔の頭を撫でる。
    週に数日はこの屋敷で過ごすようになった。恋人を失った慟哭を見ていられなかったのだろうノースディンが、生存確認だと言わんばかりに週に数度は訪れるようになり、あまりの頻度に申し訳がなくこちらからも訪れるようになってはや五年。
    「一年とは早いものだ」
    「……百年とて瞬く間だ」
    「そうだな。きっと、永劫も瞬きの間に過ぎていくだろう」
    微かに自分は微笑んでいるのだと思った。クラージィの恋人であった三木カナエが死んで、もう五年が経つ。


    転化するかと終ぞ聞けぬまま、老いた彼は安らかに死んでいった。クラージィは三木が、そうして吉田が望まなければそうするつもりなどなかったけれども、吉田を送った時も三木を失った時も、胸が千切れてこのまま死んでしまうのではないかと思うほど苦しかった。
    神に縋り心の安寧を求めていた神の使徒であった頃を思えばなんと欲深くなったことか。今ですら、二人の住んでいた家はそのままクラージィが手元に残してしまって手放せないままだ。
    家具もそのままに残したまま、それが未練だと知っていてなお手放せない。執着するということ、この手に何かを抱えるということ。その重たさを、静まりかえった吉田の部屋で、ことりとも鳴らない三木の部屋で、昔を思い返しながら感じる痛みは、失った時の鮮烈なものではないけれども、一生塞がらぬ膿んだ傷のようにクラージィの心臓を優しく突き刺す。
    その痛みさえ、愛しいのだ。失うこと、それが悲しいことを教えてくれた大切な痛みをかかえて、この先を歩いていける自分は幸福だ。
    支えてくれる人はたくさん居て、だから誰を失っても誰かが支えてくれる。そうしてクラージィもその中の一つになって、誰かを支えながら生きているのだ。
    それが、自立って言うんです。柔らかい優しい声で、永い眠りから覚めたクラージィが百年以上も先の世界で戸惑ったときに、そんなこと当たり前であなたは努力していると優しく認めてくれた声。
    それからもずっと隣で同じ歩幅でえ歩いて、今はもう人生の長い道を立ち止まって振り返ることでしか出会えない人。
    一生涯好きだと思った。これ以上誰も好きにならなくてもいいくらいの愛情を分かち合ってくれた人がいる。三木が教えてくれた言葉がこの心の中で生きている限り、きっと自分は死ぬことはない。胸を突くこの痛みは、それだけ愛した理由である疼痛はけして悪ではないのだ。

