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    melisieFF14

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    melisieFF14

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    レオくん、オギくんとの出会いと、メリジ(自機うさお)が特定の人物の前でだけ煙草を吸う姿を見せるようになったお話。
    三戸=感覚を司る三つの戸口。すなわち目、耳、口。

    三戸の冒険者己の長年の相棒たる刀を腰に下げ、今日も今日とてヴィエラ族の青年は師から受け継いだ名と煙管を胸に神々に愛された地──エオルゼアで生きている。


    ヴィエラ族の青年、メリジにとって生きるということは自由である。
    元々冒険者稼業に足を踏み入れた理由も、幼い頃に養母兼師匠から聞かされていた夢物語の影響が大きく、煙管と共に名を託されてから真っ先に世界を見ようと決意したくらいだ。冒険者となって十年以上、様々な場所に滞在しては様々な人や土地と関わってきたがそれでも飽きることはなく。むしろまだ見ぬ世界が多すぎるくらいで追いつかないほどだ。
    そうして今日も何か仕事はないかと探しに来ていたメリジがウルダハのクイックサンドで見つけたのが、貿易を終えてクガネへ卸す荷を積んだ東アルデナード商会らの護衛依頼だった。どうやら経由地であるリムサロミンサへと向かう為に西ザナラーンにあるベスパーベイまでの護衛を必要としているようで、ウルダハにて貴重な品を入手したこともあって護衛を雇いたいらしい。

    「いやあ、兄さんすんません。別のモンも他の冒険者さんたちに声を掛けていたみたいで……申し訳ない。あんたさえ良ければ、その冒険者二人と組んでもらえるか?」
    「報酬さえきちんと払ってくれれば構わないさ」

    パーティを組んでいる冒険者が多い中、メリジ自身は特定の人物らと長期に亘って共に過ごすことはなかった。かと言って無理に一人で依頼をこなすのではなく、乗り合いチョコボのように色んな人とその場しのぎでパーティを組む。こういったことは多数の冒険者たちはあまり好まない方法ではあったが、一人で事足りる場面が多いメリジはこの方法を一段と好んでいた。
    依頼人でもあるこのヒューラン族の若そうな男性は冒険者が断るかもしれない案件に不安を過らせながら聞いて来たようだったが、メリジが構わないと答えた瞬間、強張っていた顔がほっと安心して和らいでみせた。そうして依頼人に連れられた先で、ミコッテ族の青年とララフェル族の青年という二人組がチョコボキャリッジの前で立っていた。

    「お、アンタが今回一緒に組む冒険者?」
    「メリジだ。よろしく頼む」
    「可愛い女の子が良かったけど、アンタ強そうだしいっか!ボクはオギ、よろしく」
    「レオだ」

    互いの顔合わせを軽く済ませたら、チョコボキャリッジに荷を載せ終えた依頼主から声が掛けられる。そうして即席パーティ三人組が結成されたのだった。


    即席パーティを組む際の癖として、周りの冒険者の動きをよく見ることがある。そしてそれはこの二人に対しても例外ではなく。
    整備された道の周辺ではモンスターたちは少ないものの、たまにはぐれた数体が襲いかかってくることはある。それは問題がないとして、特に厄介なのは荷物目当ての盗賊団である。モンスターとは違い、人相手だと上手く意識を逸らされて護衛対象を見落としてしまうことがあるからだ。

    「オジ!」
    「まったく!オジって言うな!」

    しかしこの二人組は敵の往なし方が上手かった。むしろ盗賊団側が意識を逸らされているくらいだからだ。狙われやすい後方を二人組に頼んだことが良かったのか、こちらが警戒しやすい前方を早々に制圧し終えると、彼らの連携の良さが飛び込んできたのだ。あの分だと助けに入らなくても問題ない。今日の仕事は楽に稼げるかもしれないと思い、依頼主と己の運の良さに感謝した。


