人魚姫の呪い 第1話親愛①人魚姫が泡にならないためには、王子様の心臓が必要です。人魚姫は姉たちからもらったナイフを持ち、王子様のもとへ行きました。しかし、人魚姫は、王子様にナイフを向けることが出来ませんでした。人魚姫は王子様にさよならを告げ、開いてる窓から海に飛び込みました。
朝日に照らされる人魚姫の体は、泡に変わっていくのでした。おしまい。
「にんぎょひめ、かわいそう」
「そうね。でも、人魚姫は恋をしたから仕方なかったのよ」
「こい?」
「そう、恋をするとね、変わってしまうのよ」
「ん?」
「ふふふ、勲にはまだ早いわ。でもね、勲」
「なに?」
「あなたは恋をしてはいけないわ」
「え?なんで?」
「恋をしてしまうと、あなたは変わってしまうからよ。だから、恋をしてはいけないわ。その代わり、愛しなさい」
「あい?」
「ええ、愛はいっぱいあるから。まずは愛を知りなさい。人を愛しなさい」
「うーん、わかった」
「いい子ね」
「じゃあ、ははうえは、ちちうえにこいしてないの?」
その時の彼女の困ったような顔を今でも近藤は強く覚えていた。
『人魚姫の呪い』
第1話、親愛
それは偶然だった。
妙の買い物に着いて行った万事屋三人の前に、近藤が現れたのだ。
「お妙さん!なんという偶然ですか!今日会えたことも、何かの縁!!どうです?ちょっとそこのカフェでお茶でも」
「何が偶然じゃ!!このストーカー野郎!!」
と、突然現れた近藤に、妙は即アッパーを繰り出した。それはいつもの光景であった。万事屋三人は驚くでもなく、その光景を眺めていた。
妙からの重みのあるアッパーを喰らった近藤は、軽々吹っ飛ばされ地面に倒れた。その際に、少し着流しの裾が捲れ、足元が晒される。ふくらはぎ下までの靴下を履いているのが見えたのだ。
銀時は、何故着流しにそんな中途半端な靴下と組み合わせたのだろうかと、微かな疑問を抱いた。しかし、数秒後には変態だからかと結論づけた。
結論付けるまで、確かにじっと近藤の足元を見ていた。だからといって、邪な思いは決してない。断じて。
しかし、起き上がった近藤は、銀時の視線に気づき、さっと裾を直し足元を隠した。何度でも言うが、銀時は別に邪な目で近藤の足元を見ていた訳ではない。銀時は勘違いされたことに、若干苛立ちを覚え、近藤の顔を見た。文句を言おうと思ったのだ。
だが、開いた口から言葉は出なかった。なぜなら、あまりにも近藤の顔がひきつり焦っていたから。蒼白まではいかないが、顔色が悪い。
「ま、仕方ないですね!今日のところは帰るとしましょう!」
と、先程の顔色はどこへやら。近藤は勢いよく立ち上がり、ガハハと笑いながら、その場を去った。呆れたようにそれを見送る妙と新八と神楽だったが、銀時だけはその背をいぶしかむように睨みつけていたのだった。