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    試運転中。ジャンル雑多です。

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    【アズ監♂】自分はアズールに相応しくないのではないかと悩む監♂のはなし。
    ※力尽きて放置してあったので途中までです
    ※台詞のなかでデフォルトネームの「ユウ」を使用しています
    ※性別が明確にわかるようなシーンはないですが♂派なので♂と表記しています

    うつくしいひとだった。手本のような持ち方でペンをにぎる細長い指先。文献の記述をたどっていくアイスブルーの瞳。すらすらとよどみなく答えを紡ぎ出す唇。彼をかたちづくるものは、なにもかもうつくしい。
     その最たるものが、心だった。ひたすらに努力を重ねてきた勤勉さと、それゆえの自信。
     監督生にとって、アズール・アーシェングロットは誰よりもうつくしいひとだった。
    「監督生さん、聞いていらっしゃいますか?」
     隣からの呆れたような声に、監督生はふと我に返る。古い紙のにおいが満ちた空間。机に積まれたいくつもの本。真っ白な課題に少しずつ広がっていくインクの染み。
     慌ててペンを置き、監督生は隣に座るアズールにちらりと視線を向ける。呆れてはいるようだが、機嫌を損ねてしまったわけではないらしい。
    「すみません先輩……!」
     場所を考え、できるだけ声を落として謝罪する。ふたりのまわりには大きな本棚が並ぶばかりで、他には誰もいないのだけれど。
     放課後の図書館。進まぬ課題に一人で唸っていれば、ちょうど返却に訪れたアズールが見かねたように声をかけてくれたのだ。ラウンジの開店にはまだ少し時間があるから、と。
     せっかくの貴重な時間なのに──己に呆れてそう言えば、まったくですよとため息を吐かれた。時は金なり。アズールがよく口にする言葉だ。学業の傍ら店の経営もこなす彼の時間
    は、とても貴重なものだ。これ以上、無駄にするわけにはいかない。
     集中しようと、監督生はふたたびペンをにぎる。
    「わからないところがあるなら、すぐに言ってください。貴方でもわかるように説明して差し上げますから」
    「……はい、ありがとうございます」
     見とれていただなんて口にできるはずもなく、監督生は礼を言って頷く。どこからお話しましょうかと、アズールが手元の課題をのぞき込む。その刹那、古い紙のにおいにまざり、品の良いコロンの香りが鼻先をかすめた。アズールとふたりきりなのだと改めて自覚させられて、監督生の心臓がどくりとうるさく鳴り出す。
     オクタヴィネル寮の寮長と、オンボロ寮の監督生。そんなふたりの関係に恋人という名がついたのは、二週間ほど前のことだった。ふたりきりで過ごすことはこれまでにもあったが、意識してしまうとどうにも落ち着かない。この胸の音が隣にまで聞こえないことを祈りながら、監督生はアズールの声に耳をかたむけた。



