怒りん坊の整備士 男はいらだっていた。毎日毎日嫌になるほどやってくるボロボロの船、態度の悪い客たち、なんの足しにもならない薄給。それが自分の人生だと諦めるほどには、男の心は死んでいなかった。だからこそ毎日腹が立つ。いつしか男は周りにアンガーと呼ばれ、誰も寄り付かなくなってしまった。それがますますアンガーをいらだたせた。
だが、今日は少しだけ違った。今日の客は一人のマンダロリアンだった。いけ好かなかったが、態度は悪くないし、きちんと金も払ってくれる。賞金稼ぎのような風貌のくせに、そこらの荒くれ者とはどこか違う、柔らかな雰囲気があった。
けれど話しかけられるのはあまり好きではないらしい。最低限の返事を投げてくるだけだ。それならばそのようにしてやろう、ご随意に、とアンガーは話しかけるのをやめた。こちらも快適に仕事が出来ればそれで良いのだ。それに、マンダロリアンの古臭いが珍しい船を修理出来ることが、アンガーの心を弾ませた。アンガーは自分の機嫌が良いのを自覚していた。
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