    そこからは予想通りとんとん拍子で進み、先ほど通過点のホライズンにて最後の休憩を取り、道中二度ほど盗賊団と四度ほどモンスターからの襲撃を受けたが難なく対処し終えたところだった。
    対人であればオギは詩でバフを与えつつ放たれる矢で牽制して敵の手や足、そしてその行く先を射抜いては動きを止めていく。その場に留まった一瞬の隙を突いて、まとまった集団を居合術で蹴散らせば、はぐれていった者からレオが素早く背後に回ってトドメの一撃を加えつつ雷を纏いながら次々に盗賊たちを倒していく。
    これが対モンスターであれば、レオと共に前衛として並び、無茶とも言える敵への突撃をかます彼の間から抜けてきたモンスターをしっかりと倒していく。その後ろからはオギがバフや狙撃による牽制といった支援で護衛対象を守り抜いていた。
    こんなに敵を一方的に翻弄したことなど久しぶりだったからか、あっという間に終わってしまうこのひと時が惜しいと戦闘の度思い知らされる。

    だが西ザナラーンのベスパーベイまでとはいえ、ウルダハの首都に近いこの地域でこんなにもモンスターと遭遇するのは普段とあまりに違いすぎた。最後のモンスターをレオが切り伏せたのを見届けて、刀に付いた血を水のエーテルで洗い流す作業もこれで六度目。近場の護衛のはずなのに接敵回数の多さにそろそろ怪しいものが見えて来る。

    「お前さん、腕が立つなぁ。おかげで今回はラク出来てる」
    「そうか。こちらも助かってる」

    オギが矢の回収をしながらこちらへと声を掛けてくる。疲れているようには見えないが、ふぅと息を吐きながら矢を拾う彼がこの状況に気付いているのかどうかまでは窺えない。それでも辺りへの警戒を止めていない辺り、なにか勘付いているようだった。再度襲撃があるかもしれないと思ったが刀を鞘に収めないまま、オギに水の入った革袋を手渡して少しばかりの休憩を促した。良い飲みっぷりを披露してみせたオギから革袋を返してもらっていると、依頼人がやたらと嬉しそうにこちらへ近付いてきているのが見えた。

    「いやぁ今回の冒険者たちは当たりだなぁ!おかげで早く着きそうだし、報酬は少し多めに出そうじゃないか」
    「おっさん分かってるね〜!お気に入りのお姉ちゃんのとこ行くからよろしく!」
    「おいオジ、気を抜くな。今度はデカいのが二体来てる」

    戦闘が終わってすぐに前方のチョコボキャリッジ近くで周囲の警戒をしていたレオがオギへと注意を促す。やや遠くではあるが、レオが向いている方角から二体の巨大なモンスターたちが歩いてきているのが分かった。

    「うげ……また来るのか……」
    「な、なんだってこんなに今日はモンスターが多いんだ……おい!しっかり頼むぞ!」
    「分かった」

    そうして慌ただしくチョコボキャリッジへと駆け込む依頼人の背を見送りながら、オギと共にレオの近くへ歩いていく。

    「なぁ」
    「……アンタも、分かる?」
    「普段の護衛任務なら街道沿いを歩いてて来るのはいいとこ後がない盗賊団くらいだろうな」
    「それがこの依頼では何度もモンスターからの襲撃を受けている」

    レオも普段からこういった依頼を受けているのか、やはり同じ結論に至っていたようだった。互いに頷き合い、さてどうするかと思案していると、オギが視線だけ動かしてチョコボキャリッジを見た。

    「荷が怪しいねェ。そっちの探りをレオに任せたいところだが……アンタならいけるよな?」
    「オギが支援してくれるならやれる。頼めるか?」
    「誰に聞いてる。任せろ」
    「じゃあそっちはメリジとオジに任せる。俺は荷を確かめてくる」
    「こんな時でもオジって言うのやめない!?」

    レオはよくオギのことをオジと呼び、そしてオギはそのことに毎度訂正を入れる。二人のそんなやり取りに、そういう仲間がいるのも悪くないなと頭の片隅で考えながらモンスターの方へ向かった。