     外廊下を歩いていると、少し先に見慣れた背中があった。友人たちに相棒を預け、監督生は駆け寄りたくなる衝動をこらえ、できるだけ早足で近付いていく。
    「アズール先輩!」
     振り返ったその瞳が、監督生を映した途端に穏やかな色を宿す。立ち止まったアズールに、追いついた監督生は満面の笑みを向ける。
    「昨日の課題、さっき提出してきました」
    「それは良かった。無事に完成したんですね」
    「はい、先輩のアドバイスのおかげです」
     ありがとうございましたと頭を下げれば、大げさだとアズールが首を横に振る。
    「たいしたことではありませんよ」
    「そんなことないですよ……! 先輩が教えてくれなかったら、間に合ってなかったかもしれませんし。やっぱり何かお礼……ラウンジのバイト、増やしましょうか?」
     監督生は以前から週に何度か、人手が足りない時にモストロ・ラウンジで給仕をしている。何かアルバイトでも始めようかと何気なく口にした時、アズールが提案してきたのがきっかけだった。慣れてきた今なら、それなりに戦力にもなれるだろう。
    「それとも何か他に──」
     ありますかと続けようとした唇に、革の手袋の感触。アズールの人差し指だと理解した瞬間、頬がじんわりと熱を持つ。
    「ユウさん」
     いいですか、なんて子供に言い聞かせるような口ぶりのくせに、声はひどく甘い。アイスブルーの瞳が、まっすぐにこちらを見つめる。
    「僕たちは恋人なんですから」
     対価を求めているわけではないのだと暗に言われ、監督生は頷く。ようやく離れていった指先に安堵しながら、こいびと、とたどたどしく唇を動かせば、アズールが満足げな表情を浮かべる。
     契約ではないと、アズールはあの日も言った。見返りも何も必要としない。恋人として、監督生のそばにいたいのだと。契約書の代わりに、左手の薬指にキスを落として。
     ずっとアズールに惹かれていた監督生には、断る理由などなかった。しかし今思えば、彼は自分のどこを好きになってくれたのだろう。
     彼がたくさんの時間と労力をかけてうつくしく磨き上げられた宝石ならば、自分は道端の石ころだ。どこにでもある、ありふれたものでしかない。特別に秀でているものもなく、魔法すら使えない。そんな自分が、彼の特別でいてもいいのだろうか。
     きらきらと光る宝石と、薄汚れた石ころ。そんな正反対のふたつが並んだショーウィンドウなど、見たことがない。まばゆいうつくしさを、自分が翳らせてしまうのではないか。隣にいても、許されるのだろうか。
    「……あの、アズール先輩」
     そこまで口にした刹那、唇が動きを止める。言葉を奪う魔法にでもかけられたかのようだ。 知りたい。訊いてみたい。しかし、好奇心よりも恐怖のほうが大きかった。もともと、望みなどないと思っていた恋なのだ。ずっと片思いで終わるのだと思い込んでいた。
     相応しくないと他でもない彼に言われてしまったら、きっともう立ち直れない。考えてみるだけで息が詰まり、不安に胸が潰れそうになる。
    「ユウさん?」
     じっとのぞき込んでくる瞳が凪いだ海のように優しくて、監督生はぎこちない笑みを貼りつけることしかできなかった。このひとは、きっとそんなことは言わない。わかっているはずなのに、そんなことを考えてしまう自分が嫌だった。
    「何でもないです。急に呼び止めてすみませんでした」
    「……いえ、ではまた後で」
     何か言いたげなアイスブルーの瞳に、監督生が気付くことはなかった。
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    MOURNING【了モモ】了さんの寝顔の話。2017年に書いたものをべったーから引っ張ってきました。この人も寝るのかと、百は感慨深い気持ちでソファに座ったまま眠る了を見つめる。人間である以上当然の行為だが、どこか人間味のない了が静かに眠っている姿は、百にとってひどく不思議で新鮮に思えた。

    「了さーん? まじで寝ちゃってる……?」

     目の前の光景が信じられずに思わず小声で問いかけたが、返事は一向になかった。静まり返った部屋には、了の寝息と時計の音しか聞こえない。悪趣味な悪戯として寝たふりをしている可能性も考えた百だったが、どうやら本当に寝ているらしい。

    「了さんが寝てるとか、すっごいレア……写メ撮っときたいくらい」

     しみじみと呟いてから小さく寝息が聞こえることをもう一度確認し、百はそっと了に近寄っていく。恐る恐る顔を覗き込むと、意外にも穏やかな寝顔をしていて面食らった。普段はよくまわる口は閉ざされ、ぎらぎらとした光を宿す瞳も今は瞼の向こうに隠れたきりだ。そのせいか、了の寝顔は普段より幼い印象を与えた。
     了との付き合いは長いほうだが、こんな表情は百も初めて見る。あどけない寝顔、だなんて形容するには物騒な男だが、それでも今は彼の持つ底知れない不気味さが影をひそめ、ただの人畜無害 2258

