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    習作 ジョ双

    待ち合わせまであと十五分。カフェに入って待つような時間でもなく、かといって、この時期に待ちぼうけは些かつらいものだ。早く熱源体がこないだろうか。ひゅうひゅうと吹く北風に、いっとう高い位置にある狛犬族の耳が嬲られる。今日なんかは、いよいよ帽子を用意すればよかった。情けなくも耳をぺたりと寝かせながら風を避ける。今日は二人で過ごすからと、いつもとは違う高襟のコートを選んで正解だ。長い髪も相まって首周りの温もりだけは安泰だった。風のせいでつい、視線が下に落ちる。視線の端で、長く白い裾が風に揺らされている。
     クソジジイ、朝は早いくせに。早うせえ。一分あたりいくら徴収してやろうか。
     手を突っ込んだポケットの中でカイロを揉む。手袋だって、持ってこなかったというのに。ほう、とため息を吐くと、白くなったそれがじわりと空気に溶けていった。
     早うしろ。まるでワシばかりが楽しみにして来たみたいじゃろうが。
      はあ……今度はさっきよりずっと多くの白い息が肺から逃げていく。スマホを覗いても連絡はない、なんせまだ五分しか経っていない。たった十分、駅ビルを物色でもしようか。そう思って顔を上げると、数歩横に目を引く赤色が居た。
    「……居るんなら声掛けんか」
    「いや、今来たとこだしよ」
    「クソが。タイムイズマネー、わかるか?」
     フン、と鼻を鳴らすと、その鼻を摘まれた。
    「悪ぃな、こんなに赤くさせてよ」
     他のミューモンよりも高い平熱が、顔の先端からじんわりと伝わってくる。そのまま左頬を包まれる。あたたかい。その熱に思わず目を細めてしまうのは、ただ寒くて仕方がなかったから、だ。
    「うお、冷てえな。風邪引く前にどっか入るか」
     ジョウは周りを見渡し行き先を見つけると、ほらよ、と、自らカイロ代わりになってやるつもりの左手が差し出される。早くしろよと言わんばかりに、ほら、と声をかけられる。
     えらく驕った奴じゃ、ワシの右手が寒々と冷えきっているとでも思うとるんじゃろうか。ワシは優しいからの〜。押し売りでも買ってやるわい。
     控えめに手を重ねると、歩き出す合図かのように大きな手のひらに包まれた。
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