三日月宗近は、己が鶴丸国永へ懸想していることを自覚していた。
気づいたら目で追うており、これに疑問を持ち、何故なのかを思考し、答を導き出した。
刀である己がまさか恋に落ちるとは。まるで人のようである。
だが戸惑いはわずかで、三日月宗近はすぐにその事実を受け入れた。
そして、それだけであった。
三日月宗近は、想いを返してもらいたいという”欲”が全くなかった。
そしてもう一つ、己に課せられた【機能】を十全に理解し、弁えていたからである。
そのため、想いの自覚からこれまで、特段の行動も起こさず変わらず、己の想いの丈を決して外へは現さなかった。
日々はただただ粛々と過ぎた。
想い人が笑って日々を過ごしているのならば、三日月宗近はそれだけで満たされ、幸福であったからであった。
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