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    MOURNING【ちょぎにゃん】水に囲まれた本丸で過ごすふた振りのある夏の日。去年、折り本企画さま用に書いていたものですが、気に入らなくて没にしたのでこっそり供養します。青い空を、緋鯉がゆったりと横切ってゆく。動きにあわせて水面が揺れ、映り込んだ雲が生き物のようにゆらりとかたちを変えた。夏の力強い日差しが反射し、きらきらとまばゆい。
     涼やかな水音に耳を澄ませ、長義は中庭に面した濡れ縁を進んでいく。庭といっても枯山水のそれではなく、大きな池と蓮の花があるばかりだ。陽光から逃げるように、まるい葉の下に鯉たちがそっと身を潜めていた。
     清らかな水は結界の如くこの本丸を囲み、至るところに流れ込んでいる。
    「魚を狙っているのかな?」
     縁側に佇む背中に声をかけると、不満げに眉根を寄せて振り返った。
    「餌当番だ……にゃ!」
     南泉の右手にある大きな袋が、存在を主張するようにがさりと音を立てる。
    「おや、これは失礼。じっと池を眺めているものだから、つい勘違いしてしまったよ」
    「ついじゃねえだろ! 馬鹿にしてんじゃねえ」
    「お詫びに手伝ってあげようか」
     余計なお世話だ。水音にまじって聞こえてきた声を無視し、長義は南泉の手から袋を奪う。ぽとり、ぽとり。まるいかたちをした小さな餌をいくつか投げ込めば、すかさず鯉たちが集まってくる。
    「勝手にオレの仕事とんなっての!」
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    MAIKING【アズ監♂】自分はアズールに相応しくないのではないかと悩む監♂のはなし。
    ※力尽きて放置してあったので途中までです
    ※台詞のなかでデフォルトネームの「ユウ」を使用しています
    ※性別が明確にわかるようなシーンはないですが♂派なので♂と表記しています
    うつくしいひとだった。手本のような持ち方でペンをにぎる細長い指先。文献の記述をたどっていくアイスブルーの瞳。すらすらとよどみなく答えを紡ぎ出す唇。彼をかたちづくるものは、なにもかもうつくしい。
     その最たるものが、心だった。ひたすらに努力を重ねてきた勤勉さと、それゆえの自信。
     監督生にとって、アズール・アーシェングロットは誰よりもうつくしいひとだった。
    「監督生さん、聞いていらっしゃいますか?」
     隣からの呆れたような声に、監督生はふと我に返る。古い紙のにおいが満ちた空間。机に積まれたいくつもの本。真っ白な課題に少しずつ広がっていくインクの染み。
     慌ててペンを置き、監督生は隣に座るアズールにちらりと視線を向ける。呆れてはいるようだが、機嫌を損ねてしまったわけではないらしい。
    「すみません先輩……!」
     場所を考え、できるだけ声を落として謝罪する。ふたりのまわりには大きな本棚が並ぶばかりで、他には誰もいないのだけれど。
     放課後の図書館。進まぬ課題に一人で唸っていれば、ちょうど返却に訪れたアズールが見かねたように声をかけてくれたのだ。ラウンジの開店にはまだ少し時間があるから、と。
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    MOURNING同棲してるみなトウの話ソファにもたれかかり、穏やかに目を閉じる恋人。おかえりの代わりに聞こえてきた寝息に、思わず笑みがこぼれる。年上のくせに、子供のようにあどけない寝顔だった。
     投げ出された腕の先にあるスマートフォン。おそらく、巳波からの連絡を待っているうちに寝てしまったのだろう。落ちてしまいそうなそれを手にとり、テーブルの上に置く。かたりと小さな音がしたものの、寝息は相変わらず途切れることはなかった。
     疲れていたのだろうなと、目の下にうっすらと浮かんだ影を指先でなぞる。ひどくまっすぐでわかりやすいくせに、こういうところは悟らせまいとするのだ。不器用で、健気で、どうしようもなく愛しくなってしまう。
    「狗丸さん」
     寝かせておきたいが、このままでは風邪をひくだろう。寝室からブランケットを持ってきて、そっと肩にかけてやる。これでは本当に、どちらが年上かわからない。
     目を覚ましたこのひとは、優しいだなんてまた言うのかもしれない。貴方だからだと――貴方にしかこんなことまでしないと、いい加減に気づいてほしいのだけれど。見当違いの言葉は、いつだって巳波を落ち着かない心地にさせた。
     トウマといると胸のあたりがふわ 993

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