    菊の花束を二つ、桶に水。線香とろうそくと、それから吉田と三木の好きだったビールをそれぞれ二本ずつ。今日は三木の命日だった。初夏の涼しい風が吹く真昼に、昼寝でもするような気楽な顔でそのまま逝ってしまったのもつい昨日のことのようだ。
    霊園に人気は無く、遠くで吸血鬼が騒いでいる喧噪だけが微かに風に乗って聞こえてくる。霊園の一番奥の隅に、二人は並んで眠っていると、そう思うば微笑ましい。
    名残を惜しむように、若葉の萌え出た枝に張り付いた春の名残が、夜風にふっと飛ばされて、うすぼんやりと明るい世界にひらひらと落ちていく。
    涼しくて、居心地のいい夜だった。墓場の湿った土のにおい。古い土の上で、まだつるつると光沢を放つ御影石。
    吉田と三木は示し合わせたように自分たちの墓を隣同士でたてていた。代々墓は別にあるんですけどねぇと吉田はいい、三木もまぁ俺もあるにはあるですけど、管理は弟に任せましたと、その時には余程皺の寄った手でクラージィの頭をぽすんと撫でる。
    墓参りは同じ所の方が楽ですもんねぇと、言葉にされていないのに伝わってその時からずっと寂しい気持ちでいて、それでも二人は死ぬつもりなのだと思えば止められずに、未練のように吉田の隣のスペースを購入した。いつか塵になりはてればそこに納めてもらおうとしたのだ。
    別に後追いするつもりはないと言い訳のように伝えると、三木も吉田も仕方ないなぁといわんばかりに苦笑して、「死んでもおんなじ並びですねぇ、じゃあ寂しくないですね」と慰めるでもなく吉田と笑い合ってくれた。まぁそのせいでノースディンに後追いでもするのかと心配されて今に至るけれども。
    未練だと言われても仕方が無い。未練が残る程に愛したのだ。割り切れないものは割り切れないまま、胸に抱えて生きることを三木も吉田も許してくれた。最後の最後まで、優しくて温かくて、居心地のいい場所をくれた。
    ああでも、叶うならもう一度会いたい。夢物語でもなんでも、クラージィはいつだってそう思っていた。ずっと一緒にいたかった。同じ種族になるのを夢見てしまうほど。
    夢から覚めろと言わんばかりにざああと風が吹く。思わず一瞬目を閉じた。そうして、開いた瞬間に呼吸が止まる。心臓も止まるかと思った。
    御影石の上に行儀も悪く座る、ホログラムのように半分透き通った人の後ろ姿。短く整えられた髪と、派手な柄シャツ。後ろからでもすぐに解る、首の左後ろから真横に薙ぐような傷跡。
    嘘だと思った。嘘でもいいと思った。夢だと思ったし、夢でもいいと思った。だから今だけ時が止まってくれればいい。一生ここに佇んでいて構わない。
    ぐるりと巡る思考をよそに普段はことりともしない心臓がバクバクと音をたてた。風がひゅうひゅうと鳴る。三木だろう後ろ姿の男は、クラージィに気付いた訳でもないだろうに、何かを探すような仕草で頭を振っている。そのまま身体の後ろ側、御影石の端に手を置いて、身体を捻るようにしてくるんと振り返る。懐かしい、まだ出会った頃の姿をしている。七三に分けられた髪、ともすれば人相の悪い、小さな瞳。それがクラージィを捉えてまんまるく見開かれる。すっと、三木の手が薄くなっていくのが見えた。
    「消えるな!」
    思わず怒鳴って、足は弾かれたように前に出る。反射的な行動だった。慌てて走り寄るクラージィの足下にいつの間にか見たこともない猫が居てにゃあんと鳴く。
    三木は一瞬固まったように動きを止めた。言葉が通じているのだろうか、そも幽霊はこちらを視認できるのか、記憶は、言葉は、ぐるりと回る思考よりも早く口は勝手に願いを紡ぐ。
    「頼むから消えないでくれ。もう少しでいい、ずっと、私は……」
    幻でもいいから。泣きそうな自分をぐぅと堪えて、クラージィは一歩踏み出す。それに応じるように、三木の身体は輪郭がより鮮明に浮き上がった。
    「アー……あれ、俺日数間違えたかな」
    「バレちゃったから往生しましょうか」
    ぐしゃりと、三木がが自らの髪をぐしゃぐしゃと乱すように言葉を発した瞬間、足下からも懐かしい声がした。慌てて足下に視線を向けると先ほど猫がぐったりと肩を落とすような仕草をして、それからそれはそれは懐かしい声で「お久しぶりですクラージィさん」と喋る。
    「吉田さん…?」
    「ええそうです」
    慌てて三木に視線を向けると、観念したように両手をあげた三木は罰が悪そうに視線を泳がせながら、「いやぁお久しぶりで…」とあげた手をひらひら振った。


