エロトラップダンジョン 〜導入編〜 "偉大なる航路"のある島には言い伝えがある。
——夜になったら"西の入り江"には近づいてはならない
昔そこで男が消えただの、人のうめき声が聞こえてくるだの、真偽のわからない話がいくつも残っていた。
近くに住む村の人々はあやふやな噂を信じることはなかったが、そもそも人気が少なく岩場の多い危険な場所なので近づくこともなかった。
ところが最近、別の島からやってきた複数人の若者らが、面白半分にその入り江に足を踏み入れてしまったらしい。
夜が明けて、どうにか逃げ出してきた若者の一人が村人に助けを求めたが、結局救助することはかなわなかった。
命からがら逃げ出してきた若者も、よほど恐ろしい目にあったのか何があったのか決して話そうとしなかった。
それどころか日を追うごとに、突然叫び声を上げたり、体をのけ反らせたりするなど奇行が目立つようになり、一瞬の隙をついて行方をくらませてしまった。
一連の出来事は村人たちを恐怖に陥れ、今では誰も立ち入らないように厳重に警戒している。
——その言い伝えがある島の名前は……
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「外から爆破して入り口を埋めてしまえ」
ひと通り話を聞いたホーキンスは、資料を机の上に放り投げた。
「なんてこと言うんだ、おまえは‼︎」
捨て置かれた資料を拾いながらドレークが言った。
ホーキンスは不機嫌そうにドレークをじろっと睨み返した。
「……その島の名前をもう一度言ってみろ」
「『エロトラップダンジョン島』」
ホーキンスは呆れ返って、わざと大きなため息をついた。
「そんなふざけた名前の島の、いかにも怪しげな入り江だぞ? 早く封鎖しろ」
「そういった意見もなかったわけではないが……、市民がまだ中にいる可能性がある」
「助ける素振りもなしに強行はできないと」
ホーキンスは鼻で笑った。
「市民を見捨てることもできないが、正規の兵力も割きたくない。そこで海賊のおれたちにお鉢が回ってきたと」
「そんなことは誰も言ってない」
捨て鉢なホーキンスの態度に、ドレークもため息をついた。
「入り江の中でなにが起こったのかはわからない。だが、お前の≪ワラワラの実≫の能力を使えば、万が一、命の危険に晒されても戻ってくることができる。そうしたことを考慮してのことだろう」
ホーキンスの≪ワラワラの実≫の能力は、任意の相手を"藁人形"として体に宿すことにより、ダメージを自身の代わりに引き受けさせることができる。
「こちらと"協力"を約束した際に、能力の利用について話があったはずだ。……イヤとは言わせんぞ」
ホーキンスは苦々しい表情で「……わかってる」と返した。
「だがそれは"命の危険"を想定した話だ。
……ドレーク、さっきの逃げてきた若者の録音をもう一度流してみろ」
ドレークは録音機械の再生ボタンを押した。
『はぁ、はぁ……、そうです。おれたち島の名前につられてやってきて……、ん……、軽い気持ちだったんです……。ちょっといい思いができるんじゃないか、って……♡
小さい入り江だし、まっすぐ一本道だから、何かあったらすぐ出てこれるだろって……、……ッッ♡ はぁ……、なのにッッ……♡
あっあっ……♡ あそこにッッ……、みんないたのにッッ……♡ だめだめ♡ みんなぐちゃぐちゃでッッ♡ お、お♡ 思いだすだけで……♡
あっ、あっ……♡ やだやだ♡♡ 戻りたくない♡♡♡ やっと逃げれたのにぃ♡♡♡♡♡ んんん♡♡♡♡♡♡ いや♡ いやっ♡
あ、……あああ────♡♡♡♡♡♡♡♡』
ドレークがそっと停止ボタンを押した。
録音を聞き終わったホーキンスはじっと押し黙っている。
「……確認したいんだが」
「ああ」
ようやく口を開いたホーキンスに、ドレークは頷き返す。
「若者は全員男だよな?」
「……そうだ」
「これまでの消えた人々も?」
「……そう、だ。たぶん」
証言があやふやだけど、とドレークが付け足した。
ホーキンスはさらに押し黙ってしまった。
「…………行きたくねぇ…………」
ぽつんと漏れたホーキンスの本音に、さすがのドレークも同情を隠せなかった。
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ステータス
◆バジル・ホーキンス(_31_)
海賊(現在、ドレークに協力中)
ワラワラの実の能力者
装備・藁備手刀
ライフ(残り5体)
(任意のタイミングでダメージを回避できる。使えるかどうかは状況次第)
体力・300/300
(抵抗値、ゼロになるとトラップの効果を全て受けてしまう)
◆X・ドレーク(_33_)
海賊(海軍特殊部隊隊長)
リュウリュウの実<モデル・アロサウルス>の能力者
装備・メイス
サーベル
小型爆弾(残り5個)
(任意のタイミングでダメージを与えることができる。使えるかどうかは状況次第)
体力・500/500
(抵抗値、ゼロになるとトラップに対する破壊行為ができなくなる)