    「おい。これ、魔物が好む匂いじゃねぇか」

    巨大とはいえ、それが強い敵かどうかなんて定かではなく。オギと二人で向かった先にいたモンスターを呆気なく倒してすぐにチョコボキャリッジへと戻れば、レオが眉間に皺を寄せながら手のひらに乗る程度の小さな革袋を依頼人に突き付けている。どうやらその革袋に入っていても匂いがきついらしく、彼は手の甲で鼻を塞ぐようにしてそれを遠ざけていた。青を通り越して真っ白な顔色で正座をしていたことから、彼も分かっていてそれを荷に積んだ訳ではなさそうだった。

    「取り扱いが雑だな。東アルデナード商会では教えてもらわなかったのか?」
    「それはっ!……いや、まったくその通りです……」

    レオが吐き捨てるようにそう言うと、依頼人は図星過ぎたのか言い訳すらも飲み込んでしまった。
    魔物が好む匂いというのは好事家たちに高く売れることでも知られていて、商人の間では厳重な取り扱いの下輸送されている。買い付けた先でそういったことを気にしなかった辺り、相手方から封を疎かにされ、そして申告されることもなく金になるからと受け取ったのだろう。ここは依頼人が買い付けた先で確認を怠ったことで起きてしまった事故だったようだ。おそらくこういった経験も浅いのだろう。依頼を受けた時点で段取りに怪しい部分は見えていたが、それを引き受けたのも自分だ。そこを突いてもしょうがない。

    「このままクガネに持って行くにしても航海中に海の魔物も誘き寄せるだろうな。リムサロミンサで適切な処置をするだけで仕入れ時よりも金が掛かるだろう。かといってこんなところで捨てたら他が大迷惑だ。どうするつもりでいる?」
    「そ、それは……」
    「そこでなんだが、どうせ損が出るって分かってるなら俺が仕入れ値で買い取るってのはどうだ?」

    プラスにもマイナスにもならないが、それならマイナスにならないようにするのも商人の考えだろう。経験が浅いとはいえ、性根はそれである。右往左往としていたその口から答えが出てくるのはそう遅くはなかった。

    「……分かりました。お願いします」
    「おい!お前それを──」
    「まぁまぁレオくん、何か考えがあるかもしれないだろ。な?メリジ」
    「あぁ。こんなに良い代物、早々手に入れられないからな」
    「……何に使うんだ?」
    「秘密」

    そうしてギルの代わりに得たそれを風のエーテルを用いて封をし、懐に入れてから再び行程の続きへと歩き出した。

    その後、特に変わりなく──モンスターからの襲撃はほぼなくなって──ベスパーベイまで無事依頼を果たした。到着した頃には既に日は落ち、リムサロミンサへの船も翌早朝となるようだ。ハプニングはあったものの、おかげで行程通りに着けたと喜ぶ依頼人から報酬金を受け取った。
    オギも報酬金を受け取り、依頼人を見送った瞬間、すぐさまレオを連れて酒場へと足を運ぼうとしていた。嫌がりながらもなんだかんだ着いて行くレオも満更じゃないのだろう。
    懐に手を伸ばして、あれが入っている袋に触れながら二人を見送った。





    あれから何ヶ月か経ち、水辺近くのオアシスで今夜はここでビバークすると決めてから、交代制で夜番を終えた時だった。懐から取り出したアレを使おうと思い付いたのは、今回の依頼の同行者が例の二人だったからだ。
    あの時初めて二人と組んだ時の依頼で、同行した若手の商人から買い取った商品をどうしたのかといえば香煙草にした。モンスターたちが好む匂いは一部の好事家たちの間で高値で取引されるほど人気のあるものでもあり。そして自分もまた、こういったものを嗜好品として楽しんでいる内の一人だった。
    夜番のお供に楽しもうと思い、口に咥えて火のエーテルを付けると背後から足音が聞こえてきた。これはわざと聞かせているんだろう。いつもはしない足音が聞こえたのはきっとそういうことだ。煙草の香りを楽しみながら彼を迎えることにした。