    「ヘルシングさんと一緒ですよ。どうやら幽霊になったみたいで」
    「死んでちょっとしてからかな。クラさんが夜ずっと墓の上にいるから、俺も吉田さんも昼間にこう、幽霊としてうすぼんやりね、外に出てたんですけど」
    「昼間だと僕ら余計にぼやっとして人間には見えないみたですねぇ」
    「発見でしたねぇ。そんでこの前吉田さん、野良猫可愛いですねぇって猫に触った途端乗り移っちゃったみたいで、でも身体の主導権は猫にあるからうわあああって叫びながらどっか行っちゃって。俺探したんですからね吉田さん!」
    「いや本当、ご心配おかけしまして。この猫さんもう寿命だったみたいで、今は僕しかいないんですよね」
    ほのぼのとそう話す二人に、途中まで惚けていたクラージィはむうっと眉をしかめた。
    「…クラさん、怒ってます?」
    吉田が機嫌を伺うようにクラージィに視線を向ける。これで怒らないと思っているのか。いや怒っていると解ってて、許してほしくて聞いてくるなんてずるい。クラージィは恋人の三木は怒れても、優しい隣人の吉田には中々怒れない。
    「酷いだろう、私はずっと二人を……」
    「そうですねぇ」
    「どうして…話をしてくれなかったんだ?」
    クラージィはずっとそうしたかったのに。どうしたって恨みがましい気持ちが出た。拳をぎゅうと硬く握る。そうしないと泣いてしまいそうで、泣くのがもったいなかった。五年も見ていない二人を、ちゃんと見たかった。
    「そりゃぁ…未練にさせちゃ悪いですから」
    「死人に口なし、ですよ」
    「それはそうかもしれないが…!」
    「吸血鬼は幽霊になれない、らしいんですよ。幽霊は多分吸血鬼の一種ですけど、吸血鬼はだから幽霊にはなれないんです。そりゃ無いとは思いますけど、夜ごとにこの墓場にクラさんを縛り付けるようになるのも良くないだろうと思ったんですよ。先を歩く人が死者にずっと捕らわれてるのもおかしいでしょう?」
    「毎年墓参りに来てくれて嬉しかったですよ。でも同じくらい、もう来なくなっても大丈夫だからとも思ってました」
    「そうですねぇ。それに俺、新しく恋人が出来たなんて報告されたら草場の影から泣いちゃいます」
    おどけたような三木の言葉に、クラージィは一瞬三木をぶん殴ろうかと思って、出来ないことに気付いて、握った拳に更に力を込める。
    だって多分本心だったからだ。だから酷いと思った。クラージィに恋人が出来れば傷つくのに、三木はクラージィにずっと自分を好いてくれとはもう言ってくれないのか。
    「死んでいるならまだしも、魂がそこにあるなら私はずっとカナエの恋人だ」
    「気持ちは、嬉しいですよ。すごく」
    三木の言葉が言外にそれはいけないことだと教えている。そうかもしれない。そうだろうか。だって昔、悪魔だった吸血鬼は今や人と肩を並べて歩き、昼間も夜も騒がしいこの新横浜に、幽霊が恋人になってはならぬ道理があるのか。
    唇を噛む。何が正しいのか、正しいだけでは消化できないものが増えすぎたクラージィは歯がゆくて苦しかった。
    「クラさん、俺は」
    「ハロー、お暇?」
    三木の言葉に被さるようにして、聞き慣れたような聞き慣れないような声がする。三木がびくぅっと幽霊なのに肩を震わせて、吉田は文字通り飛び上がり、クラージィはばきりと身体を硬直させた。
    「混み合ってる系エブリワン、お暇?」
    混み合ってたら暇ではありません。その突っ込みが、どうしてもクラージィからは出せなかった。ので、多分幽霊の三木にも猫になってしまった吉田にも無理だっただろう。

    朧月がぼんやりと照らす霊園の片隅、猫と幽霊と吸血鬼は、唐突に現れた人なつこいゴジラを前にただただ立ち尽くした。
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    🌱(め)

    DONE嘘予告軸の🧛‍♂️クラと退治人三木のミキクラ。なんちゃって戦闘描写があります。

    ディンに吸血鬼にされて目覚めたら見知らぬ土地にいたので一人シンヨコを放浪して嘘ディンを探そうとしていたクラさんと出会った退治人兼便利屋の三木の話。捏造妄想幻覚モリモリ。執筆途中で誕生日バレで脳を焼かれたんですが今回の話は清々しい程関係ありませんのでご承知の上でお願いします。
    ※以前書いた嘘ノスクラとは別軸です
    嘘ミキクラ 身を隠すようにして廃ビルの階段を上がる。
     埃を被った廊下の隅で小さく痩せた野良猫が軽い足音で通り過ぎていった。暗がりからなぁう、わぁん、と成猫らしい声がする。親猫と合流したのか。歩を進めると別の野良猫が通路の隅で毛を膨らませて威嚇していた。少し来ていなかったうちにすっかり野良猫の住処になってしまっているようだ。確かに不法侵入は此方の方に違いないので、伝わらないとは分かっていつつも「すみません、お邪魔しますね」と小声で会釈した。猫はそんな事は知らずに走って行った。そんなものだろう。目的の部屋の前に着くと安全靴が床の硝子を踏んでざらついた音を立てる。とっくに来訪は知られているだろうが、ノックを三回。お邪魔します。錆びた鉄扉を開けると耳障りな音がした。油を注して整備したいが三木が勝手にやればまた少し怒った顔をして、それから恐縮するんだろうな。困り顔で辿々しく言葉を探しながら怒る姿が目に浮かぶ。嫌われるのは本意ではないのでやるならバレないようにしないとな。
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