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    kiki_lala_fairy

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    故郷ドロライ 第1回「習慣」
    大学生ひいあいの同棲の話

    おれとヒロくんが付き合い始めてから3年。
    当時キラキラの高校一年生だったおれも、あっという間に月日が経ち大学生になった。アイドルをしながら進学することに、両立できるか分からずどうしようか悩んでいた時期もあったけれど、両親や一足先にアイドル兼大学生になったヒロくんの後押しもあり、覚悟を決めた。
    そしてこの春、そんなヒロくんとの同棲が始まった。

    「おはよう藍良」
    「ヒロくん、おはよォ」

    もそもそとベッドから抜け出しリビングに行くと、美味しそうな朝ごはんとヒロくんが待っていた。
    ヒロくんはいつもは和食が多く、おれは朝は決まってフルーツたっぷりのパンケーキなのだけど、テーブルにはパンケーキプレートが2皿。
    どうやらヒロくんもパンケーキを食べるみたいだ。

    「今日はいつもより少し早く目が覚めてしまったから、いつもと違う焼き方をしてみたらうまく焼けたから僕も食べようと思ったんだ」

    おれの考えていたことを察知したのか、ヒロくんが嬉しそうに教えてくれる。

    「ほんとだ、いつもよりふわふわでおいしそう」

    一緒に住み始めてから、ヒロくんは料理に熱心で、ぐんぐん腕が上達している。最初こそおれも張り切って作っていたけれど朝にはどうも弱く、早起きが得意なヒロくんに朝ごはん当番が任され、いつの間にか習慣化していた。

    「ん〜ッ!きょうもめちゃくちゃ美味しいよォ!最高〜!」
    「ふふ、そんなに喜んでもらえて作った甲斐があったよ」
    「いつもありがとねェ」

    朝ごはんを食べ終え、食器を片付ける。ヒロくんが早く起きて美味しいご飯を作ってくれるから、そのお礼にせめてと思っておれが食器洗いをする。
    きょうはヒロくんは2限から、おれが3限からだからヒロくんが家を出たら少しだけ掃除とかしてから大学に行こうかな、と頭の中で計画を立てる。

    この3年、本当にいろんなことが起きすぎておれのアイドルにしか費やしていなかった頭の中の引き出しが全部埋まってしまうくらいだった。
    辛いことも多かったけれど、驚きや喜びももちろんある。その1番に来るのがヒロくんと両思い、しかも交際することになったことだと思う。
    女の子とも付き合ったことのないおれがまさか、男と、しかもあの野生児ヒロくんと付き合うことになるなんて、誰が想像できただろうか。
    (でもタッツン先輩やマヨさんにはすべてお見通しだったらしく、付き合ったことを報告するときに「おふたりはいつか結ばれると思っていましたよ」なんて言われた。先輩たちこわい。)

    当時のことをあれこれ思い浮かべて、懐かしいななんて考えていると、「藍良」と呼ばれた。どうやら家を出る支度が終わったみたいだ。
    はやくはやく、とこちらに手を広げて待っている。しっぽをぶんぶん振っている犬みたいで可愛い。近付いてよしよし頭を撫でてあげるととても嬉しそうにするから、なんだかおれまで嬉しくなってしまう。

    「いってきます、藍良」

    そう言ってヒロくんはおれのおでこ、鼻の頭、最後に唇にキスをして抱き締める。
    恥ずかしくてなかなか慣れなかったこのヒロくんとのいってきますのキスもいつの間にか習慣になっていた。まだ全然恥ずかしいけれど、ヒロくんがあまりにも嬉しそうにするからまあいいかなんて思っている。

    「いってらっしゃい、ヒロくん」
    この習慣がずっと続けばいいな、なんてこの幸せを噛み締めてきょうもおれの1日が始まる。

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