タイトル未定両手に刀をもって人を斬る。体は軽く、まるで空をも飛ぶように高く飛ぶ。返り血でどす黒く汚れる身体など気にせず、手あたり次第に斬る。斬る。斬る。夢中になっているうちに、なにもかも、辺りの全てが地に伏せた。わずかに乱れた呼吸を整えるために深呼吸を一つ。
「帰るぞ」
「はい」
後ろからかけられる低い声。その声に従わなければならない気がして、返事をして振り向いた。
がばっと起き上がって見た通信端末は午前三時を表示していた。二度寝ができないほど血生臭い夢だと見るたびに思う。ベッドから降りて、キッチンへ。水道から水をなみなみとガラスコップに入れて、一息に飲んだ。
「はぁ」
コップをシンクにやや乱雑に置き、ため息をつく。中学生ごろから定期的にみるこの夢の生々しさに慣れることはない。人に話したところで良くて心配されるだけだ。いわゆる空気を読むのが上手いと自負する自分が考えたのはそんなところだった。誰にもこの夢のことは話していない。もちろん両親や兄弟にも。
1584