    「お前、それやったら俺が夜番の時にモンスターが来るんだけど?」

    吸い込んだ煙を楽しんで、余韻に浸るように甘ったるいバニラの匂いをゆっくりと吐き出せば、少し離れたところで足音が止まる。首だけ動かして後ろを振り向けばレオがあの時のように顔を顰めながら言うものだから、わざわざこんなところにまで足を運んで言わなくてもと思いつつも、心配して来てくれていることが分かったので敢えて別の言葉を吐く。既に夜番をレオに託したことも含めて。

    「あんたの顔にはまだ戦い足りないって顔が出てる」
    「ほざいてろ」
    「いざとなったら俺も行くし、良いだろ?」
    「来んなばーか」
    「酷い言い方だな」

    まだ夜番を始めて間もないレオが突き放す言い方をするのも当たり前だろう。誰だって夜番の時にモンスターを呼ばれるのは嫌だ。
    ちなみに今回の依頼はオギが受けてきた依頼で、たまたま近くを通りかかったら戦力が欲しいとのことで報酬を餌に連行された。そんなオギは真っ先に寝に入って明け方の夜番を担当することになっている。おかげでレオと自分が真夜中の中途半端な時間に寝起きする羽目になったので報酬は多めに貰わないと割に合わない。
    さて、夜番は終わったが寝に入るには些か目が冴えてしまっている。短時間と言えど少しは寝てすっきりしたであろうレオとお喋りに興じようとすれば、煙たがられてかなり遠く離れた風上からこちらを見ていた。耳が良いことは知っているので、オギを起こさないように声量を小さくして話しかける。

    「どうして好事家たちがこういったものを好むと思う?」
    「……嗜好品だろ。俺たちが見つけるトームストーンと同じ」
    「そうかもな」
    「で、それがなんだって?」
    「なんもないよ」
    「くだらないこと言ってないで早く寝ろよ」

    やや呆れた様子でレオは去って行ってしまった。あの様子ではあまりそういったものに興味はないのかもしれない。
    そうして香り煙草があと少しで吸い終わるというタイミングで、今度は短い歩幅の足音が後ろから聞こえて来た。

    「アンタも素直じゃないな〜」
    「まぁな」
    「香煙草にしてしまえばモンスターは寄ってこないってレオに教えてあげれば良いのに」
    「おっと、オギ先生は詳しかったか」
    「それなりに生きてるとね」

    好事家たちがあの代物を好く理由がこれだ。
    旅好きな好事家の中には自ら危険な土地へ足を運びたがる奇特な人もいる。ただしそれは現地へ赴くことであり、モンスターに襲われることを好いてはいない。そんな中、魔除けの香のようなものが出来ないかと研究を重ねた結果があの代物を利用して作られるこの魔物避けの香煙草だった。

    「今までそんな気を遣うことなかったのに、一体どういう風の吹き回しさ」
    「どうと言われてもね」

    この二人とは出会ってからこれまで何度かパーティを組んで依頼を受けたり、仕事が終わればその流れで酒場へ行っては会話を楽しんだりしてきた。はたまた立ち寄った街で偶然出会っただけなのにそのまま酒場へ行ったことも、時には明け方の三時に連れ出され、オギを釣り餌にする無茶苦茶な釣りを楽しんだりした日もある。
    それくらい交流を重ねていれば、メリジの心の奥底には信頼できる仲間と認識されていくのは当然で。

    「悔いのないようにしたいだろ?」

    本当は、あの代物を手に入れた時には香煙草にしようだなんて思っていなかった。適切な処理をした上で好事家に売り付けられれば金にもなるし、香としても使える。ただしそれを魔物避けの香煙草にしようとしたのは、こうしてこの二人と野宿する機会の多い依頼や外出が度々あったからだ。

