乍朝右界奇譚拾遺集
右:一、南に面したときの西側
二、そば、かたわら
古来、幽界物の物語集は多く有るが、明幟二百年を過ぎた頃から明確な幽(かくり)世(よ)とは異なる 日常の側にある不思議な物語からなる奇譚が人口に膾炙した。
これらは幽界物を捩って、日常の側、傍らにある、即ち右界物と呼び習わされた。
この書は戴極国乍王朝で親しまれたそれらの物語を蒐集、編纂したものである。
人を囚ふ礼物のこと
明幟の初め頃。
市に希有なる品流れたる事在り。人々挙り是を購う。
詳細失伝し今は容姿由来も知らず、ただ幸福を齎すとのみぞ伝ひける。
さる王師将軍、礼物として是を受く。
用ひて後、所領にて是の売買をきつく戒む。
王師将軍、人よりその故を問はれて曰く
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