救世主「なんで、なんで…」
僕が泣いている。泣きながら、手を洗面所でずっと洗っている。
あの不良野郎さえいなけりゃと僕が考えていたのを知ってたから。
俺があいつから僕を守って、救ってやったんだ。なのになんで泣いてんだ。
お前は幸せになれるはずだろ?
違う。こんなはずじゃない。こんなつもりじゃない。
「あんなこと。僕はしてない。してない。」
夢であいつを殺した瞬間をみた。夢なのに殴った感触が残っていてその気持ち悪さを消そうとずっと手を洗っている。
俺は間違ってたのか。でも、俺には僕に謝る手段なんてない。だから行動で。償いをしたい。
どうすればいい?
あの女を殴ればいいのか?
他の奴らを黙らせればいいか?
看守のガキを叩き潰せばいいのか?
「なんで僕がこんな目に遭わなきゃいけないの…」
僕はなにもしてない。僕は悪くない。
「普通に過ごしてただけなんだよ。」
そうだ、僕は普通に笑って生きていればいいんだ。
「もうここから出してよ…。」
いいぜ。救い出してやる。
どうやって救って欲しい?
僕がずっと手を洗っている。