『黒に尾を引くその白は』 鈍い痛みがある。
閉じた瞼はやけに赤い。きっと日差しが強い所為だ。
「──なあ、おい!」
声がする。遠くに──いや、近くに。
「起きてくれよ……」
懇願にも似たその声を合図に、目を覚ました。
俺の名前はコージー・オスコー。一流のアルピニストだ。それは分かる。
今強く差しているのは日光で。今自分が、 浜辺に続く長い階段の下に居るのも分かる。
分かるが──なぜここに居るのかが分からない。
というか、
「お前、誰だ……?」
目の前にいるこの男。あいつとそっくりなようで、白い髪に青い瞳はまるで正反対……って、「あいつ」とは誰のことだろう。
「僕は、懐緒実白。あなたの……その……ファンだ」
男は少し照れたようにそっぽを向いた。
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