Fellow/Crime 酷い雨が降っていた。視界も不明瞭になるような土砂降りで、アントレーが早足で安いアパートの外付け階段を上ると、部屋の前に同居人が佇んでいた。灰積もりの視界の中、桃色の髪はやけに目を引いた。部屋の扉は開いていて、彼は何やら部屋の中に視線を下ろしていた。
「何か…」
何かありましたかと声を掛けようとしたが、言い終えるより先に彼の視線の先を覗いてしまい絶句した。
「…ソレ、生きてます?」
「いや、死んでる」
叫び声のひとつでも上げそうなものだが、案外冷静なまま一応と問掛けるが、同居人は即座に否定した。
「…貴方が?」
「いや」
言葉選びに逡巡しつつ再び尋ねると、二度目の否が返ってきた。不十分な回答だと思ったのか、彼は部屋の中のそれから視線を逸らすことなく付け加えた。
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