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    ヤそ 習作

    練習のない日曜日。ひとりで暮らす双循の家に飯を作る名目で足を向ける。日曜は、うちの店のメイン層である学生や会社員が少ないために手伝いは比較的必要のないことが多い。いつも飯を作ってダラダラするだけで、別に……家ん中でデートなんて特別なモンじゃねえ。ちょっとだけ触れたりするってだけで、そこに色が着くことはあまり無い。
     今日は寒がる双循のリクエストで、昼飯はうどんだ。さっき二人で並んで買ってきたスーパーの袋が今はおざなりに台所の麓に落とされている。
    「たまにはお前が作ったりしないのかよ」
     しかし訊いたところで双循が言葉を発することはなく、パサパサと豊かなしっぽが答えるだけだった。きっと温まって香ったダシの誘惑に反応してるんだろう。耳をひょこひょこ、しっぽをふりふりさせて俺の作った飯を迎える双循を考えては、当然のように顔が熱くなる自分の負けだと思う。
     温まりだしたダシを頃合に麺を茹でようとシンクの下を覗くと、今までいなかった一回り大きな両手鍋がいる。あれ、こんなのあったか?
     そういえば二人分の飯を作るには小さいなとボヤいたことがある。そうじゃのう、おどれのようにのう、とポンポンと頭に手を置かれたことを思い出して思わず舌打ちをした。
     だが、双循がそれを汲み取って、俺が今後もこの家に出入りすることを許して買ったと思うと……。
     誰も見ちゃいないのに、口元を隠す。口元が緩むのが止められない。
     きっとこのことを訊いたところで、また双循はだんまりでただ雄弁なしっぽだけが答えるんだろう。そんな言葉少ななところはやはり好きだと言わざるを得なくて、自分の静かさについてきてくれる双循に甘えているのは自分の方なのかもしれない。ポットで温めていたお湯をドバドバ注ぎながら、これくらいやってくれれば俺は今カマボコのひとつでも切る事が出来るんだけどな。そう心の中で愚痴りながら付かず離れずなこの距離感が好きなのかもしれない。
    「まだか」思ったそばからすぐ後ろの背中に気配を感じる。
    「お前が手伝ってくんねえからだよ」
    「葱はいらんぞ」
    「買ってないだろ、そんなもん」 
     足元のスーパーの袋からうどんとカマボコを引っ掴んで、それぞれ無造作に開けては鍋に放り入れるなり、まな板に転がすなりする。これが終われば飯だから。そう伝えようとした、時。
    「手伝ってやらんこともないぞ?」
     耳元で双循の吐息と声を直接感じて、ヒ、と素っ頓狂な息が漏れた。肩に重みと、腰にやらしい手つきがまとわりついて、コントロールできない声で彼を制した。
    「人が手伝ってやるっちゅうんに」
    「何をだよ!」
    「料理以外に何があるんじゃあ?ヤス」
     耳にフゥと息をかけられたものだから、あっちいけ!と怒鳴る。近くに来たらきたでやっぱり狂う。なんというか双循のやり口は、ずるい。いつも俺達ばっかりが良いように使われて、卑怯で、こんなやり方絶対気に食わねえ。そう思うのに、俺の作ったうどんがあの唇に吸われていくと思うと、グッと腹筋に力が入る。
     ……悔しいが、あとで手伝ってもらおう。
     双循の邪魔のせいでくたくたのうどんを器に装いながら、自身の後片付けのことを考えていた。
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