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    IceSera0061

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    IceSera0061

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    大みそか前日の2人。2021年はお世話になりました。本年もよろしくお願いします。

    新しい夜、新しいふたりNYは田舎者の集まりーアッシュの言葉の意味を知ったのはその年のクリスマスの翌日だった。朝から晩まで車と人のざわめきが絶えることのない街が、不気味なほどに静まり返っていた。車や人が全くいないわけではない。だが、昼間なのに風がビルの間を吹き抜ける音や自分の足音がやけに大きく聞こえる程度には、音が少なくなっていた。

    夜になると音はさらに少なくなった。白い冷気をまとった風が、地面すれすれを走り抜けていく。鳥の重みで街路樹の枝がしなる音や、どこかでレジ袋が引っかかってあがいている音まで聞こえる。普段聞こえない音は、静寂の輪郭のようだと思った。写真に収めてみると、人が行きかい明かりもついているのに巨大な廃墟のような街が写っていた。

    高級マンションの一室で身を潜めていたあの頃、外出にいい顔をしなかったアッシュが年末は何も言わずに外に連れ出してくれた。静かな街をただ2人で歩いた。クリスマスのような華やいだディスプレイはなく、人々は寒さに首をすくめて進行方向だけを見て歩いていた。透明人間になったようだと呟くと、「知らなかったのか?この街では、誰でも透明人間になれるのさ」とうそぶく男の鼻の頭の赤みを、街の静けさに連動するように凪いだ緑色の瞳を覚えている。

    あれから何年もたった。多くのことが変わり、多くが失われたが今はこうしてのんきに年末の街を歩いている。白い息の行先を見つめていると、降り始めの雪がぼやけて見えた。

    「静かなのは今日までだね」
    「ああ。明日になったらタイムズスクエアに浮かれた奴らが大集合だ」
    「じゃあ、今のうちに浮かれちゃう?」
    「ああ」

    ごく自然に手を握られる。手袋ごしのぬくもりに頬を緩ませると、アッシュと目が合った。同じ緩み方をした頬にキスをしてやろうかと思った瞬間、頬にあたたかいものが触れた。こめかみに触れた鼻梁は冷たかった。

    「……浮かれてるね。君」
    「お前が言ったんだろ」

    アメリカ人にしてはスキンシップの少ない男のストレートな愛情表現に心臓が跳ねる。熱い頬を隠すようにマフラーに顔を埋めると、肩を抱かれた。金色の髪が黒髪と絡む。控えめなフレグランスが鼻をくすぐった。

    (すごいな。少女漫画みたいだ)

    やや的外れな感想を抱きながらアッシュに身を預けて歩く。道行く人は、視線を寄越す余裕もなく次々と通り過ぎていく。透明人間も悪くない。アッシュの腰に腕を回し抱き寄せると、目が驚きに見開かれた。きっと鼓動の速さは自分と同じだ。嬉しくなってマフラーの中でふふと笑う。2人の関係に恋人という項目が追加されてしばらくたつが、それらしい空気が出て来たのはごく最近だ。キスもハグも明らかに回数が増えた。服の上から触れ、その下の肌にも触れた。その先を、互いに意識している。そういう時期だ。

    「買いだめしたから来年まで出歩かなくていいね」
    「ああ」
    「今日はどうする?映画一気見?」
    「溜まったドラマを片付けるのもいいな」
    「カウントダウンの時はタイムズスクエアの生中継見よう」
    「去年と同じだな」
    「それがいいんじゃないか」

    寂しい街で過ごす特別な人との年末は、毎年変わり映えしないからこそいとおしい。英二はマフラーから顔を出し、アッシュを見上げた。今度はアッシュがマフラーに顔半分を埋める番だった。肩を抱く手に力がこもる。この力の意味するところを悟るとマフラーに逃げ帰りたくなった。恥ずかしい。照れくさい。今更。

    『したい』

    羞恥と本音が浮かんでは消える。アッシュもそうなのだろうか。英二は更に身を寄せ、肩に頬を寄せた。

    「……去年とは違うことをするのはどう?」
    「たとえば?」
    「ベッドで」
    「ベッドで?」
    「いじわるするなよ、オニイチャン」
    「ふふ。いいよ」

    え、と振りむいた唇にキスをした。余裕を取り戻しかけていたアッシュの顔がみるみる赤くなる。きっと自分の顔も同じ色をしているだろう。不自然に火照った頬を撫で、キスを仕掛けた動揺を白い吐息で逃がす。余裕ぶって顔を上げると、今度はアッシュからキスを仕掛けてきた。英二は体の向きを変え、アッシュに抱き着いた。口を開くと、熱い舌が遠慮なく入ってくる。湿った音を聞いていると、ここがどこかも忘れてしまいそうだ。

    とびきり冷たい風が手当たり次第に辺りを凍えさせている。誰もが寒さに気を取られ、道でキスをしているカップルなど見向きもしない。無関心を心地よく感じながら、英二は昔見た映画を思い出していた。

    (透明人間は大担になるものだしね)

    end.
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    IceSera0061

    DONEhttps://twitter.com/IceSera0061/status/1650069090969735170?s=20
    が成立したので書いた、警戒心ゆるゆる英ちゃんと心配性のあしゅ。
    同じ空の下で   柄の悪い連中が集まる場所で聞こえてくるのは、喧嘩と女と悪事自慢と決まっている。そして悪事自慢の中でも「日本人」は定番の一つだ。

    「メトロで平気で寝る」
    「警戒してるのにスキだらけ」
    「背後を気にするという発想がない」
    「エクスキューズミーと声をかけると律儀に立ち止まる」

     など、日本人の警戒心のなさは枚挙に暇がなかった。故郷よりずっと遠くの、銃のない平和な国。自分が生きている世界とはあまりに違いすぎて、おとぎ話に出てくる国のようだ。盛り上がる連中の話を聞き流しながら、腰のあたりにそっと触れた。冷たく重い金属の塊。それがアッシュにとっての「現実」だった。
     
     そんな「おとぎ話の国」から来た日本人奥村英二は、あらくれ者の集まるバーでそれはもう浮いていた。見るからにおろしたての服を着て、大きな黒い瞳を好奇心に輝かせきょろきょろと周りを見渡していた。おそらく彼なりの防犯対策であるボディバッグは、逆にそこに貴重品が入っているとばればれだ。警察のエスコートがなかったら、とっくに身ぐるみを剝がされていただろう。
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    いた。色彩の淡いのがひとり、椅子に座り耳にワイヤレスイヤホンを入れて何かを聴いている。それは、いつも誰より早く登校する、俺の爆豪。

    耳を封じたからといって他人の気配を気にしない男ではないが、そっと足音を忍ばせて近づきわざと耳元でおはようと囁くと、早速距離が近ぇと睨まれる。誰もまだきていない教室に2人きり、しかも恋人の関係でそんなことをいうなんて酷くねェか?と、ちっとも酷いだなんて思っていない口で言いながら唇に唇を寄せると、キスの代わりに鼻の頭を齧られそうになる。おはようのキスひとつ素直にさせてくれないなんて、本当に懐かない猫のような恋人だが、そこがまた可愛いと思ってしまう辺り、自分も中々に重症だと思う。まもなくほかの奴らも登校してくるだろう、それまでのほんの数分だけでも爆豪を眺めていたくて、ひとつ前の席を拝借して向かい合わせに座った所で、
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