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    kairyo_

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    kairyo_

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    2022年ルカ様の日オメデト!!!!!!まだ初々しくてかわいいルカ様を書いてみました 国境の小競り合いってどこまでやってええんやろな

    初花目の前に死体が一つ。
    その日、ハイランド王国の皇子であるルカ・ブライトは、初めて人を殺めた。
    振るった剣先がまず人の肌を喰み、そのまま筋張った肉を抉る。内部に秘められた幾つかの臓物を断ち、続いてどこかしらの骨を粉砕する。数刻前まで生きていたその体は大きく撓み、後は絶えて動かなくなる。
    それはルカが想像していたよりも実に単純で、退屈なものだった。
    「つまらぬな……」
    ルカは苛立ち、王家に伝わるその剣を乱暴に振った。草葉に赤い血液が飛び散り、銀の刀身は月光に似た輝きを取り戻す。
    「これでは、我が身に燻る怒りへの慰めにもならぬ」
    そう呟く間に、言葉の形にならない雄叫びを上げながら、槍を持った兵士がルカめがけて突進してくる。
    ルカは即座に身をかわして槍の穂先を避けると、その柄を掴む。武器を抑えられ身動きが取れなくなった兵の、怯えた顔が見える。まだ若い。十七のルカと、歳の頃はそう変わらないだろう。
    ルカが見やると、兵はたじろいで槍を抜こうとする。しかし、掴む拳が動く気配はない。時間にして数秒。兵の呼吸が浅くなっていく。
    その唇がわななき、動いた。
    「死にたくない……!」
    ルカは、剣を振るった。
    兵の身体が、真っ二つに分かたれた。
    ルカの目の前に、死体がさらにもう一つ。
    「…………」
    若き皇子の膂力と、人間離れした太刀筋。
    それを見た都市同盟の兵達は水を打ったように静まり、誰も動こうとはしない。
    それが彼の初陣であるということなど関係ない。天から賜った戦の才を持つ者に凡夫が勝てはしないことを、その場にいる誰もが理解していた。
    「おい、きさまら」
    ルカは声を上げ、その顔を敵兵へと向けた。
    まだ少年の面影を残している頬には、どろついた赤い模様。
    「そんな場所で何人も雁首揃えて、何をしている?かかってこい、殺してやる」
    それでも動かない敵兵を見て、ルカは目を眇めた。そして問う。
    「恐ろしいのか」
    兵士達の間に、明らかな動揺が広がる。
    ルカは構わず続けた。
    「おれが」
    ルカの暗い瞳の奥に、昔日の記憶が去来する。
    「……この、おれが!」
    あの日、おれの目の前で母は穢された。
    この身体から迸った叫びは、豚の鳴き声によく似ていた。
    「穢らわしい……」
    それは誰に向けた言葉であったか。
    しかし、その答えが出るよりも早く、一人の兵士がルカに斬りかかる。
    しかし、その武器がルカに傷を与えるよりも早く、猛る狼の牙がその兵を捕らえた。
    「死ね!!」
    そして、死体が一つ。
    「きさまらがどれだけ足掻こうと無駄だ!!!逃さぬ!!!」
    ルカは叫ぶと、獣のように敵兵の群れの中へ飛び込んだ。
    「覚えておけ!!きさまらの今生に救いなどない!!!」
    閃く剣、燃える炎、上がる飛沫。
    「生まれながらにして弱く穢れている、それこそがきさまらの罪だ!!!」
    刻まれた肉が、堆く積み上がっていく。
    「死ね、死ね、死ね、死ね、豚どもめ!!!!」
    ルカの声は次第に憤怒を纏い、獰悪の色を強めていく。
    「痛みと死のみがきさまらの魂を浄化する!!!」
    誰のものとも知れない首が落ちた。
    漆黒の激情は戦場を呑み込み、凶暴な熱気を以て兵士達に畏怖と高揚を齎した。
    ルカが剣を振るい、殺せと吼えると、その度に死体が増えていく。
    その狂乱のさなか、脚を無くした兵が、赤い轍を地に残しながら、這いずって逃げようとする。その絶望的な退却路を塞ぐように、ルカは立っていた。
    その男は、敵国の皇子の顔を見上げた。一体何人殺したのか、全身から血を滴らせ、その目だけが爛々と光っている。
    「なんだ、その顔は。化物でも見るような目をしおって」
    整った顔立ちの枠に収まっているからこそ異様さの際立つ吊り上がった目が、男を覗き込む。
    その目の中心に座するは黒く狭い虹彩。その中に、ここでは到底足りぬとでも言うように、殺意と憎悪が渦を巻いて咲き乱れている。
    「……く、狂ってる……狂ってる!」
    ルカは少しばかり目を見開き、意表を突かれたような顔をしてみせた。何か考えるように、僅かに視線を巡らす。
    「なるほど」
    そして何事か得心したように目を瞬かせ、改めて眼前の哀れな男を見た。
    「ふはははは」
    ルカは実に愉快そうに笑った。
    あの瞬間からずっと、怒りだけを育ててきた。しかしここにきて初めて、快い感情を覚えた。
    「狂っている、か……面白いな」
    ルカは、男の頭を踏みつけた。呻き声が上がる。
    「気に入ったぞ。褒美をとらせてやる……」
    そして、その耳に毒を流し込むように言った。
    「きさまはここで、同胞が死に、火に巻かれ、残らず消し炭になるところを、何も出来ぬまま見ていろ」
    それは、余りに残酷な刑の宣告。男は目を見開き、震えた声で何か呟いた。しかし、その言葉は誰にも聞かれることはない。
    「そのまま這いずって帰り、都市同盟の豚どもに伝えろ。ハイランド王国が皇子、ルカ・ブライトは、きさまらに罪を贖わせることを誓ったとな!!!」
    足下から湧き出る恐怖の叫びを捩じ伏せ掻き消すように、ルカはおのが兵士達に命じた。
    「者ども!!!焼き尽くせ!!!一匹たりとも逃すな!!!」
    豚の死骸など、いくら増えたところで誰が気にかけようか。
    「ふははははははははははは!!!!!!」
    闇に満たされた瞳で、狂皇子は晴れやかに哄笑した。

    そしてまた、死骸が一つ。
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