    「だからってそんな回りくどいことする〜?」
    「一石二鳥だから良いんだよ」

    ふぅんとこぼすだけでいてくれる、そんな接し方と距離感の取り方に好感を持てた。だからこそ希薄な人間関係を築いてきたメリジは、時にはパーティを組んで仕事をしたり、時には共に食を囲んでくだらないことを言い合ったりするような仲間という間柄を二人に持つことにしたのだ。
    高値で取引されている魔物避けの香煙草の──いや、それ以上の価値があると思った。

    「まぁ野宿も良いけど、ボクは熱〜いお湯に浸かりたいよォ〜」
    「クガネの望海楼は行ったことあるか?」
    「あそこ最高だよねェ!温泉と美味い酒に美人なお姉ちゃんもいて!」
    「俺はあそこの料理が美味くて好きだな」
    「おい」

    なんて、クガネの名所話に花を咲かせていると音も気配もなく後ろから声がした。

    「俺が夜番してるんだからさっさと寝ろ」

    二人して後ろを振り向けば、腕を組んだレオが凄むようにこちらを見下ろしていた。目下のクマのせいで怖くないはずの垂れ目が不機嫌さを出しているように勘違いする。が、レオの心情はおそらく夜番交代の時に寝過ごされたら嫌だからだろう。彼の次はオギだからだ。そしてその当の本人はというと。

    「レオもクガネのどこの店の姉ちゃんが可愛いか選手権やろうよ」
    「飯じゃなかったのかよ」
    「……美味い魚料理が食えればどこでもいい」

    結局レオも思うところはあったのか、なぜかクガネ談義に花を咲かせるようになっていた。
    たまに会って、共に仕事をして、こうして三人であれやこれやと話す時間が楽しみになっていて、いつの間にかまた大切なものが増えていたことに気付く。こういう関係も良いものだ。
    そう考えながら懐から煙管を取り出し、葉を詰めて火のエーテルをかき集めた。

    「今度は煙管か。美味そうに吸うねェ」
    「煙草臭え」
    「くくっ」

    反応が二人して真逆なことに思わず口から笑みが溢れる。隣に座るオギは好意的に見ているが、レオは嫌そうにしながら彼を挟んで隣に座ったようだ。煙が彼らに行かないように反対側を向いて煙管を口にし、大きく煙を吐く。
    師を亡くした時に大事なものを失うのが怖いと思ったが、きっと彼らと繋がりを持ち続けることは間違いなく己の長い人生の中で礎となる気がするのだ。それを改めて実感したのはこの何でもない日常的なやり取りのおかげだ。

    「今が最高の気分だからな、美味いってもんだよ」

    この仲間たちのおかげで師への土産話がたくさん出来るはずだと。


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    melisieFF14

    DONE両片想いのすれ違いもだもだしてる付き合う前のメリレオ。
    Hit on恋焦がれるようにその身体に触れたい、声を自分にだけ聴かせてほしいと、その目に映るのは自分だけでありたいと願うことをやめられないまま、紫混じりの黒髪と赤紫の気の強そうな眼差しをいつも追い求めている。それは仲間に対して向けることを到底許される感情ではないことを理解していて、当人には察知されないように気を張るようになっていた。
    であればその欲望の捌け口はどこへ行くのかと言えば、恋う人と似た容姿の女へと向けていた。とはいえ共通点など黒髪だけだとか、目元や表情が似ているからなど、部位のみ投影して後は補完し、何も知らない女たちへ欲を吐き出していた。声ばかりはどうしても違い過ぎるので、春を売る女たちに声は出さなくて良いと伝えていたが何やら勝手に盛り上がられて喘がれることもしばしば。聴きたくもない声音を情事の最中に手で塞ぐのはナンセンスだったので唇で塞ぐことが多かったのがメリジにとっては煩わしかった。欲の捌け口でしかないから相手を思いやる気持ちなど一切なく、ただの性欲処理の行為に快楽などある訳もなかろうに。実際メリジには性感による気持ち良さなどなかった為、彼女たちに対して情を持ち合わせることもなければ穴としか見ていなかったことも事実だ。
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